• 組織開発(OD)からポジティブ組織開発(POD)へ-その2~組織開発(OD)の実践って、どうするの?-【63】~

組織開発(OD)からポジティブ組織開発(POD)へ-その2~組織開発(OD)の実践って、どうするの?-【63】~

~トップダウンアプローチの落とし穴

組織が新しい環境に適合していくには、組織の整合性を再構成しなくてはならない。しかし環境が目まぐるしく変わる今日、整合性は一時的なモノであり、それは直ぐに非整合になります。ここにトップダウン型組織変革(OC)の落とし穴がありそうです。

そこで最近重視されるのが対話型アプローチで、この前提となるのが社会構成(構築)主義です。この立場に立てば、真実は自分たちが共同で創り出すものになります。別の言い方をすれば、診断し探求するというステップではなく、探求と変革を同時に行う事で常に学習し変化していく柔軟性と強靭さを身につける組織開発が大事という事になります。

 

もちろんトップダウンの診断アプローチでも「アクションリサーチ:No Action without Research , No Research without Action」といって探求と変革は切り離せないものですが、対話型ではこれが強く意識されます。ある意味、話してみなければ介入の方法が生成しないというスタンスなのです。これって、計画と統制というマネジメントに慣れた経営者が受け入れやすいものでしょうか。対話型の「真実は自分たちが共同で創り出すもの」という考え方は、経営者にしてみれば「あなたの見方は信用できない」と言われていることと同じかもしれません。

例えば、あなたが外部のコンサルタントとして、依頼者でありスポンサーでもある経営トップに会って、彼から組織の現状についていろいろな問題認識を聴きます。そして、どうやったらよいか提案書をくれと言われたとします。その時、当事者の人たちがどう思っているか分からないのでインタビューをしたいと申し出たとします。多くの経営者はそれを受けてくれます。

じゃということで、アンケートやインタビューをしてデータを集めます。それに対して、経営者は何を期待するでしょうか。概ねは、どうすれば問題解決が出来るかの処方箋を期待するのではないでしょうか。で、処方箋を出すと「あーでもないこーでもない」と評価が始まり、下手すればその変革計画は内部の経営陣が理解する方法でしか実施されないという事になります。

結果、介入(働きかけ)は単なる発破がけになったり、闇雲に頑張ろうとなったり、制度改革で強引に組織の行動を変えようとする。で結局は、組織行動は変わらないという事が起こるのです。いや~~~、これ笑い事ではないですよ。これでは、持続的に当事者が実践していく変革にならないのです。

よしんば、あなたの提案をそのままトップが受けたとします。それはそれで、今度は実質のクライアントである当事者が「いや、この提案は現場の実態と違うよね」と反応することもあります。どちらにしても第三者が実施する診断アプローチはかみ合わないことが出てきます。

 

従来にも増して「適応を要する課題(ロナルド・ハイフェッツ)」が圧倒的に増大しているという事は、組織の構成員たる人々が、自分たち自身で自分たちのこれまで育んできたものの見方や考え方および行動様式を問い直し、自らが自律的に変化していくことをますます求められるという事でもあります。つまりは、起こっていることに対してそれを自分事と捉えて対処していくことが強く求められるのです。第三者の診断を基にした介入計画を作成するトップ主導の組織変革を待っている暇はないのです。変革は下から上へというのもあるのです。…続く

 

注:適応を要する課題とは

従来の思考や行動の延長線上にある技術やスキルでは問題解決できない課題を「適応を要する課題」という。例えば、日本の少子高齢化という課題には、人口が増えていた時代に構築されたシステムや前提となる考え方そのものを変えていかなくては対処できない。

 

※この記事の書き手はJoyBizコンサルティング(株) 波多江嘉之です