ドーパミンを発出してモメンタムを喚起する ソモサン第233回

ショートソモサン①:神経伝達物質ドーパミンの働き

皆さんおはようございます。

いよいよ現在弊社で中核的な人間開発の主題としている「モメンタム向上」の本質についてお話をしていきたいと思います。

モメンタムとは心理学の用語で「元気になる、盛り上がる、ハイな気持ちになる、勢いづく」力という意味です。これを脳科学的に表現すると「脳内で動機づけを司るドーパミンの発出を高める活動」と云うことになります。

さて私たちを熱愛・冒険・創造・成功に駆り立て、人類の運命をも握るともいわれる脳内の神経伝達物質のドーパミンですが、ドーパミンはよく云われるところの「快楽物質」ではありません。ドーパミンはあくまでも動機づけを喚起する物質で、満足感を促す「快楽物質」はセロトニンやβエンドルフィン、或いはオキシトシンといわれる脳内伝達物質になります。これらはドーパミンが未来行動を誘う役割を担っているのに対して現在の満足を役割的に担っているので、ドーパミン研究の第一人者で「The Morecure of More」を著したダニエル・Z・リーバーマン とマイケル・E・ロング は総称的にH&N(ヒア&ナウ)物質とも呼んでいます。

この両者は上記の著書(邦訳「もっと」という書籍)においてより重要な見解を述べています。それはドーパミンの伝達経路には大きく分けると2つの回路があり、それらがバランスを取り合って人間をより生産的なポジティブ状態に誘引しているという内容です。

彼らはその2つの回路を「欲求ドーパミン」と「制御ドーパミン」と名付け、人は「欲求ドーパミン」によって〈期待〉を駆り立て、「制御ドーパミン」によって〈達成への力〉をもたらすと説明しています。両者はどちらも基点は「動機づけ」ですが、前者が瞬間的で短期的、情動的な動機であるとすれば、後者は持続的で長期的、論理的な動機だということで、制御とは「全体を抑制」するということではなく、「情動的な欲求を抑制する」という意味で名付けていると説明しています。更にこの書籍では、未来志向のドーパミンと「今ここ」志向のH&N物質とが互いを抑制しながら協調的に働かせるバランスこそが脳の潜在能力を最も解き放つと説いています。

世の中にはいたるところに「アクセル」と「ブレーキ」を対立させるシステムがありますが、どうも制御の一般として、その仕組みが非常に効率が良いのが自然界の摂理の様に云われています。このドーパミンにおいてもまず欲求ドーパミン系で感覚的に「予測」を生成し、それを制御ドーパミン系からの「理性的判断」と外部からの「行動の結果」による満足感という批判を通して、以後の予測の誤差修正をする仕組みになっています。

元々ドーパミン欲求回路は生存と生殖に繋がる行動を促進するために進化した経緯があります。言い換えれば「食欲」と「性欲」を高めて生存の競争を勝ち抜きやすくするということです。

またドーパミンの活性化は、それが必要だからではなく、生存上魅力的であることが引き金になっているということが分かっています。このことはドーパミンは常に未来に備えることを見据えてあらゆるものをより多く手に入れることに力を注ぐ機能であるということを示しています。

少しでも価値がありそうなものを見つけると、ドーパミンが始動してそれを注視して意識するように脳内の欲求回路にメッセージを送ります。それは「手に入れたい」という情動、多くの場合「興奮」を生み出すことで伝えられます。生存に役立つ何かが現れると、考えを巡らせる間もなく、好き嫌いや必要か否かも関係なしにドーパミンがすぐにそれを欲しがらせる反応を喚起するといった具合です。そして欲求回路でドーパミンが活性化すると、エネルギー、熱意、そして希望が呼び起こされます。これらはすべてポジティブな感情として現れます。ドーパミンはまず想像力のスイッチを入れてバラ色の未来像を描き出すわけです。

因みにドーパミン回路が処理するのは、現実の体験ではなく、想像上の未来の可能性です。予測に対してです。ですからその欲求が持続されるには、別の快楽物質の働きが必要になってきます。それが現在やここでの満足を司るセロトニン、βエンドルフィン、オキシトシンなどの物質になります。それらが満足を生む役割をし、それらの物質がより多く発出されれば欲求は持続され、同時にそれが記憶されることで次回以降の反応への学習が形成されることになります。

ドーパミンが強烈に放出されるのは、「避難しろ」「食べ物を探せ」「子を守れ」といった生存や種族維持の本能に根差した課題ですが、基本としてドーパミンの目的は、未来を予測して、予測外の報酬が生じた時に、「着目しろ」「環境の中で新しい何かを覚える時だ」とシグナルを送ることにあります。こうしてドーパミンを浴びた回路は環境に順応していきます。そして回路は形を変えて新たなパターンを作っていきます。新たな記憶を蓄えて新たな接続を確立していくわけです。

そうすると次に同じ報酬が発生しても記憶が再現されるので驚かなくなります。人はドーパミンの作用によって最初は興奮するのですが、記憶と学習によって報酬予測誤差がなくなった次は興奮しなくなるのです。ですからドーパミンは尽きせぬ喜びの宝庫ではありません。驚きを伴う出来事を予測できるように脳を形作り、資源を最大限に活用できるようにするのが本来の働きです。ドーパミンの作用はあくまでも欲求を喚起することです。欲するということと好きになるということは違いますから幾らドーパミンを刺激しても、その結果としての現実を好きになれなければ、快感や満足感は持続しないということになります。

 

ショートソモサン②:計算高い「制御ドーパミン」

ところでドーパミン欲求回路は注意を集中させ、モチベーションと興奮を与えますが、先にも述べた通りでドーパミンにはもう一つ、制御回路という機能が存在しています。衝動を生むのが中脳辺縁系を通るドーパミン回路である一方、状況を支配する為の手段として計算と計画を生むのは中脳皮質系のドーパミン回路になります。これによって動機づけにはより複雑な思考力、論理力といった作用が加わってきます。この回路は欲求ドーパミンの野放しの衝動を制御し、その生のエネルギーを利用して、それをより有利な結果へと導くことを目的としています。そうして欲求回路が導く未来よりもさらに遠い未来に自分を投影する想像力を与え、長期的な計画を立てさせるのを役割としています。

つまりドーパミン制御回路は、欲求回路によって情動的に興奮する反応での動機づけが、長期的で持続的に予測した場合、本当に自分にとってメリットか否かを加えた動機づけを促す役割を担っている存在になります。

そういう観点からいえば、制御回路は冷静で無情で計算高く、目標達成のためならばどんなことでもする動機づけ回路だといえます。欲求を司るドーパミンは情動的で感覚的に我々に何かを欲しがらせる、もっと欲しいという生々しい欲望の源です。でも私たちは自らの欲望のなすがままに翻弄されるわけでもありません。私たちは手に入れる価値に対してもっとそれを打算的に計算する相補的なドーパミン回路も有しているということです。その回路は私たちに計画を立てる能力、戦略を練り、周囲の世界を支配し、望むものを手に入れる能力を与えています。そのための動機づけを与えています。またこの回路は、抽象的な概念と先を見通した戦略によって周囲の世界を制御し、環境を支配することを可能にする回路でもあります。ドーパミン制御回路は想像力の源という役割も担っているのです。

そしてドーパミン制御回路は、私たちに未来を予測させ、今まさにするかもしれない決断の結果を垣間見せることで、どの未来が好ましいかを選ばせてくれます。また想像上の未来を実現する能力も与えてくれるのです。

因みに手に入れてないものだけに関心を向ける欲求回路と同じく、制御回路が活動するのも現実ではない可能性の世界であるということは忘れてはいけません。両者は共に予測のために働く仕組みです。両者の始点は同じですが、欲求回路の終点が興奮と熱意を引き起こす脳の領域であるのに対して、制御回路は論理的思考を専門とする前頭葉に至っているというのが大きな違いなのです。でもどちらの回路も幻影、実体としてはないものについて考える能力を与えてくれるという点では同じ機能といえます。欲求ドーパミンにとっては、手に入れたいと思ってはいるが今現在は持っていないもの、未来に必要となるとものへの願望であり、制御ドーパミンは、想像力と創造的思考を構成する要素、アイデア、計画、理論、数学や美といった抽象的概念、そしてまだ存在していない世界から構成され、欲求ドーパミンの根源的な「欲しい」という気持ちの先へ連れて行く役割を担っています。制御ドーパミンは周囲の世界を理解し、分析し、モデル化する手だてを与えてくれ、それによって私たちは、いくつもの可能性を推測し、比較対照し、目標達成の手段を練り上げられるということになるのです。要するに制御ドーパミンは欲求ドーパミンのリクエストを判断して、価値があるか否かを見定め、行動を抑制する役割を担っているという重要な機能を担っています。

欲求ドーパミンの生む興奮とモチベーションを受け取り、選択肢を査定し、手段を選び、求めるものを手に入れるための戦略を練り上げるのが制御ドーパミンの役割です。

 

ショートソモサン③:無意識を利用してモメンタムを高める

欲求ドーパミンは情動的な感覚行動を司り、制御的ドーパミンは論理的な感情行動を司っていますが、いずれも快感を得るための動機行動です。端的にいえば、欲求ドーパミンは瞬間的、制御ドーパミンは持続的領域を分担しているわけです。予想と予測は違います。この違いへの認識は重要です。制御ドーパミンは欲求ドーパミンが発する衝動に対して「粘り強さ」を与えてくれます。

このドーパミンの働きは、「人は相手が成功を確信していたり、自信を持って対峙してきた時、相手が有する意志に、制御ドーパミンを原動力とする圧倒的な自己効力感の表現を感じ取り、勝てない喧嘩に飛び込むのは良い選択ではないという動機づけを無意識のうちに感じ取り、相手の邪魔にならないようにしたり、服従の反応をする」といった権力論の起点にもなっています。この認識も動機づけを知る上では大事な要素です。ただこれはこれで話が長くなりますので別の機会に話させて頂きたいと思います。

ともあれ、制御ドーパミンはその素地として論理力が要になってきます。論理力や思考力が乏しい人は欲求ドーパミンを制御するドーパミンが発出されても、それが現実の行動に結びつきません。というよりも結び付けられません。これが無学無教養な人が欲求ドーパミンに偏った行動選択に翻弄される主因となっています。この辺は「ケーキの切れない非行少年たち」という書籍を一読されるのも一考かと思います。

ではこの2つのドーパミンをバランス良く高めるにはどうすれば良いのでしょうか。

まず押さえておきたいのは、人は意識して行動を選択するのではなく、無意識に反応して行動したことを後付け的に意識的に説明する、という脳科学の実験結果から提唱された仮説です。

例えばその一例として「笑い」という世界があります。この笑いの対して最新の仮説は、「笑いは『無意識』の情報認識による機能である。笑いは無意識で『何か』の情報を瞬間的に認識して『面白い』と判断して表出される反応である。例えば人が予想外の行為をしたところを笑う場合、『ハハハ、何をやっているんだ』であって、『何をやっているんだ、ハハハ』ではない。先に笑いが生じて、その理由を後から意識的に追っているのである。その意識的な判断が正しいとは限らない。多くの人は『これが〇〇だから面白いんだ』と自分なりの直感的な判断で主張するが、その人が本当に心情として意識的にそれを理由として面白いと感じたかどうかは本人も分からないのである。笑いとは、人が特定の情報を知覚した時に、それを快と判断した時に生じる心情的で肉体的な変化である。心情的変化とは『緊張とその緩和の切り替え』が起き、副交感神経が働いてリラックス状態になる変化であり、肉体的変化とは、『呼吸運動が変化する』『表情が動く』といった変化である。これらは相互に対して共時的に生じる。笑いは構図のズレに対する緊張の緩和からくる。笑いが生じる時には自律神経が副交感神経優位となる。記憶の連合における情報距離の(認知のズレ)の大きさは副交感神経の優位としての条件を大きく満たし、それによって快の感情を高めて強くドーパミンの放出を促す。(小林亮氏)」といった内容になっています。

このことは先の意識と無意識に対する脳科学的な学説にも合致してます

これをドーパミンの発出に当て嵌めますと、「ドーパミンを発出しようと意識する」といった思考的な振る舞いよりも「笑い」のように意図的に「呼吸運動を変化させたり」、「表情を動かす」、ことから副交感神経を刺激し、「笑い」を誘ったり、意図的に「笑う」ことから副交感神経を刺激してドーパミンを発出させるという流れになります。

以前本ブログで「ドーパミン、ドバー」と称して幾つかのアクティビティーを紹介させて頂きました。その中で先の意図的に「呼吸運動を変化させる」と同じ効果として、リズムを使って「心拍数を変化させる」方法に言及させて頂いたのを覚えている方もいらっしゃるかと思います。弊社でもこの「リズム法」を使った幾つかのアクティビティを展開させて頂いています。

でも「生兵法は怪我の元」です。実はリズム法はあくまでも欲求ドーパミンの発出を高める技法だということに注視しておく必要があります。これだけでは「興奮の暴走」が起きてきます。また瞬間的な高揚しか喚起出来ません。これでは薬物効果と同じレベルになってしまいます。

そこで重要なのが同時に制御ドーパミンの発出を高めるアプローチになってきます。

制御ドーパミンにとって重要なのは「目標意識」と「意味付け」です。未来を生み出すのは予測したことへの行動を起こすしかありません。そして行動を起こすには最初に目標意識を持つしかありません。目標とは行動のための目印です。制御ドーパミンは「やり抜く意志」「粘り抜く意志」時には「我慢する意志」を動機づけます。これらを支える論理は「目標への拘り」「行動への意味づけ」です。これが欲求ドーパミンと相まって力強く持続的な動機づけを生み出します。まさにモメンタム・ハイな状態です。

ではリズムという世界における目標や意味づけといった論理は何なのでしょうか。その一つがメロディー(旋律)です。そしてリリック(歌詞)です。メロディは単体としてもイメージに対しての意味づけをもたらしますが、歌詞と一体となってハーモニーとして側頭葉を刺激し、感情の高揚を伴って前頭葉も活性化させて制御ドーパミン回路の活性を促します。

そう、もう皆さんもお気づきのことでしょう。二大ドーパミンを高めるのは、自分を(人生において)目的的にも意味的にも盛り上げる歌詞を伴った好みの楽曲を通して、自分を動機づけるというのが有効になります。

無論確固たる信念があって、ちょっと心がくたびれている場合ならばリズムだけでも有効です。でも今ひとつパッとしない場合は、自分を盛り立てる言葉の後押しが力強い動機づけの要因になります。それにはやはり歌詞を伴ったメロディを持っているのが効果的になります。歌詞の持つ力は絶大です。そしてそれにあったメロディーは強く記憶に刻まれて、再現性を高め想起し易くします。

具体的には自分専用の伴走曲を持つ。そして携帯などに入れていつでもどこでも聞ける様にする。或いは口ずさむ。鼻歌を歌うといった行為で自分を盛り立てます。時にはリズミカルに踊りや振りを覚え、全身で表すのも効果があります。ハイになれるリズムの楽曲を奏でるのも有効です。

テレビのモーニングショーで女優の北川景子さんが急に踊りを振られて、すぐにそれを面白おかしく踊っているシーンを見た時に、「ああこの方はかなり自己肯定感が高く、自己動機づけが上手な人なのだなあ」といたく感心させられました。

因みに制御ドーパミンに重きを置いた動機づけのアプローチで最も有効なのが、以前にもご紹介せて頂いたペップトーク法になります。ご興味のある方は前のブログをあたって見て下さいますと幸いです。

欲求ドーパミンを瞬時に高めるには、ガッツポーズなどのポーズを持つとかイチロー選手や大谷選手がバッターボックスやマウンドに上がる際にやるお約束、場面に合った動きが出来るようにルーチンや自分ルールを持つのも一手になります。

 

ショートソモサン④:「笑い」がモメンタムを生み出す有効な方法です

では今回は、簡単でも相当に効果がテキメンになる「笑う」という行為について最後のお話としましょう。笑いは自分を勇気付ける力があります。単に微笑み笑えるフレーズを自分に持つだけでもかなり役立ってくる所作です。自らが笑うだけでなく、好みのお笑いを見るのも一手です。

ところで、笑いには「意味認識」としての笑い、「描写認識」としての笑い、「事実認識」としての笑い、「心理認識」としての笑いがあります。例えばダジャレを例に取りますと、内容が意味、表現の仕方が描写、言った人の意外性などが事実、受けなかった場合の心情などが心理といった具合で繋がります。

一例挙げてみましょう。「ドーパミンがドパー」といった場合、内容が受けるかどうかは意味認識での笑いです。またその時の話す表情や言い回しが受けるかどうかは描写認識です。またそれを言った人が医者のような人で、想定外からくる笑いならば事実認識になります。最後の言った後に大きく滑った状況を見て思わず笑いが浮かぶのが心理認識になります。

笑いには更に、一般の知識から遠い情報を使って緊張を緩和させる(これを連合といいます)創作型認知と近い知識を使って記憶の奥にある情報を喚起させることで緊張を緩和させる共感型認知に大別されます。この2つの認知を先の4つの認識と掛け合わせることで、笑いのパターンは8つに分けることが出来ます。

笑いの源泉は緊張の緩和にあります。その緩和が緊張と落差が大きければ大きいほど笑いは強く大きくなります。そこでお笑いなどは意図的に落差を生み出そうと演出をかけます。それがいわゆるボケとツッコミです。ボケによって緊張を演出して、それをツッコミによって一挙に緩和に落とします。それによって副交感神経を刺激するわけです。この時ズレが読み通りに行かずに緩和ができなかった場合、そこには交感神経優位による緊張と嫌悪感という不快な状態が生み出されます。それが「外す」とか「滑る」という状態です。例えば内容が倫理的な問題や深い部分での感情の問題でズレが起きなかった場合などです。いわゆる「笑えない」という状態です。

広告業界ではこのズレを美しく生み出す時、それを「いき」と言い、逆に不恰好な時、それを

野暮」と称したりしています。

ところで皆さんもお気づきかと思いますが、上記の4つの笑いの内、意味認識と事実認識は論理性の世界での反応であり、描写認識と心理認識は感受性の世界での反応になります。

これまでの研究による調査データによれば、理系型の人や学校教育に傾注したいわゆる学歴エリートと称される人達は、どちらかというと論理的思考による言語や文字の意味処理能力が高いので、相手が発した言葉の意味を素早く読み取ることは得意ですが、反面直感的思考力が低い傾向にあり、状況を読み取って相手の心理を推察することは不得意であるといった分布傾向が見られるそうです。このことは理系脳の人は言語による意味記憶を使った笑いには反応するが、状況から相手の心理を読み取る笑いは好まない傾向にあり、状況を心理予測して直感的に認知できない人が多く、うまく情報連合が起きないので、ボケとツッコミのズレや滑りのポイントが分からず、うまくフォローができないという特徴が多々見られるということだそうです。

私の経験でもいわゆる高学歴の人たちと会話する時に、状況を読み取ることが下手(空気が読めない)というよりも気が回らず、コミュニケーション的にせっかくボケても、それをまともに受け止めるばかりでツッコミが出来ず、場が盛り上がらず、返って白けるということが良くあります。

人の能力として、「聴く力」「観る力」「感じる力」「質問する力」「伝える力」と大きく5つのコミュニケーション力があると言われますが、先のような理系脳の人は、人の心理を直感的に捉えるのが苦手のために、日常のコミュニケーションが苦手な傾向にあります。そういった観点では自分に対してはともかく、他者との関係を深めたり、他者のモメンタムをあげるマネジメントは下手クソな人が多いように感じています。但し自分がわからないことを理解して、それを知るために適切な質問を導き出す力は高いので、仕事上のコミュニケーションは不都合は低いように思われます。有能だけどもつまらなく見えるといった按配でしょうか。

まあ仕事によりけりなので、どういうタイプが良いとか悪いはないのかもしれませんが、リーダシップを発揮したりや人に影響を与えていく仕事につく人は意識しておいて損は内容ではないでしょうか。

それよりも重要なのは、モメンタムを笑いによって喚起させるときに、人によって好みやタイプ的なアプローチがあるということです。自己のモメンタムを喚起させる場合、意味認識や事実認識の強い人はそれに合った笑いを演出すると効果的なツボになりますし、描写認識や心理認識の強い人はやはりそれに合った笑いの演出がコツというかポイントにあるということを前もって自覚しておくことが大切だということです。

そして自分に合った笑いやモメンタムの喚起策が必ずしも相手にとって効果的なわけではないということをしっかりと押さえておくことはとても大切なことだということです。

では相手がどういう認識で笑いを喚起させるかを知るにはどうすれば良いのでしょうか。その一つの手段として「誘い笑い」という手段があります。誘い笑いはミラーニューロンという神経回路が影響します。ミラーニューロンとは他人状態を自分の状態だと錯覚する条件反射的な反応です。これによって自らが笑う状態を作り出すことで相手が笑いやすい状況を誘うことが出来ます。どういう笑いで相手が乗ってくるかを色々と試していると相手の笑いのツボ、つまり認識の傾向がわかってきます。

ところで笑いの基点として、快・不快の情動を発生させる脳の部位としては『扁桃体』と『側坐核』が知られています。また脳の報酬系に関与している部位は様々なのですが、その中心的役割を担っているのは中脳の腹側被蓋野、線条体の側坐核ということも分かってきています。中脳の腹側被蓋野にはドーパミン神経(TH陽性神経細胞またはDAT陽性神経細胞)があります。

このことは、笑うことによる「快」の反応は扁桃体から腹側被蓋野にはドーパミンの放出の信号が出すことに繋がり、それは詰まるところモメンタムの喚起に繋がるということを示しています。

自分に合った笑いを意図的に演出する。そして笑うという行為が無意識的に脳内でドーパミンを発出させ、モメンタムを喚起させる。それが自己奮起を促すきっかけになるということです。

特に大事なのが自分の制御ドーパミンの回路を刺激する笑いを演出するということです。単純に大笑いする動的な刺激も欲求ドーパミンの回路を活性するには効果的ですが、今一つパッとしない心理状態の時には非効果どころか、返って白けて落ち込むきっかけになってしまいかねません。それを回避するには、やはり制御ドーパミン回路を同時に刺激することが必要になります。それには自分の認識傾向や好みに合った意味を持った笑いを自分に提供するということです。

具体的には、まずは自分の笑いのツボを知ることです。そしてそのツボを刺激する笑いの演出や道具立てを準備しておくということです。そして大笑いだけではなく、クスリ笑いでも良いのでともかく楽しい気分になる、副交感神経優位になる空気を持つことです。

携帯でお笑いを見るのも良いでしょう。ギャグ漫画も効果的です。またダジャレを言って自分笑いをするのも一手です。ともかく自分にとって意味のある認識ポイントをついた笑いを意図的に行うことがとても大切です。

まずはやってみて下さい。お試しあれ、です。

次回ももう少し具体的にモメンタム向上のアプローチをご紹介していこうと考えています。

 

それでは皆さん、次回も何卒よろしくお願い申しあげます。

さて皆さんは「ソモサン」?