• ~リーダーとマネジャー②~ 組織開発(OD)の実践って、どうするの?-149

~リーダーとマネジャー②~ 組織開発(OD)の実践って、どうするの?-149

今回から、ザレズニックが主張するところのリーダーとマネジャーを分ける4つの視点である目標の違い、仕事観の違い、人との付き合い方の違い、人格特性の違いを見ていきます。

 

まず、目標の違いとはどういうことでしょうか。ザレズニックは、マネジャーが目標をどのように捉えるかについて、製品開発において求められるマネジャーの態度について、GMの元会長であるF.G.ドナー(1958~68在任)が述べたことを引用することで説明しています。

ドナー曰く「市場開拓に対処するために、我々は顧客のニーズとウォンツの変化を事前に把握し、適正なタイミングで、適正な場所で、適正な車を、適正量提供しなければならない。(中略)我々は最終製品をつくるうえで、さまざまな妥協を受け入れなければならないが、その際、消費者の思考を考慮し、両者をバランスさせなければならない。つまり、信頼性が高いと同時にデザインの良い車をつくらなければならない。また、性能に優れ、しかも競争力の高い価格で必要台数以上に売れる車を造らなければならない。我々がつくりたいと思う車でなく、顧客が買いたいと思う車を設計しなければならない」 これはマーケティングの典型ですね。ザレズニックは言います。ドナーの記述の何処にも、生産者の行動によって消費者の思考や選択が決まるなどとは書かれていないと。しかし、消費者は予想外の刺激によって触発され購買行動を決定することも多い。かつてのポラロイドとか、SONYのウォークマンとか、AppleのiPhoneなどです。そのようなものは市場分析で生まれるのではないのです。つまり、このような製品は受動的に生み出されたのではなく、能動的なアイデアから生み出されるのです。リーダーは、個人的な意思のもとに、ものごとに積極的な態度で臨むのです。リーダーは、場の雰囲気を変え、人々のイメージや期待を喚起し、何らかの欲求を明らかにし、目的に向かって決断することで企業が進むべき進路を決定する人です。このような影響力の真意とは、何が望ましく、何が可能であり、何が必要であるかについて、人々の考え方を変えることに他ならないと言います。そうですね、リーダーたる人のリーダーシップはその人の信念から発揮されるものであり、必ずしも周囲の人の期待に沿ったものではないのですね。

 

仕事観ではどうでしょうか。マネジャーは、戦略を立案し、意思決定を下すため、人々とアイデアを結び付け、問題解決を図るのが仕事である、とザレズニックは言います。議論がかみ合わないときはこれを丸く収め、緊張を緩和します。その手法も交渉して約束を交わすだけでなく、アメとムチを使い分けるなど様々な手を使います。要するに、Win-Winを目指し、問題解決のために絶えず反対意見を調整しながら、バランスを取った問題解決をしようとするのです。ザレズニックはこの例として、GMが1920年代初頭に空冷エンジンの開発に挑戦しようとしたときのスローンの態度を取り上げています。スローンは、明らかに関係者の調停役として行動しています(詳しくはDHBR 2008年2月号を参照してください)。

しかし、リーダーは異なる仕事観を持って行動を選択します。その例として、J.F.ケネディを取り上げています。ケネディはしばしば、きわめて高いリスクが伴う意思決定をします。とりわけチャンスや報酬が大きい場合、あえて危険に身をさらしたり、冒険したりすることもあります。それは、ヒッグス湾事件などでもみられることですし、アポロ計画の宣言もそうです。ケネディは1961年の就任演説で以下のように述べています。「わが国に有効的な国であれ、敵意を抱いている国であれ、全ての国の人々に伝えたいことがあります。我々は自由と繁栄のためには、いかなる代償も払い、いかなる重荷も背負い、いかなる苦難にも背を向けず、あらゆる友を助け、あらゆる敵と戦う」と。この一説は、同じくケネディの「国があなたのために何をしてくれるかではなく、あなたが国のために何ができるかを考えよう」に比べて日本ではあまり知られていないようですが、アメリカではよく引用される一説のようです。ザレズニックは、この一説はよくよく考えるとおかしいと言います。なぜなら、この声明が本当に採用されたら、ベトナム戦争のように悲惨な結果を招くからです。

このような、マネジャーとリーダーの仕事観の違いは、彼らの性格の違いによるのではないかとザレズニックは言います。マネジャーの場合、生存本能によって冒険心が抑えられ、逆に平凡で現実的な行動に耐えうる能力が生存を助けているのです。ありきたりな行動に我慢できないリーダーとは逆の存在です。

どうでしょう。まだ2つの視点しか見ていませんが、企業研修でリーダーシップを育成しようとする場合、どちらの行動を目的としたプログラムを組みますか。リーダータイプを育成するのは、危なっかしいと思いますよね。ご担当自身がマネジャー的性格の場合は、推して知るべし、ですね。 次回は、人との付き合い方の違い、人格特性の違いを見ていきます。(続く)

 

※この記事の書き手はJoyBizコンサルティング(株) 波多江嘉之です