なぜ、今「リベラルアーツ」なのか?

最近リベラルアーツがエグゼクティブには必要というお声が多くなってきました。私自身も大学時代に入った学部が「リベラルアーツ」を育てる、ということを目指していたこともあり、この流れには共感するところも多いです。

一方で、「リベラルアーツ 研修」などのキーワードで検索すると、その中身はとても多様です。過去の哲学や偉人を紹介することをリベラルアーツと言っていたり、視野を広げる、というコンセプトをリベラルアーツと言っていたりします。よく言えば多様ですが、もっと突っ込んで言うと「要は何なの?」という気持ちになります。

私と同じ疑問を持つ人も多いのでは?と思い、今回は、リベラルアーツがなぜ重要なのか、その(ビジネスにおける)効能はどんなところにあるのか、といった点に絞って考えてみました。

そもそもリベラルアーツとは?

リベラルアーツとは、リベラル=自由、アーツ=技術で言葉の意味をつかむならば「自由の技術」といったニュアンスが読み取れます。なぜ「自由の技術」なのかは、後ほど説明しますが、リベラルアーツが選択肢を増やしてくれるからでしょう。

アーツはアートの複数形ですがアートの元々の意味は「芸術」ではなく、「人工的・人為的なもの」に関する研究や考察という意味です。そこから技術、という言葉が出てきます。ちなみに対義語はサイエンスで「自然」に対する研究や考察といいます。

このような意味でのアートの代表格は、哲学です。哲学というと難しいようですが、要は「みんなが悩むことをとことん考えた」ものです。人生について人が共通で悩むことについて先人たちも悩み、とことん考えていって、その次の人がその考えのバトンを引き継いでいって、となっているのが哲学といっていいでしょう。共通の悩みとはたとえば、愛について、対人関係について、人生の意味について、幸福について、人の思考について、人のあるべき姿についてなどなどです。(本屋さんに行くと、どれも現在のビジネス書のタイトルになりそうなくらい今でも通用するテーマです。)

リベラルアーツの効能① 決断力の強化

先ほどもリベラルアーツを「自由の技術」と言いましたが、要は、リベラルアーツは選択肢を増やしてくれるのです。経営において決断力は非常に重要ですが、多くの場合に決断は迷いやジレンマを生み出します。経営を取り巻く環境は複雑だからです。その中において、より重要だと思える要素をいち早く見抜く必要があります。リベラルアーツがなければ自分の頭とこれまでの経験で考えるしかなかった問題でも、それがあることによって問題が立体的に見えるようになります。なぜなら先人たちが悩みに悩みぬき、考えた結論がそこに詰まっているからです。つまり何を選び取るか、という選択肢が増えてくるのです。

経営での意思決定はほとんどの場合時間は限られています。ゆっくりと思索に耽る時間は経営者にはないでしょう。そのため先人たちの知恵をエッセンスとして習得し、「こうした考えもあるよね」と、物事の捉え方を柔軟しておくことによってより良い意思決定・決断が可能となります。

リベラルアーツの効能②リーダーシップの強化

ビジネスリーダーは日々いろんな矛盾と向き合います。いくら自分が意志を持っていてもリーダーの周囲にはいろんな状況が起こり、いろんな人々がいるからです。時に状況や周囲の人と折り合いがつかない時もあります。リベラルアーツはその矛盾を解消する手がかりをくれる存在でもあります。ここでも自分の意志だけではなく多面的な見方を提供してくれるからです。

自分自身が自分の考えを矛盾なく自然体で捉えられている状態が最もパワーが出るものですが、しかし必ず矛盾は出てきます(自分にとってお金が大事なのか?家族が大事なのか?そもそもなぜ自分はこれをやっているのか?自分はこのあり方でいいのだろうか?など)

その矛盾を解消していくためのヒントを得ることができるのがリベラルアーツの2つ目の効能です。つまり自分の人生観や経営哲学を自分自身で哲学化していくことができます。

その結果として、しっかりと人がついてくるリーダーとなりえます。自分自身の利己的な欲求では当然人はついてこないのですが、物事を多面的に理解し、自分自身の思いも周囲との関係もどちらも大切に矛盾なく受け止められることで、自分も相手も利する行動が可能になります(自利利他)。要するに人と協力していく「器」や「ふろしき」が広がっていきます。

リベラルアーツの効能③自分自身の軸を作る

リベラルアーツの効能として、決断力とリーダーシップを挙げましたが、そのどちらも自分自身を内省することがとても重要になります。自分自身の意志を内省する時に、必ず必要になるのが「軸」です。軸がなければ、自分自身の意志や行動をどのように変えていくかの指針が失われます。その軸を作り、自分自身の意志を磨いていくことができるのが、実はリベラルアーツの最大の効能です。

以上見てきたように、リベラルアーツは自分自身の意志を定め、仲間を巻き込み意思決定を進めていく上で非常に有用なテーマだと言えます。これまではすぐに使える経営理論やフレームワーク、業績に直接的な影響のある財務のフレームワークなどがビジネスリーダーが知るべきことと言われていました。しかしそれだけで自分の軸はできません。だからこそ流行ってきたのだし、こういった教育はビジネスの現場で今後もますます求められてくると感じています。

もしも皆様がそうしたビジネスリーダーを育成するお立場であればどのように働きかけていかれますか?そうしたことで足が止まりましたら是非お気軽にお声がけください。

※3月10日開催予定の「モメンタムセミナー」はリベラルアーツの観点からも非常に参考になります。ご関心がありましたら是非そちらもご覧ください。