プレゼンスを高めるためには?① ~座右の銘はあるか? 前編~

川野先生のインタビュー記事第4弾です。今回は「プレゼンス(=存在感)」についてお話を伺いました。ビジネスをリードしていく方々にとっては影響力や存在感は不可欠の要素ですが、目に見えないためどうしたら高められるのかよくわからない存在でもあります。そこで今回は様々な観点から先生にお話をいただきました。(いろんなお話を経由しておりますが、ご容赦ください。話のメインテーマで分けて配信いたします。)

(聞き手はJoyBiz竹本です)

※この記事は4部構成です。それぞれの記事は下記よりご覧ください。

プレゼンスを高めるためには?① ~座右の銘はあるか? 前編~

プレゼンスを高めるためには?② ~座右の銘はあるか? 後編~

プレゼンスを高めるためには?③ ~信念の形成とメタ認識~ (1月21日配信予定)

プレゼンスを高めるには?④ ~壁を越えて成長するには~ (1月28日配信予定)

座右の銘 ~一所懸命と自己肯定感~

竹本:

何かを推進する、成し遂げる、達成するなどの場面では必ずリーダーのプレゼンスが発揮されていると思います。要は存在感ですよね。逆に肩書はリーダーでもプレゼンスが発揮できない人も残念ながらいらっしゃると思います。我々のような組織支援型のコンサルテーションだとプレゼンスを高めていくことを支援したり、現状を理解したりすることがキーになったりします。目に見えないのでなかなか難しいプレゼンスという概念を今回考察したいと思うのですが、いかがでしょうか。

川野先生:

なるほど。大切なお話ですね。いろいろな要素はあると思うのですが、座右の銘を持つことが大切なのではないかなと感じます。自分の信念を言語化したものとでも言いますか。ちなみに私であれば「日々是好日」(※禅語の一つ。)ですね。

この精神は常に自覚的に大事にして生きています。要するにその日を生ききったのかどうかということです。11日が良かった悪かったという評価をするのではなく、自分なりに一日やりきったと思えるかどうかが大切だということです。

11日が良いか悪いかはもちろん重要なことではあるし、悪い日ももちろんあるのかもしれません。また改善点もあるかもしれませんが、それでも自分なりにやり切ったと思えるかどうかが大切なのです。

何かの仕事全体を通してでも、プレゼンテーションの準備や著作を一冊書くこともお葬式をお勤めさせていただくことでもそうだと思います。自分で選択し、(自己)裁量をもって、何かができたという実感が、結果が良くても悪くても自分を支える糧となるんですね。

それがまさに禅の精神でいうところの一所懸命にあたります。それで何が得られるかはその瞬間理解することは難しいのですが、終わった後に精一杯そのことに注力したんだ、という実感が残ります。

気もそぞろにやったとかほかに気を取られながらやったとして結果、自分の本領を発揮できなかったという言い訳をする人が実は非常に多いんですね。これは私自身に対しての注意喚起でもあります。注力もしていないのに本気じゃなかった、というのは矛盾しているようにも聞こえますが、無意識にそんな説明を周りに対してだけでなく、自分自身に対してもしてしまっていたりします(苦笑)。

ネガティブな結果に対しても建設的に見れるようになるということが非常に大切だと思います。負の結果に対してどうとらえるかということを考えるとどうしても自責的になっていきます。そうすると、ここが悪かったという具体的な「要素」の振り返りではなく、「自分ができない、自分が悪かった」と、自分の存在という「全体」に対してネガティブな見方になっていってしまうのです。要するに自己肯定感が徐々に下がってしまうということですね。

そういう意味ではプレゼンス(存在感)を示していくためには、座右の銘や禅語のような人に話して恥ずかしくないものを持っているかどうかは大切だと感じますね。

プレゼンスの発揮とセルフブランディング

竹本:

今のお話を聞いていて、多くの人は座右の銘とまでいかなくても、なんかもやっとしたものは持っているような気がします。ただ明確に言語化し、「これだ!」と思えるものがあるかないかというのは非常に大きな分かれ目な気がしますね。

川野先生:

湘南美容外科クリニックをご存知ですか?数年前に各クリニックの院長がCMで「好きな言葉は○○です」と、それぞれの座右の銘を言うのがありました。全国経営をしている大規模クリニックですから、院長は理事長(医療法人の代表)に雇用されている方ですね。

少し平たく言えば、各クリニックの院長の仕事は同じようなものにならざるをなかったのではないかと想像します。もちろん手術のテクニックや薬の効用、医療保険制度を理解していないとできませんが。

ただ個性を出しにくい仕事であり、まさに生きがいにつながりづらかったのではないでしょうか。生きがいにつながりづらい仕事を忙しくやっているとある程度の収入があっても燃え尽きてしまう人が少なくありません。

そうした事態にさせないために自分自身の信念を言語化した座右の銘を宣言しているのではないかと感じました。もちろん、表向きには好感度アップを狙ったCMと捉えるのが妥当なところでしょうが、それだけでなく各院長に自らの信念を公表してもらうことで、院長としての責任と自覚を持ってほしい、という代表の意図を垣間見ることができると私は感じたのです。

全国ネットで宣言すれば当然逃げられなくなります。その信念のもとで生きていくというものを作らなければ、あのようなCMはできないと思いますね。 

とてもいいやり方だと思いました。周囲の人からも「好きな言葉は●●」って言っていた方ですよね、と言われますからね。ある意味、●●の座右の銘を言った人というブランディングになっていく気もします。

ある意味開業医ではなく、彼らのようないわゆる「雇われ院長」はオリジナリティやアイデンティティを発揮しにくい存在というケースが多いのですが、この場合は、「雇われ院長」ではなく、「●●の座右の銘を持っている私」という風に自分も周囲も認識が変わっていくのではないかと思います。

このような形で自分自身の存在について考え、生き方の方向性についてある程度の指針を持っているということは非常に大切なのではないでしょうか。最近「誰に影響を受けたか」という話になると答えられない人が多いですね。影響を受けた人というのは、生き方の指針を与えてくれたと感じている人のことです。そういう人の顔が脳裏によみがえってこないということは、人生の方向性を見失ったまま漫然と毎日を過ごしている、いわば「自動操縦」されているような生き方をしている人が多いということです。

また「誰に影響を受けた」と堂々といえる人は、変な偏った虚栄心をはじめから投げ捨てているんですよね。そうすることで心は健全に成長していくイメージです。しかしモラトリアム的な人、つまり社会的責任を負う覚悟が十分に持てないまま、立場だけ社会人で過ごしているような人の場合、変に意固地になって虚栄心を保とうと必死です。誰かに対する恩義を心の片隅で感じてはいても、それを堂々と認めて人に打ち明けることができないのです。その結果として、「自分は誰にも影響を受けていない」「俺は俺ブランドだ」といったことを言うのです。

本当はだれからも影響を受けないなどありえないことですよね。しかし本人はそれがわからないんです。自分自身の心の軸というものがないので、誰に影響を受けたということに対しても自覚的でないため、明確に表現できないのです。

竹本:

今日ここ(林香寺)に来るときに、たまたま見ていた記事があります。澤円さんという方の記事です。それがちょうどセルフプロデュースについての記事でして、簡単に言うと、自分にどういったタグが付いているかが非常に重要という話題でした。(澤さんご自身はもともと技術の分野でお仕事をされていたようで現在は超一流のプレゼンテーターとしても多方面でご活躍中の方です。)

ご本人がおっしゃるには、技術力が特別に突出していたわけではないが、ニッチな領域のコンサルティングを生業にしていたそうです。そしてニッチであったがゆえに澤さんしかできる人がいなかったようです。それらの仕事をやって実績を積んでいくとどこかで臨界点がくるそうです。

そしてそのコンサルの仕事だけではなく、それにまつわる周辺領域の依頼が増えてきて講演の仕事なども増えてきたとのことです。そうなると次は見た目のインパクトなども出していこうということで見た目のタグもつく、こうして自分自身にどんなタグがついているか、どんなタグをつけていくべきかということを考えるのが重要だということを言っていました。先ほど自分自身からも他人からも自分をどう認識し、されているのかという観点では関連ある話だなと思いましたね。

川野先生:

まさに大切なことを教えてくれていると思います。セルフプロデュースというのは簡単なことではないと思います。またプロデュースには今はない新しい自分を「作る」という響きがありますが、本当に大切なのは、いま与えられているもの、要は自分自身の真なる姿をいかにして捉えなおしていくかということだと思います。

だからこそ、今のこの世の中で自分に与えられていることを正面から受け止めて、そこに没入できるかが大切だと思いますね。今はない新しい自分をどう作るかで悩んでいるよりも、ずっと建設的な考え方ではないでしょうか。

ブランディングという言葉にはそうした響きはありますが、今やっていることの中で、ある程度極めていくと連鎖的に守備範囲が広がっていくという現象が起きます。いろんな依頼を受ける中でこうしたこともやってみませんか、という話があって、それに一生懸命取り組むことで成長していく、守備範囲が広がっていくという自己発展の公式は多くの場合に当てはまると思うのです。

 

※この記事は4部構成です。それぞれの記事は下記よりご覧ください。 

プレゼンスを高めるためには?① ~座右の銘はあるか? 前編~

プレゼンスを高めるためには?② ~座右の銘はあるか? 後編~

プレゼンスを高めるためには?③ ~信念の形成とメタ認識~ (1月21日配信予定)

プレゼンスを高めるには?④ ~壁を越えて成長するには~ (1月28日配信予定)