• ヨコ連動は大切だ②~組織開発(OD)の実践って、どうするの?-㊱~

ヨコ連動は大切だ②~組織開発(OD)の実践って、どうするの?-㊱~

~ヨコ連動と評価のメンタリティ

ヨコ連動とは、「仕事のプロセスに谷間をつくらないようにするという事である」という認識がほとんどだと思うのですが、もう一つは会社丸ごと課題に対してタテ割りの機能部門が協力して問題解決にあたるというものがあります。このことは全社最適という言葉を使って表現されることもあります。

例えば、ダイバーシティ、SDGs、ブランディングなどはその代表ですね。大手企業では、その担当部署をつくりさまざまな施策を実現に移しているところも多くあります。

ダイバーシティ、SDGs、ブランディングといったような課題は、単に仕組みや技術的な施策だけでは解決できないことが多いものです。ロナルド・A・ハイフェッツがいう適応を要する課題ですね。ブランディングは、マーケティングの重要なテーマであり広告や宣伝、商品開発やデザインが主たる領域でしょうと思っている方も多いのでしょうが、会社によっては従来の組織文化や働き方を変えなくてはならないこともあるのです。

例えば、USJ復活のマーケティングで名を馳せた森岡さんは、その実現のための組織づくりに非常に多くのエネルギーを注いでいます。働き方を変えるために評価の仕組みも変えています。

 

話は戻りますが、会社丸ごと課題に対しては「機能別組織が協働して行動すること」がとても重要な分けです。で、そのカギは機能別組織の長、つまり取締役OO担当部長や部門長クラスの人間関係がどれほどうまくいっているか、十分なコミュニケーションが取れているかなんですよ。

また、彼らの上位にいるリーダー(つまり社長)が、十分な政治的対人関係力を発揮して取締役や部門長クラスをまとめているかです。そそ、とても人間臭いところがあるんです。当たり前ちゃ、当たり前ですけど。

ところが、一般的に組織で評価され階段を上っていくには、その置かれた部門の目標に対して実績を出すことが求められます。今年やっと表ざたになり行政処分の一歩手前まで行った郵政の保険契約不適切販売問題を見るまでもなく、自分の部署の目標を達成した人が偉い(評価が高い)人なんです。上司から見ても、自分の部署の目標を達成してくれる部下が一番で、余計なことを考えて目標に疑問を持つ部下は低評価なんですよ、普通。ある大手情報サービス企業による「内定辞退率予測」問題も、このサービスを開発したチームは社内表彰されていますからね。

組織での成功は何で評価されるのかというバイアスが私たちには根強くあります。そして、それではいかんと思いながらも、行動を変えられないという事も多いものです。そりゃ、組織人たるもの、のけ者にされたくありませんから。

で、当該機能部門の長であれば、その課題や仕事はどこの部署の仕事かをかなり気にします。そして、自分の部署の評価につながるなら勢力拡大とばかりに「それ、うちでやる」となることも多い。そうすると、○○部署と協力し合って物事を進めた方が効果的であるにもかかわらず、単独でかつその部署のミッションに合致する範囲で事を進めようとする。そうすると、目的や目標が矮小化して結局のところ会社丸ごと課題には十分な貢献をなしえない、という事が起こるのです。

 ~我を捨てられるか

会社丸ごと課題に対して何らかの問題解決を実行しようとするなら、大切なことは「我を捨てられるか」だと思います。要は、自分が所属する部署の都合を二の次にして全体的視野で物事を見て行動できるかです。手柄の取り合いや勢力拡大というようなメンタリティーは当分封印です。手柄の取り合いや勢力拡大は、外的動機づけであり組織人として上を目指そうとする人が持つごく当たり前の欲求ではありますが、ある程度の立場になればこれを捨てて、自利利他的な思考と行動に切り替えていくことが求められます。

ところが、自利利他という精神の発揮は意外と難しい。利他は、何も相手を受容するという事だけではなく、全体の正しい目的のためには言うべきことは言うというのも含まれます。

ここですよ、「言うべきことは言う」。これは、かなり鍛えられていないとできません。どうしても、「ここでそれを言っていいのだろうか」という自己検閲が入ります。自分の正義と保身と経済的見返りと、まあいろいろな考えが錯綜して「沈黙」という結果になることは多いものです。

 

組織開発(OD)の実践とは、泥臭いものです。草の根運動という進め方もありますが、C.アージリスが言ったように「組織開発はトップから」というのは、やっぱり重たい格言であると思うのです。

この記事の書き手はJoyBizコンサルティング(株)波多江嘉之です。