• がっかりな問題解決~組織開発(OD)の実践って、どうするの?-㊴~

がっかりな問題解決~組織開発(OD)の実践って、どうするの?-㊴~

~トカゲのしっぽ切りじゃダメですね

今回は「またか」という、組織の問題解決についてです。

 

913日にゆうちょ銀行と日本郵便が投資信託の不適切販売で処分を発表しました。記事によると社内調査で勧誘前の確認を怠っていた規定違反が発覚したという事です。平成30年の1年間でゆうちょ銀行では17700件、投信販売の委託先である郵便局で1891件。ゆうちょ銀行では、直営233店舗の内213店舗と約9割もの店舗に違反が広がっていたようです。

ゆうちょ銀行の担当者は違反の背景を「社員が手間をかけたくないと安易に考えていた」と社員の認識不足を指摘。本来は、管理者の承認が2回必要とのこと。「本社の指導不足だった」と説明しています。ゆうちょ銀行の常務執行役員はコンプライアンス意識の向上に全力を挙げると共に、確認を怠った管理者約850人への処分を、社内調査を踏まえて決定すると発表しています。また、過度なノルマが原因ではないかという質問に対して、ゆうちょ銀行の投信事業担当者は「ノルマが原因ではない」と否定したようです。

この記事を読んで「あ~~あ~~、またか」という感想を持ったのは私だけでしょうか。上層部の指示も何もなしに9割もの店舗が意識的に違反するでしょうか。全く知らずに9割もの店舗が違反をしていたのでしょうか。現場がそうしてしまう圧力はなかったのでしょうか。それともネガティブな忖度でしょうか。先に発表されたかんぽ生命の新規契約に対するインセンティブの仕組みもそうですが、不正を誘発させるようなマネジメント環境になっている可能性があるのではないでしょうか。

どちらにしても、上層部の責任は大きいはずなのに、それにはなにも言及していない。「保身優先の問題解決トカゲのしっぽ切り」と言っては言いすぎでしょうか。このような処分と対策では「信頼」という組織マネジメントの根幹は根腐れしてしまいます。

 

組織は、組織のサブシステムがそこだけで組織全体と異なる動きをすることはありません。もしするとしても、それは例外的に少ない割合です。このゆうちょ銀行の場合、違反をしなかった20店舗の業績と管理者のそれまでの評価を見てみたいですね。その20店舗は、社内ではどう見られていたのでしょう。

組織はシステムであり、全体は全体として動いています。部分が部分としてそれぞれ独立して(ブチ切れて)動いているわけではありません。上下左右と相互に繋がって動いているのですよ。当たり前ですけど。上層部は、日本におけるこれまでのさまざまな組織不祥事から全く学んでいないと言えます。コントロールはあっても、マネジメント不在ですね。

~トップからの変革が不可欠~

ゆうちょ銀行の場合、問題はコンプライアンス徹底や管理職の意識ではなく、上層部のマネジメントの根底にある価値基準でしょう。記事によれば、低金利の環境で運用収益が落ち込むなどがあり、投資販売に過度な期待がかかっていたということですが、数字に責任を持っている苦労は十分わかります。そして、経営はすべて結果であるという事は誰しもが分かっていることです。但し、私たちはルールの中で競争しているのです。

ゆうちょ銀行の上層部もそんなことは百も承知なはずです。なのになぜ、このような事態になり記事のような処分の内容になるのか、です。現場管理者の責任にするトカゲのしっぽ切りのような、あるいは本部の指導強化のような問題解決では問題は解決しないでしょう。

「郵便局は民営化が進められながら、全国でサービスを維持するユニバーサルサービスが義務付けられており、かつ業務範囲は制限されながら政治的意図によって限度額は相次いで引き上げられるなど、日本郵政は経営のジレンマを抱えたままの状態で走っている。(経営電論より引用)」という意見もあります。また、金融庁の思惑も絡んでいるという記事もあります。組織はシステムとして動いており特定の部位をいじるだけでは変わらないという事を理解したうえで、ガバナンスそのものを変革していかなければ組織活動の品質はますます低下していきます。

 

組織開発(OD)の視点から言えば、トップマネジメントの自己認識・組織認識・環境認識を変えていく必要があるのですが、もっとも重たい課題です。 

 

この記事の書き手はJoyBizコンサルティング(株)波多江嘉之です。