• ポスト・コロナの組織を考える②~組織開発(OD)の実践って、どうするの?-【70】~

ポスト・コロナの組織を考える②~組織開発(OD)の実践って、どうするの?-【70】~

~組織の形態をどのように理解するか

組織の形態や運用について、みなさんはどのようなイメージやメタファー(比喩)をお持ちでしょうか。よく言われるのは「ピラミッド型」ですね。トップまたはボードメンバーが三角形の上にいて、下に向かって意思決定権限者または管理者がぶら下がり、一番下は作業者ですね。だから、一番下は「下っ端」と言われる。

日本は、下っ端は学校からの一括採用で若手が構成していますから、年齢も概ね低い、という構造ですね。世界的には、規格品の大量生産大量販売というモノづくり全盛期に成立した組織形態です。

 

1980年代くらいから「逆さまのピラミッド」という概念が出てきました。これは、上記のピラミッド型を逆さまにした形を指して言われます。

時代としては経済の中に占めるサービスビジネスが台頭し、サービスビジネスの特性として顧客に対する価値提供は「顧客がサービスを受ける現場での体験」にあるので、その現場を預かっている従業員が気持ちよくサービス提供ができなくては顧客の体験価値が担保できないという事で、その従業員と顧客の接点を図としては一番上に描き、管理者以下経営陣は現場を預かる従業員の活動がもっとも効果的であるように「現場を支援すること」が大切であるという考え方に基づく組織形態です。従って、偉い人ほど下に描かれる組織概念図です。日本ではTDL(東京ディズニーリゾート)などがその典型ですね。

 

このように、組織形態はその時代のビジネスの在り方と密接に結びついています。しかし、ティールの考え方はちょっと違います。それは、人々の意識の発達段階を前提にしているからです。となると、サービス組織であっても「レッド型」はあり得るわけで、トップの号令一家全ての現場がマニュアルに沿って仕事をするという事になります。チェーン店組織などはその典型でしょう。

例えば、弊社JoyBizブログの「ソモサン」で取り上げた「いきなりステーキ」は、「一ノ瀬社長のもとに、社長や平社員も組織の目的を実現し続けるために、共鳴しながら仕事をしている」会社でしょうが、組織運営/マネジメントは社長の号令の下に動いているようですので、ティールではなくレッドまたはオレンジに近い組織ですね。そう考えると、ティール組織の眼目は「組織の進化する目的」にありそうです。この、進化する目的という事をどのように解釈していくのかが、今後の組織運営ではどうも重要な概念になりそうです。

 

「進化する目的」の意味を考えることをちょっと脇に起きます。

ティール組織を最も簡単に説明する喩えとして「社長や上司がマイクロマネジメントをしなくても、組織の目的実現に向けて進むことが出来ている、独自の工夫に溢れた組織のこと」、という喩えがなされます。でも、この喩えの組織は前々から結構あったんですよね。

日本で最大の地方銀行の例ですが、1980年代に以下のような問題意識でマネジメントの在り方を大幅に変えた組織があるんです。きっかけは優秀支店の支店長の振舞いにあったんですね。どういうことかというと、優秀支店の支店長の特徴は「本部の施策に逆らっている」というものだったんです。

これは喧嘩を売っているわけではなく、支店長曰く「本部の施策はレストランのメニューと同じです。だから、全てを実施しようとすればメニューの料理を全部食べるのと同じで腹を壊しますよ。または、ちょっとずつ食べることになり、どれも中途半端になります。だから、私は食べるものと食べないものを地域経済や顧客の事情に合わせて選別してるんです」というものでした。

これはティールが言うところの「本部がマイクロマネジメントをしなくても、組織の目的実現に向けて進むことが出来ている、独自の工夫に溢れた組織」にあたりますよね。字面だけを見れば。

 

因みに、当時この銀行で実施されたのが「支店長対象の戦略思考啓発研修」です。じゃ、どういった組織も管理者に「戦略思考啓発研修」を実施すれば、最先端を行く組織に変貌するのかと言えば、??????です。 じゃ何を考えていかなくてはならないのか。ここが問題ですね。

 

※この記事の書き手はJoyBizコンサルティング(株) 波多江嘉之です