• ~リーダーとマネジャー③~ 組織開発(OD)の実践って、どうするの?-150

~リーダーとマネジャー③~ 組織開発(OD)の実践って、どうするの?-150

ザレズニックが主張するところのリーダーとマネジャーの違い、3つ目の人との付き合い方の違いを見ていきます。この違いを理解する上でザレズニックはTATを取り上げています。TATとは主題統覚検査と訳される心理検査で、正式名称は「Thematic Apperception Test」であり、その頭文字をとってTATと呼ばれます。この検査は1935年にH.A.マレーとC.D.モーガンによって考案された被験者のパーソナリティを測定する検査です。TATでは人物を含んだあらゆる状況が描かれたカードを提示し、被検者に自由なストーリーを語ってもらいます。そして、その解釈により被検者のパーソナリティを明らかにするものです。TATで用いられるカードはどれも漠然とした光景が描かれており、人によってどのような状況に見えるかは様々です。これは被検者が知覚した内容を意味づける心の作用に、個人の内的な欲求と外的環境からの圧力とが関連しているという考えに基づいています。(TATの説明より引用)

 

TATの結果はどのようなものであったか、ザレズニックが取り上げているケースをそのまま記載します。使われた絵はバイオリンをぼんやり眺める少年です。

あるマネジャー、「父親も母親も、息子に将来立派な音楽家になれるようにレッスンをしなさいと説得していた。注文していた楽器がちょうど届いたところだった。その息子は、友達とフットボールするのと、音の出る箱を弾くのと、どっちにしようか考えていた。彼には、両親がなぜタッチ・ダウンよりもバイオリンの方が良いのか、理解できなかった。(中略)レッスンを4ヶ月ほど続けたが息子はとうとう我慢できなくなり、父親も気持ちが変わり始めていた。母親もしぶしぶながら、仕方ないと思い始めた。フットボールのシーズンは過ぎてしまったが、来シーズンには名選手が登場するだろう」

 

同僚がリーダーと認められている人、「この少年はバイオリンに強く心惹かれ、上手に弾けるようになりたいという強い欲求を抱いており、誠実な芸術家になりそうに見える。(中略)彼はちょうどレッスンを終えたばかりだが、自分はバイオリンならではの音を出せないでいることに、幾分落胆しているようだ。(中略)彼は、自分に秘められている音楽の素質を伸ばせると納得できるまで、必要な時間をかけて練習しようと、自らに誓っているようだ。(中略)このように決心し、努力を重ねた結果、この少年はその時代を代表するバイオリニストの一人になった」

 

二人のストーリーを分析したザレズニックの見解は以下のようなものです。「このマネジャーは人々と一緒に働くことを好み、しかし人間関係への感情移入は概して低いようだ。一方で、同僚たちからリーダーと認められている人は、単に自分と関係する人たちに注意を払うことだけでなく、その気持ちを察し、その個人的な関係を通じて人々に働きかけるようだ。この作者は、【強く心惹かれる】【強い欲求を抱いていた】【落胆している】【誓っている】といった記述から、人間関係をうまく活用できる共感力の持ち主といえよう」

皆さんはどのように解釈するでしょうか。自分で物語を書いてみても良いでしょう。

 

マネジャーは、進行中の案件や意思決定プロセスにおける自分の役割を果たすために他者と交わります。一方リーダーは、何らかのアイデアに興味を抱いている時、本能的に、しかも深く感情移入して人間関係を築こうとします。マネジャーの関心は、物事がどのようになされるかであり、かたやリーダーの関心は、その案件ないしは意思決定が関係者にとって何を意味するのかにあります。これが、両者を区別する端的な特徴であるとザレズニックは言います。

マネジャーは問題解決においてはWin-Winの解決が出来るように努力する。明確なメッセージを発するより、可能性としてのシグナルを発するようなコミュニケーションをする。効率性を重視し、時間が掛かりすぎると思われる場合は妥協することもいとわない。

一方でリーダーは、同一性や異質性あるいは、愛や増悪に強く反応する。リーダーの影響力が強い組織では、人間関係はこじれやすく、また緊張しており、時には錯綜する。このような雰囲気では人々は強く動機づけられるものの、しばしば喧騒の渦に巻き込まれる。

ザレズニックのマネジャーとリーダーにおける「人との付き合いの仕方」、皆さんはどちらを望まれますか。自社では、どちらのタイプの育成が必要なのでしょうか。(続く)

 

※この記事の書き手はJoyBizコンサルティング(株) 波多江嘉之です