• 実践でのコンテントとプロセス:勢いを持続させるリーダーシップ(2)~組織開発(OD)の実践って、どうするの?-【99】~

実践でのコンテントとプロセス:勢いを持続させるリーダーシップ(2)~組織開発(OD)の実践って、どうするの?-【99】~

~リーダーシップ:5つのコア戦略~

リーダーシップは人文系の研究の中では歴史も古くさまざまな説が提唱される分野ですが、ここではアプリシエーティブ・インクワイアリ―で有名なダイアン・ホイットニーが提唱する5つのコア戦略(From Potential to Positive Power: The Five Core Strategies)について見ていきます。これはポジティブリーダーシップの具体的な実践と言っても良いのですが、彼女はアプリシエーティブ・リーダーシップと呼んでいます。それが下記の5つです。

 

質問し探求する(Inquiry):ポジティブでパワフルな質問を投げかける

輝きを引き出す(Illumination):人や状況の中にある最高の状態を引き出す

巻き込む(Inclusion):人々を巻き込み未来を共に創造する

刺激・鼓舞する(Inspiration):創造的な精神を呼び覚ます

誠実に接する(Integrity):全体にとってより良いことのために意思決定する

(以上、前回の再掲)

 

この5つ、組織や集団をまとめたり特定の方向に向かって、変革を起こしたりした経験がある人なら難しいことを言わずとも「そうだよな」と納得の5つではないでしょうか。ダイアン・ホイットニーもこの5つの実践がポジティブなパワーを生み出すと言っているのです。この5つは、具体的行動であり、リーダーに求められるコンピテンシーといってよいかと思います。もう少し具体的な内容を見ていきましょう。

 

質問し探求する:ポジティブでパワフルな質問を投げかける

大前提として、私たちは質問し探求する方向に動いていくというものがあります。質問で大切なことは、他者を認め他者の考えを引き出すことです。他者の考えを知ろうとする時に「なぜそんなことをやっているんだ」という言い方ではなく、「そのように考える理由は何ですか」というような聴き方の方が相手は答えやすくなります。

大切なことは聴く側が自分の価値判断基準から質問し探求するのではなく、その価値判断基準を一旦脇において、他者の考えそのものを聴こうとする姿勢が大切です。

メンバーに自分の考えや気持ち、成功の話や将来のアイデアを共有するように頼み、彼らの言うことを真摯に聴くとき、リーダーは彼らに「私はあなたとあなたの考えを大切にします」とメッセージを送ることになります。

とはいえ、メンバーの考え方や価値判断基準を全面的に採用する訳ではありません。お互いの考え方や判断基準を表明し、その上でチームや組織の目標に貢献するということはどういうことなのかを話し合うことが大切なのです。そして、誰しも自分の貢献目標が明確になり、共に進むべき道を共有していると感じることがポジティブな行動を生み出します。

 

ポジティブな質問の例

「あなたはどのような未来を創っていきたいですか」

「あなたがここで/このチームでやりたいことを教えて下さい」

「仕事を上手くやるために使えるあなた自身の強みは何でしょう」

 

輝きを引き出す:人や状況の中にある最高の状態を引き出す

輝きを引き出すとは、メンバー各人の強みを見出すということです。人は、自分で自分の強みを理解しているかと言えば実はそれは意外と難しく、自分で自分の強みを分かっていない事が多いものです。

ずいぶん前のことですが私が担当したある日用品製造販売会社大手のキャリア研修でこんな場面がありました。この研修は自由参加で老若男女20人ほどが参加していました。参加者の一人である30代前半の男性が「私、何が自分の強みかよく分からないんです。」と言っていた時、その男性と同じグループの年配参加者が次のように言ったんです。

「あなたね、地方のパパママストアーの人たちと取引をするっていうのは、結構難しんだよ。そんなところ(北海道の田舎地域)なのに、取引できているということはあなたに人間的魅力があるからだよ」と。言われた彼は「あ!」というような顔をして、ちょっと考え込みましたが、その後「私、少し自信が持てました」と言っていたのが忘れられません。

 

私たちが自分の強みや他の人の強みについて学ぶとき、役に立つのが「ジョハリの窓」のフレームワークです。ジョハリの窓はご存知の方々も多いと思いますが、一応簡単に説明します。

ジョハリの窓では、人は自分で自分のことを分かっている領域と分かっていない領域、他者に知られている領域と知られていない領域から、4つの窓を持っているという概念です。4つの窓は、「お互いが知っている開かれた窓(A)」「私が気づいていない無自覚の窓(B)」「私が隠している隠ぺいの窓(C)」「どちらも知らない暗い窓(D)」となります。

 

人や状況の中にある最高の状態を引き出すということは、まずメンバーが相互に自分のことを開陳し(Cの窓を広げる)、その上で他者に対する認知を知らせ合う(Bの窓を広げる)ということです。メンバーが互いの認知を知らせ合うということは、慣れないと難しい作業ですが、一旦この壁を乗り越えるとオープンな対話的関係ができ、チーム力が高まっていきます。

 

以下次回に続く。

この記事の書き手はJoyBizコンサルティング(株) 波多江嘉之です