• 戦略と組織開発⑤~組織開発(OD)の実践って、どうするの?-【108】~

戦略と組織開発⑤~組織開発(OD)の実践って、どうするの?-【108】~

戦略的意思決定に関する前回からの続き。

論文では、命題2.として、同時に複数の代替案を検討することが迅速な意思決定につながると主張しています。より迅速なチームの意思決定者は、意思決定プロセスの間に多数の代替案を維持していたのです。

一方でより遅いチームは代替案をほとんど考慮しておらず、一つの案がもはや実現可能でなくなった時に新しい案を始めて探索していたのです。これは興味深いですね。論文では、複数の代替案を同時に検討することが迅速な意思決定を促進することについて以下の3つの理由を挙げています。

 

①それぞれの意思決定代替案は分離して独立に評価するのが難しい。代替案を比較することで、意思決定者にとっては代替案の長所や短所を把握しやすくなる。

②同時の複数代替案により、いずれか一つの代替案に固執することを押さえることができる。また、意思決定者は代替案の中のどれかに関する新情報に基づき、代替案間を素早く移動することができる(別の代替案に移りやすい)。

③幾つかの代替案を考慮する場合、それらの代替案はより早く分析される。

 

なるほど。この命題を見た時に「討議の効果性を高める要件」を思い出しました。討議は参加者個々人の質もさることながら、そのプロセスが討議の質を決定づけます。良いプロセスは以下の条件を満たすようなものです。

【手順】

①参加者は、事前にテーマの内容を把握し、自分の見通しを準備し参加する。

②討議では、各人の意見や見解(代替案)を早く出し合って共有する。

③お互いの意見や見解の相違を明らかにする。

④それぞれの意見の背景や仮説・大前提を表に出し、それを検討する。

⑤取り上げられなかった案(代替案)は捨ててしまうのではなく留保する。

⑥意思決定の基準を合意のもとに作成する。

 

【手順のすべてに関わる規範】

①各人の意見の変更は自由である。

②緊張を和らげる雰囲気を作る。

③意見や感情の衝突は、隠さず表に出して処理する。

④上位者のポジションパワーの行使は抑える。

⑤時間管理をきちんとする(ダラダラ会議にしない)。

 

やはり、代替案を同時に検討することは迅速でかつ効果的な意思決定にとってとても重要なんですね。

ところが、前回のODメディアで紹介したインテルの戦略転換の例からも分かるように、私たちはいったんある案に傾注するとそれ以外の案を考慮しなくなる傾向があるんですね。そこには強いバイアスが働いているのです。

迅速な意思決定を可能にしているチームは、個々人の思いよりも「今そこにあるデータ(オペレーショナルな指標)」をとても重視して、それに基づき意思決定するというプロセスを持っているのです。

「思い」は、自分の「思い込み」に固執するということに繋がることもありそうですね。(続く)

 

※この記事の書き手はJoyBizコンサルティング(株) 波多江嘉之です