• ODの実践は泥臭い~組織開発(OD)の実践って、どうするの?-【87】~

ODの実践は泥臭い~組織開発(OD)の実践って、どうするの?-【87】~

組織開発(OD)と言おうが言うまいが、要は組織や社会(コミュニティ)の現状を変えていく働きかけが組織開発(OD)です。

で、組織開発(OD)でいうところの「現状を変える」ということは、関係者の思考と行動および関係性を変えていくことになります。要するに、組織開発(OD)の変革対象は人間集団ですよね。加えて、人間集団に働きかけるのは、個人または複数の変革推進者(チェンジ・エージェント)という人間自身です。ここ忘れてはならないことなのですが、働きかけというのは「人と人とのぶつかり合い」という事です。チェンジ・エージェントは、当り前ですが、他者に変革の働きかけを実施するということをやっていくわけです。

そして、この働きかけには「定型的パターン」はありません。つまり、相手次第なところがあるわけです。もちろん、診断のフェーズから働きかけは始まっているのですが、本当にその難しさが始まるのは課題を明確にし、時に発注者(変革の導入者)自身の思考と行動の変革が必要になってくる実施段階です。

 

普通、発注者は「私はok、あなた(ここでは組織メンバーのこと)はnot ok」と認識しています。でも、発注者が必ずしもokではないこともあります。また当然のことに、支援するチェンジ・エージェントあるいは外部コンサルタントは、発注者あるいは意思決定者と同じ思考や認知パターンを持っているとは限りません。外部から見ると発注者と変革対象者の関係に問題があることもあります。

また、もっと厄介なのは発注者がその組織の担当者で、意思決定者あるいはスポンサーと変革対象グループの間に入り、意思決定者あるいはスポンサーに忖度しながら事を進めていこうとしている場合です。この場合、ともすれば変革の結果を早急に求めて「力技」で介入を実施するようになり、変革対象グループに対して強制的に行動変容を求めてしまう事にもなりかねません。

このような場合、変革対象グループの人々は「変わったふりをする」可能性が大です。望ましいのはもちろん、変革の対象者が自ら進んで変わっていこうとすることです。チェンジ・エージェントは、そのきっかけをどのようにしてつくっていくかがものすごく大事なんです。しかし、そのきっかけづくりのプロセスは、必ずしも発注者がイメージしているようなプロセスで起きるとは限りません。実際、発注者は自分のイメージと異なるプロセスが始まるとイライラしてしまうものです。しょうがないっちゃ、しょうがないんですけどね。

 

変革の実践は、OD事例などで書かれていることよりもっと深層にあるということを我々は理解する必要がありますし、変わっていこうとするきっかけがどこにあるのかをもっとよく理解しておく必要があります。第三者が「今のままではダメだ」「未来を創造しましょう」といっても、当の本人たちが「変化が本当に必要だ」という気にならなくてはポジティブな変化は起きません。

こんな時にチェンジ・エージェントはどのような態度や思考が必要になるのでしょうか。それは、自分の働きかけが相手にどのように受け止められているかを感じて、働きかけている対象者や集団の行動変容が起きるようにチェンジ・エージェントとしてのコミュニケーション戦略を明確にしていかなくてはなりません。E.シャインがいうところのORJIモデルに則り、自分の内面のざわつきをよく理解し、認知と行動の柔軟性を高めて行動選択をしていく他ありません。

そして、相手との信頼関係を粘り強く構築していく他はないのです。相手との相互理解がなくして物事は動きません。チェンジ・エージェントが「あの人たちは分かっていないよね」と愚痴っても、それは自分の慰めにしかならないのです。

 

チェンジ・エージェントも人間ですから、凹んだり、頭に来たり、いろいろイライラするのですよ。でも、イライラしても問題は解決しません。むしろ悪化してしまいます。そんな時は、一呼吸おいて自分のコミュニケーション戦略を見直してみることが大切です。Use of Selfって泥臭い実践なんです。

 

※この記事の書き手はJoyBizコンサルティング(株) 波多江嘉之です