• 日本のビジネス社会が本当に取り組まなければならない組織問題とは

日本のビジネス社会が本当に取り組まなければならない組織問題とは

恩田 勲のソモサン第十八回目

アニメーション作家の宮崎駿氏の「千と千尋の神隠し」という作品は、その中に登場する主人公は、か細い手足の姿で簡単には面白がらないような、いつも不機嫌そうで我が儘なように表情が描かれており、それは「常に囲われ、守られ、遠ざけられて、生きることが薄ぼんやりにしか感じられない毎日の中で、子供達はひ弱な自我を肥大させるしかない」結果である、と一部から洞察されています。そして「囲われ、守られ、遠ざけられて、生きることが薄ぼんやりにしか感じられない」とは、豊かさの帰結であり、高度成長完成後のバブル以降、生まれ育った世代の宿命であると評されています。
確かに今の40代より若い世代の人は、年が若くなればなるほど何処か厭世観を漂わせ、未来に希望を懐かず、進んでは挑戦をせず、自慈心や自尊観も低く、利己主義的で心がひ弱な人が増えてきている印象があります。こういう人達は普通の流れでは外の世界には関心が低く引きこもり的な反応をするのですが、現代の若者は結構外には目を向けており、人と群れたがり、その反動なのか現状の自分に不満を持つ余りネガティブキャンペーンに乗りやすく、人を批判したり見下したりして溜飲を下げるといった、いわゆるマイナス思考が心を支配している感があります。
バブル以降の日本の経済社会を鑑みるに、物的には満たされており、生存への危機感はなく、生きるに漫然としているにもかかわらず、管理社会の中で自由な意思は制限され、経済の成熟衰退期の中で新規性や未来性が保障されず、暗澹とした将来を憂いざるを得ないといった、今日の若者が暮らす日本の社会情勢を見事に活写していると云えます。
「千と千尋の神隠し」の場合、主人公は妖怪世界の中で生存の危機や肉体的な苦難に瀕しながら次第に自我を強く持つ大人として成長していきます。しかし現実の日本社会は漠然たる未来不安や生活的な不満はあれども生命の危機に関わるような辛酸や心身に相当な負担(ストレス)を強いるような経験をする場もなく、確固たる自我や理非分別を持った大人になれないアダルトチルドレンがトコロテンのように実社会に排出されています。そういった人達がますます社会を「常に囲われ、守られ、遠ざけられて、生きることが薄ぼんやりにしか感じられない毎日」の状態に貶めていっているわけですから、日本の未来が今後ますます詰まらない、灰色で後ろ向きな空気に満たされていくのは容易に予想が出来ます。
ところがその中にどっぷりと浸かったアダルトチルドレンは、その本質を顧みようともせず、これまでのベクトルをそのままの方向により増幅させようと力の強化、いわゆるスキルアップに邁進しようとするのですからなんとも悲しい性と云えます。愉快なのはそういった人達が異口同音に唱えるのが「スキルアップによって局面を打開する」「スキルアップによって変化を促す」という台詞なのです。まるで論理になっていません。「スキルアップ」は今ある力を増幅する取り組みです。今ある力が今欲する目的達成に寄与しない場合、どうするかを考えて物事に対処するのは論理思考の基本中の基本です。論理思考の啓発にご執心な人ほどがこういったことに気が行かないのは滑稽とも云えますが、これこそアダルトチルドレン症候の本領と云えます。
今日本の社会において本当に必要なのは、スキルアップや知の開発ではありません。未来を創造するマインドストレッチであり、意の開発です。また創造された新規性を現実化しようとするモメンタムであり、情の啓発なのです。

江戸末期、閉塞された社会観の中で生存の危機に置かれた日本の国民は、下級武士を中心に次第に上級武士を巻き込みながら革命に近い維新を起こしましたが、この原動力は諸外国が既に有していた知能的な技術力もさることながら、未来を創造するマインドであり、それを遂行していくモメンタムの強さでした。それはその後諸外国に派遣された各層の日本人の外国人に対峙する気概に表されています。今の日本人は外国留学も徐々に臆し始めたり、途上国に派遣されても自尊観の弱さから相手国の人に対して高圧的な姿勢を示したりする人が多出する有り様です。食が満たされ生存の危機がぼやける中で、自我が曖昧としている日本人は、今更ながらに諸外国の人達からアイデンティティを要求されるようになってしまいました。
外国の方が日本のことを詳しく知っている惨憺たる状況下で、一体日本人は何をスキルアップしようというのでしょうか。その際たる姿がガラパゴス開発による失敗の繰り返しです。
知はあくまでも意という幹に生える枝葉です。そして意という幹を支えるのが情という根っこです。情という根が意という幹を勢いづけ、その幹が知という枝に実を付けさせるのです。果実の良し悪しは根と幹が握っています。
今日本の教育を考えるにおいて注視しなければならないのは人間という実存の本質、社会という実存の本質です。「何を」の為の教育と、「どのように」の為の教育は別物です。これはグロバリゼーションの中で混迷するビジネス界においては尚更の話です。量産では途上国に勝てず、品質やデザインという価値においてヨーロッパに勝てない日本は、今や経済社会においてポジションがなくなる一方です。これはアメリカも同様です。悲しいのはそのアメリカを中心にオリジナルな思想をなくして信奉する日本のビジネス界の思想性です。
ヨーロッパが持つ思想性は国際経済界の中でも盤石なモノがあります。本来はそれを持っていた日本は敗戦後それを亡くしてしまいました。何故か戦後78年にもなってそれを復興できない日本の経済界の思想性のなさは、スキルアップ所の話ではありません。今の日本に必要なのは、第一に個々のマインドバイタルの醸成です。そういった情を土台にした思想性という意の再構築があって、スキルや知の発揮が有効になるのです。

JoyBizは人材のスキルアップや組織の活性を支援する長年の活動を通して、最終的に人のより根本である意や情と云った心の開発や活性なくして知の発揮やスキルの向上が果実に繋がることはないという結論に至りました。そのような中で、意と情の発揮を目的に開発したのがLIFT(ライフ・インテンション・フォース・トリートメント)というプログラムです。

最近ようやく、心が折れやすく、またネガティブ基調な心を安定させるべく「レジリエンス」という取り組みに注目が当たり始めました。しかし今の日本の社会、特にビジネス界においては、寧ろ活性した覇気ある心、ポジティブで、チャレンジブルで、アグレッシブな心と創造力、実践力の開発の方が必務のように思います。それこそ「モメンタム」です。JoyBizは人や組織の心をモメンタムにするべく取り組む会社です。
LIFTという手法によってモメンタムを開発するのがJoyBizのミッションです。
是非、弊社のホームページや過去のブログをご参照下さい。よろしくお願い申し上げ
ます。

さて、皆さんは「ソモサン」?