組織が開発されるたった2つのメカニズム

組織開発は最近の企業経営にとって非常に重要なテーマですが、一方で、「要は何なの?」というのが大方の感想としても多いのが実情です。今回は、各種の研究や弊社の実践事例を元に、あえてビジネスとは異なるケースをイメージしながら、大胆に2つのポイントに絞ってそのメカニズムを切り取って単純化してみようと思います。

※あるケースを元に説明するため結論は最後に回しました。結論だけ知りたい方は下までスクロールしてください。

スキャンダルを起こした芸能人のケース

人気ミュージシャン(以下Aさん)が最近話題の不倫でスキャンダルを起こし、ほとぼりが冷めつつあるタイミングでメディアに出演した時の話です。その時にその人が話したエピソードが以下のようなことです。

<エピソード>

あるインタビュアー(Bさん)と話していたときに、自分が作っていた歌について歌詞の意味を聞かれました。この歌詞は(不倫の現場での)~~という意味が込められていますよね?という聞かれ方でした。そうした意図はないため、「違いますよ」と応えたら、Bさんは「そんな筈はない。こういった意味で作った筈だ」と再度ご自身の質問に立ち返っていきました。それが誘導されているように感じてしまったのです。「作ったのは自分なのにな」と思いました。何度か説明をしても、つまりこういう意味ですね?とBさんが事前に作っていたストーリーに誘導尋問してくるように感じたので困惑してしまいました。

インタビュアーの行動

さて、ここで焦点を当てたいのは、Bさんの行動です。なぜBさんは、誘導尋問的な問いかけをし続けてしまったのでしょうか?(大前提としてはスキャンダルはAさん本人の責任です。しかし上記のエピソードのAさんの言い分はもっともなことのように感じられますのであえてケースとして取り上げています。)

それは、そのインタビュアーがAさんの話の意味を言葉として「理解」できなかったのではなく、Bさんがもともと持っていた目的(意思)としてAさんの話とスキャンダルが繋がるような意味として理解「したかった」からだと想像できます。つまり知的な理解力ではなく、目的・意思の問題です。相手がいくら真摯に言葉を伝えても、自分が思い描いた通りに理解しようとする傾向はいくら知的な理解力を高めても歯止めが効きません。

目的・意思の歪みがマネジメントに悪影響を及ぼす

目的・意思がゆがんでいる場合は、マネジメントで悪影響を及ぼすことがあります。

ゆがみを内省しないまま、マネジメントの立場という理由で、パワーを発揮し続けているとどうなるでしょうか?歪みが修正できないまま、無意識のうち部下に「誘導尋問」を繰り返します。部下は「そうじゃないのに・・・」「そういう意味で言ったのではないのに」と精神的ストレスが蓄積されていくことになります。そうしたケースは、多くの場合マイナスのスパライラルに陥ります。「そうじゃないのに・・・」と上司の言葉を消化しきれない部下が起こす行動を見て、「やっぱり彼はわかっていない、なぜわからないんだ」と憤る上司の心情は、基本的に誰かが橋渡しをしてあげなければ変わりようがないからです。

残念ながら、ひどい場合には、自分が無意識に持っている意思や目的を全く振り返ることもせず、「自分が正しい」と思い込んでしまう人もいます。そうした人が上司である場合は、部下は不幸です。そこに陥ってしまった組織の生産性はなかなか上がらず、外から見ても、自分たちの自己認知も「うちの組織は活性化してないよね」となります。

組織を開発する2つのメカニズム

いよいよ本題に戻ります。上記の状態に陥った組織はどうしたら組織開発できるでしょうか?実は2つだけです。一つ目の処方箋は、「チームメンバー同士の関係改善」です。そしてそれを生み出すのが、二つ目の処方箋である「リーダーのインフルエンス改善」です。

そして最も重要なことですが、リーダーのインフルエンス改善は、リーダーが自分の意思や目的を問い直す(歪みを修正する)ことでしか実現できません。

つまり組織開発を実行しようと思うと最大のボトルネックとしての「リーダーの意識改革(=意思・目的の改革)」を行うことになります。そしてそれを視野に入れつつチームメンバーのグループ・ダイナミクス(組織開発って何?参照)に目を向けて、その相互作用の仕方を変えていく、というのが組織が開発されていくメカニズムなのです。

もうおわかりかと思いますが、リーダーの意思や目的に歪みがあり、その思い込みが強ければ強いほど、組織開発の困難さも上がっていきます。組織開発で最も難しいのは、当事者に歪みの自覚がないケースです。

こう考えるとメカニズムはシンプルですが、準備態勢をしっかりとつくらないと組織開発はうまくいかないという事実がイメージできたのではないでしょうか。

組織開発には戦略が必要です。組織開発を展開するためのロードマップを一度描いてみると良いと思います。もしロードマップを描く手が止まってしまうようでしたらお気軽にお声がけください。