• 組織が持続的に成長するために欠かせない能力:チームの活用~組織開発(OD)の実践って、どうするの?⑳~

組織が持続的に成長するために欠かせない能力:チームの活用~組織開発(OD)の実践って、どうするの?⑳~

~組織開発は小さく始めて大きく育てる~

組織開発はイベント的にぶち上げて実施するのかというと、実はそんなことはありません。むしろ、そういったイベント的ODはやらない方がいいといえます。やる必要があるといえば、それは「短期プロジェクト的な組織変革」ですね。1990年代後半の日産自動車とか、その後の日本航空だとか、変わらないとどうしようもないという組織の場合は「イベントOD≒組織改革」を実施するしかないでしょう。

要するにイベント的ODは、瀕死の重傷期にある組織に対して実施するものであり、その実施はリストラなどを伴う「血が出る変革」です。

そのようなODではないにしても、全社的なODを実際にやっていくとなると、理想はトップマネジメントがそれを奨励し組織のビジョンを実現すべく全社員参画のもとに何らかの変革を実践していくという事になりますが、それはちょっと大袈裟だと考えてしまうのも当然です。また、組織が大々的に従来路線を変更することはそんなに頻繁にあることではありません。ですから、組織の開発といっても「全社一斉に」というのはめったにあるものではないのです。大切なことは、組織が持続的に成長する能力を開発することです。

では、その核となる単位は何か? それがチームです。組織開発の実践はチーム単位での実践がお勧めなのです。

チームは個人と組織をつなぐ重要な単位です。

 

 

どの様な組織も「組織が学習する」という事はありません。学習するのは「個人」です。そして個人の学習は、チームの人間関係が良好だと個人の学習を共有してチームが成長します。その逆もまたあります。チームの中に「学習という規範」ができれば、個人はチームの中の人間関係にとても影響を受ける存在ですから、チームの他のメンバーと共に学ぼうとしていきます。

個人がチームメンバーと同じような行動を取らない場合はどうなるか?

それは、そのチームからはじき出されるか、そのチームに馴染めずいつまでもよそ者扱いされるかのどちらかです。強烈な個人の場合は、そのチームが持っていた従来の規範を変えようとしますが、やり方を間違うとえらい目にあいます。それは、リーダーとて同じです。

このように「個人」と「チーム」は相互依存関係の中で成長していきます。要は、持ちつ持たれつな関係ですね。

ということで、組織に何らかの変化をもたらそうとすれば、まずは「face to face」で仕事をやっているチームに何らかの変化をもたらし、そこのやり方を組織が制度的に吸い上げて定着させていくという方法が現実的でもあるのです。

組織開発は何も「大変だ~~!」というときにやるのではなく、組織の持続的成長や学習力を高めるために実施するのが良いのです。そういった意味で、チームは組織開発の実践単位としてはとても重要なのです。

~組織開発は現場主義で進める:チーム単位で実践する意味とは~

チームは、経営チーム・プロジェクトチーム・職場単位の恒常的チーム、また営業・生産・開発・間接部門などその機能や役割・活動の仕方もいろいろと異なります。つまり、チームと言っても性格が異なるわけです。

従ってチーム単位の特性や現状に応じて組織開発のアプローチは、当然、異なります。組織開発(OD)には一連の価値観や概念モデル、さまざまな介入技法がありますが、これをどこかの部署がコントロールして実施するとうまくいきません。これはODメディアの中で既にお伝えしている通りで、「リーダー(トップマネジメント)が何を変えるかを決め、スタッフが変革のプロセスを管理する」場合、ほぼすべてが失敗しているという調査データがそれを証明しています。(抵抗問題が起きるため。詳細はこちらから)

大切なことは、職場単位でその当事者が自分たち自身で、人間的側面をしっかり理解した問題解決スキルを身につけ実践することです。もちろん、組織開発が標榜する価値観、例えば「人間尊重、民主的価値観(参画重視)、当事者中心(当事者のオーナーシップ)、エコロジカル的システム志向性(自社だけが良くなるのではなく社会や環境レベルを考慮する)」は共通のものとしておくことが求められます。でも、実践方法はそれぞれです。

「価値観や考え方は統一し、実践は個別で」というのが組織開発(OD)の成功に欠かせません。これが現場主義という意味です。価値観や考え方まで現場主義では、個別最適を求める活動になってしまい組織開発(OD)にはなりません。

 

このように職場やチーム単位でスタートし、それを組織全体で共有していく。このプロセスを確立する重要性と方法がP.センゲが主張した「学習する組織」です。当時は、「最強組織の法則:新時代のチームワークとは何か」という邦題で出版されましたが、実践方法のイメージとしては「学習する組織」よりピッタリくるのではないかと思っています。