• 実践でのコンテントとプロセス:政治的な支援を開発する~組織開発(OD)の実践って、どうするの?-【90】~

実践でのコンテントとプロセス:政治的な支援を開発する~組織開発(OD)の実践って、どうするの?-【90】~

変革プロセスにおける政治的支援は、チェンジ・エージェントにとってとても大切なリソースであり、変革の全ての段階で留意しておくべきことになります。変革で成功しているケースは必ず後ろ盾・スポンサーと言われる人がいます。

例えば、地方から日本を変えるということでしばしば話題に上る島根県海士町では多くの人々が変革の実践者として活躍していますが、その基盤をつくったのが山内道雄さんという町長です。また、日本のODの世界では有名な『One Panasonic』も当時の社長だった大坪文雄氏を巻き込むことで勢いを増していきました。そもそも『One Panasonic』の言い出しっぺは大坪さんです。

 

世の中には権力(Power)を毛嫌いする人たちもいますが、権力(Power)がなければ物事が動いていかないのもまた事実です。考えるべきは、権力(Power)の使い方の問題です。うまく使えば人々にポジティブに受け止められ受容されますが、下手に使うと反発を食らうのです。権力(Power)はうまく使って良い成果を出した場合、素晴らしいリーダーシップだと言われるのです。

さて政治的支援ですが、変革がうまくいくにはその組織や社会の構成員のクリティカルマス(影響力を持つ過半数)となる支援を取り付ける必要があると言われます。会社でいえば、ミドル層である課長や部長クラスの支援を如何に取り付けるかです。ミドル層は現実に職場を回しているとても重要な層です。

若手がいろいろ活動をしようにも、職務命令権限はミドル層が持っています。ここを無下にはできないのです。チェンジ・エージェントは理想を語るだけでなく、この層に対して「手を変え、品を変えて」の粘り強いコミュニケーションをしていく必要があります。それは日常の中での対話であったり、大手の会社だと対話ワークショップを開いたりといろいろな方法があるでしょう。

そしてこの中で議論していきたいことは、将来に対する見通しと変革に対する価値観です。特にトップマネジメントやミドル層になると、組織運営に対する自分なりの価値基準/自分なりのものの見方や考え方というメガネを持っています。そしてすべての人は、このメガネを通して世の中を理解しています。ですから、このメガネが合わないと話がうまく進まないのです。

 

政治的支援は変革のさまざまなタイミングでそれを確認していくことが求められます。チェンジ・エージェントの立場から言えば、例えば「変革の基本計画」の合意の時、個別課題の問題解決の方法を確認する時、中間での進捗度合いの報告の時などできるだけ多くの機会を逃さず確認していくことが大切です。政治的支援者も人間ですから、勘違いや考え方の変化は当然あるんですよ。

だから「え~~~、この前確認したでしょう」ということは頻繁にあります。そんな時チェンジ・エージェントは凹んでもしょうがない訳ですから、レジリエンスを発揮して粘り強く交渉していくことになります。従って、チェンジ・エージェントが身につけておくべきは、研究者が言うところの組織開発(OD)の理論だけではなく、状況観察力であり、対人関係力であり、政治的明敏性であり、レジリエンスといった、他者に働きかける時に必要となる、いわゆる非認知能力と言われる能力です。これがなければ政治的支援を取り付けるということが、かなり難しいものになります。

ODメディアの第2回発信でご案内した下記のマトリックスをご記憶でしょうか。

 

この見極めと、それぞれにどう対処すべきかの戦略が大切なのです。①と②で組織の権力構造の過半を押さえ政治的支援を獲得することができれば、ODは持続性のある活動になります。

 

  • この記事の書き手はJoyBizコンサルティング(株) 波多江嘉之です