モメンタムをマネジメントする ~ソモサン第303回 ~

先だってNHKの朝のバラエティ番組で「元気が出る曲(自分応援ソング)」というテーマが放映されていました。さすがNHKです。全国のアンケートを取って全100曲を紹

介していて、1時間半の間に約70曲程を矢継ぎ早に流していました。その中にはもちろんモメンタムに関わるような楽曲もあり、中でも「やる気が上がる曲の特徴」という内容と着火モメンタムに必須な「運動する気にさせる楽曲について」という内容は、かなり役立つものでしたので皆さんにもご紹介しましょう。

まず「やる気が上がる曲の特徴」ですが、これは音響心理学を専門にしている京都精華大の小松教授によると二つの決め手があるそうなんです。それは、 一つはフェードインがある楽曲。だんだんと盛り上がっていく曲であることで、例えばクラシックのラベルによるボレロなどが典型だということです。そして、二つ目は変化(転調)がある楽曲。曲の途中でリズムが変わったり転調する曲であることです。これは同じ刺激だと慣れてしまうので、時々スイッチを入れる瞬間を作って飽きさせないことだということです。そして小松教授はその両方を備えた楽曲として「Mrs. GREEN APPLE」の「ケセラセラ」を挙げていました。この楽曲は「盛り上がる曲構成」でしかも「何度も転調」し、この拍子と調性の2つを変えるダブルスイッチによってやる気を持続的に挙げる作用をもたらしていると紹介していました。

またNHK的には、アグレッシブな感情を引き起こしながら変化に富んだ楽曲でやる気をスイッチオンさせ、サビが口ずさみやすく脳内で鳴り続ける楽曲として「B’z」の「ultra soul」と「LOVE PHANTOM」を紹介していました。B’zの歌詞は「孤独感を包み込み鼓舞してくれる。孤独感に寄り添う」楽曲であることも心を鼓舞してくれるそうです。

そして、「運動する気にさせる楽曲について」は私も紹介しているリズムやテンポを重視した内容が紹介されていました。これもさすがNHKなのはより精密に、「1分間に120拍のテンポ」のが曲が、「脳の運動に関わる部位が活性化して体を動かしたくなる」ということでお勧めだということ。120拍は初心者が無理なく続けられるリズムだとNHKは語っていましたが、このリズムは丁度時速6キロ位でジョギングするテンポです。心拍数的には平常時を80拍とするとその1.5倍程でじんわり汗がにじむ程度の運動量です。楽曲的には「ZARD」の「 負けないで」や「ウルフルズ」の「ガッツだぜ!!」「KAN」の「愛は勝つ」「AKB48」の「恋するフォーチュンクッキー」「米津玄師」の「さよならまたいつか」などが紹介されていました。音楽を聴くと脳内でドーパミンが放出されて楽しさや意欲をもたらします。NHKによれば実際にオーストラリアの大学の実験で、このやり方でドーパミンが放出されると疲労感を軽減させ、疲れの感覚を感じない時間が20%長くなるということが報告されているそうです。

更にここがNHKらしい味噌です。拍数に応じた楽曲の紹介がありました。まず110拍が「スピッツ」の「空も飛べるはず」とか「ひとみ」の「LOVE2000」だそうで、続いて130拍が「スキマスイッチ」の「全力少年」や「サザンオールスターズ」の「希望の轍」、「Superfly」の「タマシイレボリューション」などになります。140拍は「光GENJI」の「勇気100%」で150拍は「10-FEET」の「第ゼロ感」、そして160拍に「YOASOBI」の「アイドル」が来ます。170拍は「AKB48」の 「ヘビーローテーション」とか「ウルフルズ」の「ええねん」「ランナーズハイ」となります。

意外とAKB48の「ヘビーローテーション」はハイリズムなんですよね。それにしても今はやりの「YOASOBI」の「アイドル」は160拍とハイリズムで、もはやこれはジョギングよりもランニングレベルになってきます。こういった楽曲が流行るということはそれだけ世の中がモメンタムを挙げるのにハイリズムを求めているという証であり、なかなか勢いづかないというか、勢い付かせるにはそれだけのリズムやビートが求められるということになるのでしょう。

私的には130拍位が着火モメンタムを作動させるには最適のような実感を持っています。ジョギング時にはそれ位のビートのロックを掛けながら走っています。皆さんは如何でしょうか。自分に最適な楽曲を持っているとスイッチを入れや易くなって便利ですよ。またマネジメント的には前回の「笑い」と同様に、何かを始めるときの状況にあったリズムでの楽曲を選んでそれをバックサウンド的に掛けると効果的だと思います。ジャンルはそれこそ場に応じてですが、大人数の公式の場ではクラシックやジャズなどを、小集団ではロックやポップスをと幾つか手持ちを持って、使いこなすのが場づくりに非常に役立ちます。許されるならば一緒に斉唱するのも効果的です。

お寺や教会で初めに称名したり讃美歌を詠唱するのはモメンタム効果を狙ってのことです。振りや踊りを伴うとモメンタムは相当にハイになります。打楽器などを使うの一手です。皆さんもモメンタムを挙げるための仕掛けを持っておくと何かと便利ですよ。

これまでは世の中の景気が良くて環境がポジティブな時代が続きました。そういった背景では戒めや克己心のために多少ネガティブが基調のマネジメントでも許されましたし、それが効果をきたした面もありました。しかしもうそんな時代はとうに終わりました。一部の年長者(40代後半以上の方々)はネガティブが当たり前の時代に生き、それが嫌だと分かっていてもそれ以外にやり方を学んでおらずに従前としたマネジメントをしている人が一杯います。またストレスを浴びてそれを弱い者いじめの如く権力弱者にぶつけて留飲を下げている人もいます。更には知性一辺倒の理系優位な教育環境に浸されて、人への関心が持てなかったり、低かったりで接し方が分からず何でも抱え込んで人材つぶしをしまくっている人もます。どれももう許される時代ではありません。少子化の中で若者をうまく生かせられなければ早晩組織は瓦解します。今の若者は未来不安で心が繊細になっています。対人も少なく鍛えられてもいません。丁寧に扱わなければすぐに沈んでしまいます。かといって甘やかして増長させても仕方ありません。

これからは感情の移ろいを第一義に考えたマネジメントが欠かせない時代になっています。感情を制御する考えから感情と協調していく考えへの転換がマネジメントには必須な時代になっているのです。まさにマネジメントにおけるチェンジアキシスの時代です。そしてマネジャーに求められるのは、マネジメント面でのリスキリングになっているのです。これからはポジティブが基調のマネジメント、モメンタムを中心に行うマネジメントが求められます。

そしてこれをお読みのあなたもその渦中にいるのです。他人事ではなく自分事として考えて頂けますと幸いです。

それでは次回もよろしくお願い申し上げます。

 

さて皆さんは「ソモサン」?