• モチベーションとOD:②~組織開発(OD)の実践って、どうするの?-【136】~

モチベーションとOD:②~組織開発(OD)の実践って、どうするの?-【136】~

「NBL動機づけ理論」によって4つの欲動を満たすことがモチベーションに繋がることが分かりました。では4つの欲動をポジティブに刺激するためには、何が必要なのでしょうか。今回はそれを見ていくことにします。先ずは組織的視点から。

・獲得(drive to acquire)に対して

この欲動を満たすポイントは報奨制度です。具体的には、優秀者とそうでない者には差をつけること。「機会は平等に、結果は不平等に」です。貢献していない人からの不満は組織にとって痛手はありませんが、貢献している人からの不満は組織にとって大きな痛手になります。

 

・絆(drive to bond)に対して

この欲動を満たすポイントはポジティブな企業文化(culture)の醸成です。具体的には、チームワーク、協働、オープンさ、友情を重視し促進する企業文化です。

 

・理解(drive to comprehend)に対して

この欲動を満たすポイントは職務設計です。有意義で、面白みとやりがいを感じられるように職務設計をすることが大切です。しかし職務設計(ジョブ・デザイン)は会社が設計するものですが、職場は刻一刻と変化していきます。

新しい人が配属されると役割も変わります。ですから、ジョブ・デザインだけではなく、ジョブ・クラフティングという考え方とやり方も必要です。ジョブ・クラフティングは、社員の主体的な創意工夫を重視した仕事のやり方であり「仕事の意義」「仕事の内容と進め方」「他者との関係」を見直したり再定義したりすることです。

 

・防衛(drive to defend)に対して

この欲動を満たすポイントは業績管理と資源配分です。つまり、何がどのように決まっていくのか、そして必要な資源がどのような理由で配分されているのかについて、そのプロセスが可視化されていることが大切です。

 

また、従業員の成長に投資し、福利厚生や評価などについて納得のいく施策がとられていることも大切です。つまりは、透明性が高い経営管理ということですね。

 

以上、4つの欲動(感情的ニーズ)を満足させる組織的な焦点と施策を見ていくと、現場の管理者ができることは余りないなと思う方々も多いかと思いますが、現場の管理者(チームリーダー、日本では部課長クラス)の果たすべき役割はとても重要なんです。現場の管理者がやれることは結構あるんですよ。

どうでしょう、これをお読みいただいている方々の中には、4つの欲動を満足させることを自分なりのやり方で実行している方々も多いのではないでしょうか。では、現場の管理者がやれることを見ていきましょう。

 

・獲得(drive to acquire)については、1on1ミーティングや職場ミーティングを活用して、個人やチームに対する評価を明確にし、そのことについて対話しているチームもあるのではないでしょうか。

日本の企業では、評価結果について十分な開示をしていない企業もあるようですが、これは開示すべきです。また、管理者によってはメンバーの評価に差をつけることを避けようとする心理が働く人もいるでしょうが、そこは明確に伝えるべきです。

隠しておくのは憶測が憶測を呼びすっきりとした気持ちにならず、却って懐疑心が増すことになります。

 

・絆(drive to bond)については、一人ひとりの頑張りや貢献を上司が口に出して承認すること、協力関係についてチームメンバー相互の期待を出し合って話し合うことが大切になります。ポイントは、メンバーに対して無関心にならないこと、無視しないことです。

 

・理解(drive to comprehend)については、絆と同じようにお互いの仕事と協力関係について常に話し合うこと、事業環境や会社の将来などについてより多くの情報が入手できるようにすることです。

気を付けなくてはならないのは、同じ会社でも他部門のことについては意外とよく分かっていないものです。上司は、時には他部門メンバーとの交流を促進し、お互いに理解し合う場を持つことが求められます。

 

・防衛(drive to defend)については、意思決定のプロセスや経緯について、上司は納得のいく説明をすることが大切です。もちろんすべてを上司が承知しているとは限らないでしょうが、それでも明らかにできることは職場メンバーと共有することが大事です。ジョブ・クラフティングを実施することも有意義です。

 

こうやって見ると、上司ができることは結構ありそうですね。

今回のODメディアは、人々の欲動という基底的な感情ニーズに応えることがモチベーションの向上に繋がり、ひいては組織の業績向上につながることを見ていきました。各社が経験上やっていることが、脳科学からの知見である「NBL動機づけ理論」と、その調査研究で明らかになったんですね。組織開発(OD)の実践にとても参考になります。

 

※この記事の書き手はJoyBizコンサルティング(株) 波多江嘉之です