モメンタムをマネジメントする、心理的柔軟性 ~ソモサン第301回~

現代は格差社会の拡大や地縁や血縁が薄まる社会情勢の中で社会的紐帯が解体され、個が剥き出しになるリアル社会になった時代と云えます。同時にネットの普及拡大によって民意が情緒的な情報に一喜一憂したり左右される時代になりました。まさに情報が絶えず流れ続ける中で、絶えずそれに反応し続けなければならい様な日々、という心理的繁忙の時代と云えます。

こういった社会的背景になると、人の繋がりの殆どが孤立感を高めた人たちが一時的で感情的なものとなって行きますし、またその度合いは高まるばかりになります。そしてそうなるに連れて、心はどんどんと疲弊して感情の制御が弱くなるばかりになり、それ故にネガティブな意識に支配されてしまった人たちが増殖して、そういった人たちが相互に心ない批判や罵倒を浴びせかける状態が加速していきます。こういった人たちは自己防衛による自己正当化による心の移ろいを「正義」によるものと錯覚し、また自分は傷つかないという無責任な立ち位置から他人を糾弾することで感情的暴走の溜飲を下げる有様を正しい行いかの如く自己欺罔する心の病に陥っていくばかりです。残念ながらここには人としての理性の欠片もありません。こういった人やそれが衆愚と化した様相の中では、もはや理性で感情を制御などという理屈は戯言になるばかりです。先日も著名な歌手と女優の夫婦が有名?なユーチューバとやらの虚言によって誹謗中傷に晒されました。根拠のない情報を垂れ流すユーチューバの頭の無さや下品さも大したものですが、それを鵜吞みにして騒ぎ立てる今の大勢の愚鈍さ愚行さは目を覆うばかりです。

著名なジャーナリストの大矢壮一氏はもう50年も前に「一億総白痴化」と称しましたが(因みに今の文字変換では白痴と云う用語は変換されません。これも行き過ぎた配慮と云えます)、現代はそれ以上のあり様のような感があります。

この解決、いや解決は無理でしょうが改善や緩和に向けて私たちはどう向き合えば良いのでしょうか。新たなる社会的な繋がり、それも五感的な繋がりを取り戻したり深めることによって心理的安全性を高めるのは前提としてとして、まず取り組めることは自己の心の安息と鍛錬を行うことです。難しいことではありません。安息とは「調身調息調心」、つまり集中して雑念を払い、心を休め安定させること、そうサマタ的なマインドフルネスを得ることです。そして鍛錬とは心をストレッチさせること、具体的には自己観察してメタ認知力を磨き、意味ある行動をするような自分になる努力をすることです。この

①自己観察力(思考や気持ち)

集中力

③アウェアネス(気づき)力

④目標意識

⑤意味ある行動(目標行動)

という5つの要素は、前者の3つがヴィパッサナー的なマインドフルネスを得ることであり、後者は燃焼的なモメンタムを得ることと同じです。これを「心理的柔軟性」と称する学者さんもいらっしゃいます。何れにせよ「発奮する」力を磨くことが鍛錬です。

心理的柔軟性と云う考えには「着火モメンタム」の要素がありません。何故ならば以前から云うように従前のマインドフルネスの概念は、あくまでも「意志力」が備わっているということが前提のエリート理論だからです。平安時代において空海がエリートの最澄に対して市井の人でも得られる悟りの世界を求めて真言宗を作ったように、鎌倉時代において法然や親鸞、引いては日蓮がやはりエリートの禅に対して市井の人が救われるべく浄土信仰を作ったように、一般人には③のアウェアネス、気づきの段階にステップアップするには、情動的、感情的なリフティングが必須になります。途中で諦めないような自助や他者からの心の下支えが求められるわけです。それは理屈ではありません。ともかく感情を盛り上げられて動いているうちに体感的体験的に学び気づく世界があります。それを現出させる手助けが着火モメンタムの役割です。着火モメンタムは、差し詰め➁´勢い付け(自噴力)とでも言っておきましょう。

点火があって着火がある。そして焼火(かつては弁別と云っていました)があって燃焼がある。前者が他からの支援行為で、後者が自行為です。この四つの段階が揃って市井の一般人の焚火は完成するわけです。

ところでその着火モメンタムに関してですが、これまで着火の手助けには音楽が良いとお話してきました。中でもヒップホップは効果的だと紹介させて頂きました。しかしマネジメント的にいきなりヒップホップは抵抗がある人もいらっしゃるかも知れません。そういった時には場と状況にあったクラシックや映画音楽が集団向けには効果があると思います。ピアニストの清塚信也さんはモメンタムを挙げるには「ベートーベンの第7番第4楽章」などが効果的だと仰っていました。映画ならば「スターウォーズのテーマ」や「ロッキーのテーマ」などが目が覚めて勢い付きますね。仕事に行く前に掛けると効果的だと思います。因みに個人的にはレッドツェッペリンの「天国の階段」がエックスジャパンの「紅」同様に最初はメロウなマインドフルネス的テンポで始まり、途中からモメンタムをかなりハイに挙げるメロディーワークになって心が高揚します。またエリック・クラプトン(デレク&ドミノス)の「いとしのレイラ」などは最初は着火モメンタム的なリズムワークで盛り上げながら、途中からビリー・プレストンのピアノワークで燃焼モメンタムが燃え上がるように美しいメロディーワークで心を昇華させていきます。これらの楽曲は一曲でマインドフルネスもモメンタムも満たしますから一挙両得な感があります。皆さんも是非改めて聞いてみて下さると幸いです。

次回からはモメンタムに対するマネジメント的な介入に関して、もう少し具体的なご紹介をさせて頂くことに致しましょう。

それでは次回もよろしくお願い申し上げます。

 

さて皆さんは「ソモサン」?