• 責任意識を高める組織開発~(OD)の実践って、どうするの?㉗~

責任意識を高める組織開発~(OD)の実践って、どうするの?㉗~

~責任意識とは何に対してなのか~

責任意識を高める、と書き出して、自分でもこれはとても重い課題だと感じます。社長クラスの人たちでも「責任意識が希薄な人たち」もいますからね。

前にも書きましたが「牛肉偽装事件」。これで名門会社が吹っ飛びましたから。儲かればいい、会社が危機的だからごまかそう、というのは何についての責任意識だったのでしょうか。要するにこの事件は「詐欺事件」です。ここには倫理や道徳的視点、あるいは私たちが「なぜ生かされているのか」という視点は全くと言って良いほど入っていません。あるのは、儲けだけです。

何故今回のODメディアで責任意識というタイトルで書いているかというと、組織開発(OD)の実践には、中核的な柱として「責任意識の開発」が欠かせないからです。やれ、診断型組織開発だ、そうじゃない今は対話型組織開発だといっても、組織を運営していくにあたり「私たちは何に対して責任を持たなくてはならないのか」が欠落していれば、組織活性化もへったくれもないからです。

最近Facebookのマーク・ザッカーバーグに対する新聞記事で、もともと彼は広告収入に対する意欲は少なかったとありました。それが、今のようなビジネスモデルの構築に至ったのはある女性との出合があったからだそうです。その女性とはシェリル・サンドバークです。以降のFacebookの成長は皆さんご存知の通りです。そして情報流出という問題を起こし、今は変革の岐路に立たされています。ザッカーバーグとシェリルを引き合わせた人は、ロジャー・マクナミー(投資家、Facebookの可能性を見出し投資した)です。そして彼は今Facebookの批判者になっています。 出典:2019年5月8日 日経産業新聞

記事を全面的に鵜呑みにすることはできないかもしれませんが、ロジャー・マクナミーがFacebookならず他の巨大IT企業による個人情報の収集とそれによるビジネスを展開することに大きな懸念を抱いているのは様々な記事で見ることができます。

責任意識とは何か、シェリルの立場でいえば全然儲かっていなかったFacebookを儲かる会社にして株主の期待に応えることが彼女の責任意識でしょう。それに対しては誠に見事な結果を出しているのです。半面、社会的な意味での責任はどうでしょう。

Facebook創業当時でみれば、個人情報収集とそれを活用した広告ビジネスモデルが現在のような問題を引き起こすことは予想できなかったというのは、至極納得のいく見方です。誰も神様ではありませんから未来の出来事をすべて見通すことはできません。とはいえ、ビジネスの状況はそのようなことまで含めて視野に入れなくてはならない段階にきているのは間違いがないところです。

SDGs(持続可能な開発目標)が言わんとしているのもそういったことなんでしょうね。いまや、組織開発(OD)はそのような視点で計画し実施していくことが求められているのではないでしょうか。

~方法ではなく本質に迫れ~

で、チームや職場という日常的な仕事の場の話ですが、このような場で実践される組織開発(OD)が、単に個人の能力開発では解決できない課題のための解決手段として理解されると期待する成果が出ないし、やっぱり役に立たない方法だとなっていつの間にか消えてしまい、企業の担当者はまた新しい解決方法を探し回るという「愚」を起こしかねません。

職場メンバーの仕事に対する責任意識が不十分あるいは違った方向に向いている場合は、そこから修正していく必要があります。また、責任意識が強くてもメンバー間でそれがかみ合っていない場合は、そこをかみ合わせるという事からスタートしなくてはなりません。つまり、働くことや仕事とは何か、我々は何を目指しているのかという、人々の中にある価値観の問題から掘り返していかなくてはならないでしょう。

ということは、結局は「問題の認識/定義」や「組織開発(OD)の問い」をどのように設定するかがものすごく大事なのです。組織開発(OD)は個人の能力開発とは違う手法であるという理解だけでは不十分なのです。

 

「組織開発やりましょう。そうですね、やっぱり必要ですよ。それも対話型ですよね、いまは。」なんてノリでやってもうまくいかないでしょう。このテーマ、引き続き考えていきたいと思います。