武器としてのこころリテラシー【9】~LIFTモデルの根幹である意を「調整」する(後半)~

~意の働き~

さて、前回は「意」にまつわる誤解を紐解きながら「意」というものに対する理解を深めてきました。

▼前回はこちら▼

武器としてのこころリテラシー【8】~LIFTモデルの根幹である意を「調整」する(前半)~

 

こころリテラシーを高めることの出発点が自分自身のこころの状態を理解することだとすると、そのこころが向かおうとしている先(方向性)がこころの状態を理解する出発点だといっていいでしょう。だからこそ意に自覚的になり、それを自分自身でうまく扱うことがとても大切になるのです。

端的に言えば、意はその人独自のものの見方・考え方の傾向(メンタルモデル)です。現在ではその人固有(属人生の高い)の傾向や偏りを織りなすメンタルモデルは多くの場合無自覚に発動することからアンコンシャスバイアスとも称されダイバーシティ&インクルージョンを標榜するビジネスの中でもホットイシューになってきました。

 

ここで意の働きをつかみやすい考え方としてポジティブ心理学の領域を開拓したマーティン・セリグマン教授の研究で「学習性無能力感」という概念をご紹介したいと思います。この詳細は別の機会に触れられればと思いますが、ざっくりいうと「長期にわたってストレスの回避困難な環境に置かれた人や動物は、その状況から逃れようとする努力すら行わなくなるという現象」のことを言います。「無能力であるということを学習する」ということです。

これを表す事例に「カマス理論」があります。

 

【カマス理論】

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水槽にカマスを入れ、その中にエサとなる小魚を放り込むと、鋭い歯で襲いかかります。次にその水槽に透明の間仕切りを設けます。するとカマスは、エサを食べようとしても、間仕切りに体当たりを繰り返すのみで小魚を食べることができません。そしてずっとその状態がつづきます。終いにはカマスは諦めて、障害物だった間仕切りをはずしても小魚を襲わなくなるというお話です。

 

このカマスはエサを獲得する「身体的な能力」自体は何も問題はありませんが、自分は「無能力である」という意を学習してしまったわけです。この話には続きがあります。上のカマスが入っている水槽に、間仕切りのない状態でもう一匹別のカマスを入れたのです。もちろん後から入ったカマスは間仕切りもなくエサがすぐそこにある状態なので、猛然と小魚に襲い掛かりました。するとどうなったでしょうか。それを見た最初のカマスはまるで目が覚めるようにまた小魚に襲い掛かっていったというのです。

 

学習した無能力という意が別のカマスの動きを見て新たな意に書き換えられ、またエサを獲得するという行動に出たという事例です。

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この学習性無能力感という考え方は意が自分の思考や感情、行動に大きな影響を与えているということを教えてくれています。そしてこのことからもわかるように私たちは自分のこころを活性させていこうと思ったときに出発点である自分の意と真摯に向き合っていく必要があります。

仮に私たちが一匹目のようなカマスが持っている無能力という意をもっていた場合、まずそれに気づかないと健全で活性化したこころのあり方を作っていくことができないからです(ちなみに私たちが働いている組織の中では見えない間仕切りが至る所にあります。それによって自分たちの仕事の活力ひいては組織力がすりへっているという事実はもっと多くの組織が本気で取り組むべき課題だと考えます)。

 

ではどのように意と真摯に向き合い、こころリテラシーを高めていけばいいのか。

意に真摯に向き合うとは分解すると三つのことをやっています。

 

一つ目は、無自覚に持っている自分自身の意に気づくことです。意といっても本当に様々な場面で様々な信念・解釈システムが作動しますし、その総体が意なので、一発で自分の意に気づくという万能薬などは当然ながらありませんが、様々な場面で自分の無自覚な意に気づくことを習慣にしていくことは可能です。

 

二つ目は、自らの経験や感覚を振り返りながら自分が腹から納得できる意を探す(自分の実感がフィットする意を探す)ということです。無自覚な自分の意に気づいたら、ある意味これまでの意を客観化することができます。そうしたときにはじめてそれは自分が望んでいることか、本音の自分はどうしたいかという自分との対話が始まります。そこから新たな意を自己選択するということが可能になります。もちろんこれも一度選択すれば終わりではありません。ずっと続いていくものです。そしてその腹落ち感がつよければ強いほどこころも健全に活性化していきます。

 

三つ目は、様々なことを経験したり、勉強したりする中で自分の中で意を広げていくということです。リベラルアーツを学ぶこともそうでしょうし、人との交わりの中で自分の中になかった意のあり方に気づいていくことで意を自己選択する場面での幅が広がります。潜在的なこころの器が広がるといってもよいでしょう。

 

この3つのプロセスを私たちは「意を調整する」と言っています。LIFTのTはTreatmentのTですが、これは「調整する」という意味です。意は「無いから持つ」ものでもなく、「弱いから鍛える」ようなものでもなく、「自覚し、自分にも周りにも良い在り方となるように調整していく」ものなのです。

このように自分自身の意に目を向けて日々の仕事や人間関係、果ては自分の人生に思いをはせてみるとレジリエンスやモメンタムが生まれるこころの状態を自然に作っていけることと思います。

弊社では意を調整する方法論も開発していますが、まずは自分の意の一端をしることからはじめることをお勧めいたします。

ということで今回はご関心のある方にはもっとLIFTの世界観を知っていただくべく、簡単な動画実習コンテンツを作成しました!

15分弱程度で視聴可能で、気軽に取り組める内容なので、ぜひそちらもご覧いただければと思います!

 

動画URL:https://youtu.be/HThY7l_EIQI

 

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