• 自分事で仕事をする人をつくる~組織開発(OD)の実践って、どうするの?-㉚~

自分事で仕事をする人をつくる~組織開発(OD)の実践って、どうするの?-㉚~

~自分事で仕事をするのは厳しい世界である~

自分事の環境で仕事をするというのは頭で考えるより厳しいものがあります。フロムの「自由からの逃走」を読むまでもなく、人間、自由にやるというのはとてもきついことなんですよ。裏には責任が付いて回りますからね。

よく、「思う存分にやれ。責任は俺がとる」というかっこいい上司がいまして、そんな上司に就きたいよね。という話がありますが、思う存分にやれといわれた人たちは、いつから自分で責任をとるようになるのでしょうか。分かっている人は、上司からそのようなことを言われても「自分で責任をとる覚悟が出来ている」のですが、分かっていない人は何時まで経ってもただのやんちゃな奴で終わってしまいます。

今を時めく星野リゾート。現場に権限が委譲されて、従業員が自分たちの創意工夫で顧客満足を高めている組織ですが、これは当然一人ひとりに自主性が求められるということです。ですから、そういったことが合わない人はさっと辞めていくのだそうです。エンゲージメントが高いかどうかのデータは持ち合わせていませんが、多分今いる人たちのエンゲージメントは高いのでしょう。

でも、結構辞める人はいる。入社した人の中には「星野さんに直接相談できると思って入社したけど、そうではなかった」といって離職する人がいたようですが、それってものすごい勘違いですよね。

エンパワーされて主体的に仕事をやっていくことができる環境をつくれば離職率も下がるという論調がみられますが、そのような環境とそれに合う従業員たちが入社してくるようになれば離職率は下がります。私が知っている会社では、エンパワーされていないし自分事で仕事をする人が少ないと嘆く会社があるのですが、これまでその会社は離職率が極めて低かった会社です。

ということで、自分事で仕事をする人が沢山いる会社をつくるというのは、なかなかに骨が折れる挑戦なのですが、これまでの実践や調査によって、個人が高いパフォーマンスを生み出すのはどのような要因が影響するかは概ね分かっています。

~人のパフォーマンスに影響を与える5つの要因

      目標:自分の職務上期待されている成果内容と、その測定基準を理解していること。また、職務の理由と優先順位が理解できていること。

      ツール/情報:仕事を遂行するにあたって必要な資源(ツールや情報)が揃っており入手可能であること。わかりやすい職務設計であり仕事  を進めるにあたり余計なコスト(時間、手間暇、心理的負担)が掛からないこと。

      評価:職務目標を達成したら、どのような報酬(リワード)を受けられるか明確であること。また、本人はそれを理解していること。

      フィードバック:本人は職務目標をどれくらい満たしているのか、適切なフィードバックをタイミングよく受け取っていること。

      本人の能力:本人は職務を遂行するのに十分な能力(知識、技能)、意欲を有していること。

本人の能力以外は、すべてマネジメントの要素です。少なくとも「自分事で仕事をする人をつくる」には、この4つが整っていることが必要です。こういったことが不十分でも自分事で仕事をしていく人たちは、超優秀な一握りの人たちだけです。

最近米国のギャラップ社が「Q12(キュー・トゥエルブ)」という質問を開発したようですね。これは12の質問でエンゲージメントのレベルを測定するというものです。以下参考までに。

Q1:職場で自分が何を期待されているのかを知っている                                        Q2:仕事をうまく行うために必要な材料や道具を与えられている
Q3:職場で最も得意なことをする機会を毎日与えられている
Q4:この7日間のうちに、よい仕事をしたと認められたり、褒められたりした
Q5:上司または職場の誰かが、自分をひとりの人間として気にかけてくれているようだ                         
Q6:職場の誰かが自分の成長を促してくれる
Q7:職場で自分の意見が尊重されているようだ
Q8:会社の使命や目的が、自分の仕事は重要だと感じさせてくれる
Q9:職場の同僚が真剣に質の高い仕事をしようとしている
10:職場に親友がいる
11:この6カ月のうちに、職場の誰かが自分の進歩について話してくれた
12:この1年のうちに、仕事について学び、成長する機会があった

ギャラップ社によると、特に業績に直結する、マネジャーが注力するべき6つのポイントはQ16だそうです。この6つの質問に部下がすべて5点をつけるのはとても困難とされています。

 

「人のパフォーマンスに影響を与える5つの要因」の①~④と似ていますよね。組織開発(OD)的視点から言えば、「自分事で仕事をする人」をつくるには、マネジメントがこの4つや6つの要素を満たすようにならなければならないという事です。それと忘れてはならないことが、従業員自身が「自分事で仕事をするとはどういうことか」をしっかり自覚するようになることです。この2つの相乗効果があって「自分事で仕事をする人が沢山いる組織」を創ることが出来るのではないでしょうか。

 

      この記事の書き手はJoyBizコンサルティング(株)波多江嘉之です。