• 責任意識を高める②~組織開発(OD)の実践って、どうするの?-㉘~

責任意識を高める②~組織開発(OD)の実践って、どうするの?-㉘~

~責任意識って何?~

考えれば考えるほど、責任意識って難しいなって思う今日この頃です。

家庭でもそうですね。旦那と奥様との役割分担とそのことに対する責任意識。ちょっとやりすぎると「余計なことはするな」と言われるし、ちょっと忘れると「何もやってくれない」と怒られるし、どうすりゃいいのと思う方も多いのではないでしょうか。

ん? これは私だけの問題でした。<(_ _*)>

世の中も会社も同じですかね。責任意識と共感性の二軸から、ちょっと下図のようなことを考えてみました。

共感性(他者と喜怒哀楽の感情を共有すること)という特性は対話型ODの中でも重視される特性ですが、こればかりでは「付和雷同」で、話は面白くみんなが共感しても、話が終われば誰も行動しないというリスクがあります。これは、例えば対話型OD手法の一つである「ワールドカフェ」なんかをやった後によくみられる現象です。話は盛り上がったんですけど、その後何も起こらなかったんですよ。といった話をよく聞きます。

研究によると、善い行いをする、世界をより良い場所にするなど、良いことをしたいのであれば、共感は悪い指針であり、良い人であるためには自制心と正義感とともに客観的な思いやりが必要だそうです。(イェール大学、心理学部教授ポール・ブルーム)

いわゆるポピュリズムは悪い共感なのですかね。まあ、正義感という意識も時々厄介ではありますが。

ということで、最初に考えるべきことはやっぱり「責任意識」。つまり、「私」あるいは「私たち」の責任とは何かです。ところで、責任意識とほぼ同義語に当事者意識があります。いろいろ調べてみると当事者意識とは以下のような意味が含まれるとありました。

「当事者意識とは、自分自身が、その事柄に直接関係すると分かっていること。」

当事者意識がない人とは、与えられた仕事なり雑用なりが自分の仕事と思っていない人です。具体的には、その仕事は誰か他の人の仕事であって、それを「手伝っている」という意識しか持たない人です。そのような人たちは、例えば以下のような意識になっています。

  • 誰かがなんとかしてくれると思っており、危機感がない。
  • 他責・他者批判を行うが提案をしない社内評論家が多い。
  • 最後までやりきろうとしない。
  • 何とかなると思い先送りの姿勢が蔓延している。

いずれにしても、責任意識がないという事は「変なトラブルを抱えると自分の評価に響く、変なミスをしたくない、面倒なことに関わりたくない」といった意識です。

ところで、このタイプの人に当事者意識を持たせるためには

  • 名指しで仕事を頼む
  • 仕事のパーツごとに担当を決めて責任を明確にする

他にも

  • 褒める、おだてる
  • 周囲との関係性をもう一度考えさせる

といった方法が見つかりました。そういう方法でうまくいくこともあるでしょう。

例えば営業だと、最終責任は売り上げを上げることですが、その前に自分自身の行動の何に責任を持つべきか、また誰に責任を持つべきかを分かっておく必要があります。

例えば、単に売ればいいではなく、お客の何に責任を持つのか、売った後の何に責任を持つのか、営業の過程で社内のどことどのようなコミュニケーションをとるべきかについてどんな責任を持つべきかなど、一つのことが完成するまでにはそれこそ様々な事柄に関して責任を持った行動が求められます。ですから、仕事の一つひとつに対して、私とみんながどのように関与しているのかを理解することは、責任意識を高めるためにとても大切なことです。しかし、中には「そんなこと知ってますよ」という人がいて、でも他から見れば全く責任行動がとれていない人もいます。

 

~責任意識を高めるには~

私的なことで恐縮ですが、私の周りで「あいつ変わったな」と言われる人たちに共通するのは、「実存の危機」を経験した人たちです。実存の危機とは、今の自分では生きていけないとか、みんなから爪弾きにされるといった経験をした人たちです。

最近は、「辛いことは我慢せずに逃げたらいいよ」という風潮もありますが、まだまだ未成熟の子供ならいざ知らず、大人になっても選択肢がそれしかないと社会的弱者になってしまいます。

ですから、どこかで「逃げずにやりきる」という意識と姿勢を学ぶ必要があるのです。このようなことはどこかで学んでおかないと、会社という組織社会では十分なパフォーマンスを上げることはできません。

とくに人間関係の厄介さにどのように対処するのかは、体験的に学習しておくことが大事です。この学びは、子供のころから少しずつ学んでいくことが良いのですが、そのような体験をしていないと大人になってそれを学習するのはとても辛い学習になります。なぜかというと、自分が今まで身につけてきている態度や価値観を捨てなくてはならない(学習棄却)かもしれないからです。

※      このような学習の場の一つが、ラボラトリー・トレーニングです。

さて、職場における一人ひとりの責任意識を高めるという事に話を戻しましょう。責任というのは、やっぱりそのことに対する「当事者」が「一堂に会して」、みんなで話し合わなければならない問題ですね。なぜかというと、仕事には、それぞれその存在意義があるからです。

もし、職場で自分たちがしている仕事に対して、その存在意義が見えなければ、その仕事をやめて他の仕事をするべきです。その方がよほどリソース(人や時間)を有効に活用していることになります。そのような対話があってこそ、責任という問題をみんなで理解することができます。

そして、この対話のプロセスこそが組織開発(OD)だと思うのです。つまり、我々の責任とは何かについてみんなで答えをつくっていく作業が組織開発(OD)であり、大切なプロセスだと思うのです。

会社や上司から「これがお前の責任だ」と、教え諭されるのも未成熟な状態では必要でしょうけど、いつまでもこれでは「自分で考える力」が身につかない。そして、いつまでも「会社や上司に、善い行いを期待する人」になってしまう。これこそ、責任意識がない人ではないでしょうか。

 

※この記事の書き手はJoyBizコンサルティング(株) 波多江嘉之です