• 組織開発(OD)からポジティブ組織開発(POD)へ-その①~組織開発(OD)の実践って、どうするの?-【62】~

組織開発(OD)からポジティブ組織開発(POD)へ-その①~組織開発(OD)の実践って、どうするの?-【62】~

今回のテーマはなかなかに難しいテーマです。とはいえ、これからの時代の中で組織開発(OD)を効果的に実施しようとすれば、やはり理解しておきたいテーマです。何回かに分けて寄稿していきます。

~組織開発(OD)と組織変革(OC)

この二つの言葉、組織開発(Organization Development)と組織変革(Organization ChangeあるいはChange Management)は似て非なるものです。兄貴分はODで、OCは弟分なんですけど1990年代くらいからAoM(Academy of Management)もOD&Cなんてラベルを使うようになり、そのころからODとOCがごちゃごちゃしてきて訳わからなくなってきました。まあ、このあたりの経過は南山大学中村さんと立教大学中原さんの「組織開発の探求」をお読みいただければ「なるほど」という理解ができます。

もともとODは「より良い組織にしていきたい/素晴らしい組織を創っていきたい」という願望があり、それをどのようにして実践していくのかというところから始まっています。1970年代にはW.バークが言ったように「官僚組織の打破」が「より良い組織づくり」という意味でした。それが、1980年代には「迫りくる日本企業の脅威に対抗」という視点から「組織変革(OC)」ということが目的になってきます。この辺りからODが既存組織に対して変化を起こすためのツールになってくるんですね。私も1990年代はバブル崩壊後の日本企業で、組織変革というラベルで稼がせてもらいました。

ところで、ある研究者に言わせれば、意図的な変革はODの不得意な分野だそうです。(対話型組織開発:G.ブッシュ、R.マーシャック)。とはいえ組織の問題解決の実務では、ODやOCが言っているところの価値観やアプローチ方法を如何に活用するかが大事な関心ごとなんですけどね。それではODとOCの違いはどこにあるのか、ここから見ていきましょう。

~診断型組織開発と組織変革

NTL OD-Mapというものがありますが、これはODの進め方を整理したマップ(ステップ)です。そのステップを簡略化してみると、『エントリーから始まり⇒リサーチ⇒リサーチに基づく行動計画づくり⇒行動計画の実施⇒評価⇒終結/チェンジエージェントの離脱』という流れになります。OCではこのステップは、「現状組織:present state」⇒「転換過程:transition state」⇒「将来組織:future state」というプロセスになります。この流れが最近では「診断型組織開発(G.ブッシュ、R.マーシャック)」と言われるようになっています。

 

ところで、診断型組織開発あるいはOCの仮説は「組織が高いパフォーマンスを生み出すには組織の構成要素の整合性を確保すること」です。それは、1980年代にアメリカ企業が日本企業に翻弄されるようになり、必然的に戦略の変更を迫られたことと無縁ではありません。戦略が変われば、その戦略を実行/起動させる組織が変わっていかなくてはなりません。過去の環境に適合していた組織は新しい環境には不適合であり、新しい環境適合を意図して戦略が変わればその新しい戦略は古い組織に対しては非整合性を創ることになります。

従って、新しい戦略実行のために現在と未来の組織の整合性ギャップを査定し、新しい整合性を確保するための介入が実施されることになります。これが組織変革活動です(別名チェンジマネジメントとも言います)。この活動の期間を「転換過程:transition state」と呼んだのですね。戦略変更に伴う組織変革ですから、介入は必然的にトップダウンです。まあ、スタートしたらボトムアップ的な新しいアイデアが次々と実践される状態が生まれないとうまくいきませんが、方向づけと転換過程の管理はトップマネジメントとコアチームと呼ばれる人たちの責任です。

そして、この組織変革は「変革のスピード(時間軸:予応的か即応的か)」と「変革の複雑性(組織構成要素間のギャップの度合い)」の程度によって、変革は「調整」から「再構成」まで変革の困難度が異なります。

 

組織行動のCongruence Modelで有名なデービッド・ナドラーが1980年代に手伝ったXeroxの再生では、コアチームメンバーが整合性のギャップマップを持ってラインマネジャーと変革プランを練り、実行するために組織中を走り回ったといわれています。その時代は「戦略的組織変革」という言葉もよくつかわれました。

これは、将来、不連続の環境変化が起こるが、組織の人たちはそれを十分認識していない。従って、まだ組織業績に余裕があるうちに新しい戦略を打ち出し、できるだけ痛みを伴わないように人々が新しいスキルを身につけ、かつ思考と行動を変えていき、それがより良く実践できるように制度や仕組みも変えていくというものです。ですから、何を、いつ、どこから始めるのかといったことはとても重要な論点になります。

どうでしょう。非常に論理的ですね。また、マネジメントという概念にも合いますね。OCは株主から変革を迫られる経営トップにしてみれば理解しやすいし、説明しやすいストーリーを作れるという事です。当然うけますよね。

 

ところが最近、この概念ではうまくいかない環境が生まれてきたのですよ。要するに、組織の整合性は一時的なモノであり、それは直ぐに非整合になるというものです。それはどういうことなのでしょうか。…続く

 

※この記事の書き手はJoyBizコンサルティング(株) 波多江嘉之です。