真のリーダーはプロセスを観る

変化の激しい時代において、将来を創っていくリーダーが求められています。新人から経営者に至るまで、各立場、各現場でそれぞれのリーダーシップを啓発していかなくてはならないと同時に、グローバル社会においてはより強いリーダーシップが必須です。今、日本全体でより磨き上げる必要のある能力と言うことができるでしょう。
皆さんはリーダーシップという言葉にどんなイメージを持たれますでしょうか。また、リーダーシップがある人はどのような人を思い浮かべますでしょうか。職場で自分はリーダーシップを発揮できていますでしょうか。今回はリーダーシップを高めるための必須ポイントをご紹介していきたいと思います。

今日的リーダーシップとは

冒頭でお伝えしたとおり、リーダーシップは様々な場面や状況でそれぞれ発揮をしていかねばなりません。皆様の職場においてもリーダーシップを高めていきたいとお考えの方も多いと思います。そもそもこのリーダーシップとは何のことなのでしょうか。実は今日的なリーダーシップは次のような定義をされています。
♦与えられた状況のもとで特定目標や課題の達成にむかって人間(個人または集団)の活動に対して影響を与える力の行使のプロセスである。

■与えられた状況のもとで≠状況優先、スタイルやべき論優先ではない
一般的にではありますが、リーダーシップを発揮する職場が、若手(社会人1年目、2年目)ばかりの職場の場合、あまりコントロールをしないやり方は適切ではありません。逆に、職場が成熟しているしているときに、あまりリーダーが仕事の管理をしすぎても、フォロワーにとってみればやりにくさを感じることでしょう。仮にリーダーであるあなたが人に任せて良い意味で放任主義のスタイルが好きで得意だとしても、若手のチームをリードしていく場合は、その状況を優先させて管理型のリーダーシップを執る必要があります。しっかりと“状況に適している”ことが大切なのです。

■特定目標や課題の達成にむかって⇒ビジョン、ゴール、目的の設定
リーダーシップを発揮してリードしていくには、当然向かう先を設定する必要があります。自分たちは何を目指しているのか、さらにそれを全員に共通理解されているかが大切です。営業部隊において今月は新規の開拓〇〇件を目指す!とリーダーが発言していても、フォロワーの活動がなぜか既存ばかり回っていることがあるとよくお聞きします。フォロワーの方々は「売り上げを上げればいいんでしょ」と考えていて、この先の業績を見据えて新規開拓の目標を掲げても、共通に理解がされていないようなケースはリーダーシップが執れていないということです。

■人間の活動に対して影響を与える力の行使のプロセスである
対人間の社会的能力の行使の過程であるということ、つまり、人と人とが関係する中で発揮されている過程(プロセス)であるということです。平たく言えば人に影響を与えている状況そのものです。
ここで強調しておきたいのは2点です。
① 社会的能力である
② プロセスである
つまり複雑な人間関係の中で生じるものなので、コンピテンスの開発が必要です。また、プロセス=過程でありますので、それら動的なものを見る目を鍛える必要があるのです。

社会的能力の要素

リーダーシップを啓発していくには、この“プロセス”という概念が非常に大切です。皆さんが思い描くリーダーシップを執れる方はどのような強みがありますでしょうか。この人についていきたい!と思える人は、おそらくあなたの感情の浮き沈みも理解してもらえながら、気持ち良く従おう!と思える指示の出し方をして、目指す方向性を指し示してくれる方ではないでしょうか。いわゆる支援的リーダーシップも、気持ちよく働けるよう、状況に適した指示や援助ができることではないでしょうか。
いずれのリーダーシップにおいても共通するのは、対人関係の社会的能力とされる①感受性②柔軟性③快適性の3つが備わっています。状況を適切に把握し、職場の問題に対して敏感で、人の気持ちを察することができるようなアンテナを高く張っていることが求められます。そしてキャッチしたことに対し、柔軟に自分の言動をコントロールすることができて、フォロワーも含めて心地よい関係性をつくっていくことがリーダーシップには求められます。
さて、ここで言及していきたいのは①感受性の要素です。ここで状況や問題を履き違えて把握してしまうと、その後の打ち手が間違った方向に流れてしまいますし、高い社会的能力を発揮するリーダーシップを高めていくにはこの感受性を啓発していくことが重要なのです。そして、この感受性とは“プロセス”を観ることが非常に重要なのです。

プロセスを観る

この大切と述べたプロセスという概念は詰まるところ、何を意味しているのでしょうか。あえて言葉で表すとなると、「何かをやっているグループで起こっていることすべて」「何かをやっているグループがどのような状況でやっているか」ということになります。
コンテント(内容)と対比して使用される概念でコンテント(討議テーマや仕事内容について)の質を高めるために必要になるものがプロセスの定義となります。会議で誰も発言しない、皆下を向いていて、活気がないまま進められて、結局議題内容も次回に持ち越し、などはプロセスが良くない経験として、誰にでもあるのではないでしょうか。

とある酒卸しの会社で、拠点メンバーが6名のある営業拠点にお伺いしたことがありました。自エリアでいかに帳合(自社から飲食店に対して卸している割合)を高めていくか、をテーマに話し合いをされていて、なんとも議論に活気がありませんでした。そこの拠点の業績は確かに良いとは言えないですが、出てくる発言はネガティブなものばかりでした。皆売り上げのデータが書かれているたった1枚の紙をデスクにおいて、そればかり見ているのです。誰かが発言をしても、その人の顔も見ないありさまです。そして各々のデスクに座りながらミーティングをしていて、結局1時間程経って決まったことは、「アルバイトの教育をしていく」でした。(酒を飲食店や小売店に卸す際に、配送係であるアルバイトの人たちの対応で、お客様から会社の見られ方が変わるため)1か月経って再度お伺いすると、その教育はほとんど何も行われていませんでした。ある方に聞いてみると、「教育といっても具体的に何をすればよいかわからなかった」と答えるのです。
一方、別の会社で介護用品の販売ならびにレンタルをする会社で、同じく6名の拠点にお邪魔したことがあります。所長を中心に営業メンバー5人でミーティングをしていると、ほんの20分程であれこれと決定していきます。営業拠点ではありますが店舗として商品の販売もしているのでお客様が来店したとき見やすいように、レイアウトを変える、店舗の前に花壇を設ける、営業に行ってきたあとの報連相の仕方が決定しました。1か月後にお伺いすると店の雰囲気が変わり、花壇には色とりどりの花が並んでいて、スタッフ同士の会話も増えていました。彼らが実施していたミーティングは各々のデスクではなく、一つの机を挟んで6人が密集して行われていました。下を向く人はいません。次から次へと発言が飛び交うのです。
両者の違いで重要な違いというのは、ミーティングを実施する際のプロセスなのです。活気があるミーティングができるかどうか、それらは互いの距離や、顔の向き、発言回数、様々な要素によって活気が生み出されていきます。そして、活気ある(プロセスが良い)ミーティングで話し合われたことについては、質の高い(実行される)結論が生み出されるやるくなるのです。
ミーティングは一つの机を囲んで密集性を高めて実施すること。これは一つのプロセスを変えるためのテクニックとして有効です。しかし、あくまでテクニックの一つです。重要なのは、リーダーには、今、皆が“ノッテる”かどうか、どのようにして活気を創れるのか、それぞれの表情や、人間関係の状況=プロセスを見ながら手を打っていく必要があるということです。

リーダーシップを高めていくためのポイントを今回はご紹介させていただきました。リーダーシップを発揮するには、正解はなく、状況によって柔軟に対応していかねばなりません。そもそもその状況を適切に把握するためには、プロセスを観ることなしには成り立ちませんので、リーダーシップ啓発のために、「プロセス」を観る目を養うことは必須であると言えるでしょう。

 

ちなみに、上記のようなプロセスを観るとは何を見ればプロセスを観ることにつながるのか。これは経験が必要というのは言うまでもありませんが、プロセスを扱いながらその他の要素も入れながら効果的にリーダーシップの啓発をすることができる講座がELDなのです!