• 脳科学者を信奉する多くの日本人が嵌まる過ち~実際の問題解決は心理学が担っている~

脳科学者を信奉する多くの日本人が嵌まる過ち~実際の問題解決は心理学が担っている~

ショートソモサン①:ポジティブに対する誤解と危険性 ~権威に惑わされずに正しい理解を普及しよう!~

皆さんおはようございます。

最近脳科学者がそれだけでは食えなくて心理学の分野での論考に首を突っ込むことが多くなってきていると感じます。主観ですがおそらくその理由として、脳科学は一見エビデンスベースでサイエンスに映るのですが、実際は心理反応が電極的に脳のどういった部分で為されているかというデジタル的な部分的局地的研究が寄せ集まった状態で、単独ではコンテキストを持ったサイエンスとしてのレベルにまでは達せられていないため、どうしても心理学のアナログ的なストーリー立てに頼らざるを得ないからだと認知しています。一般の人が理解するにはやはり研究的な歴史も長く、相互関連がシステム的にしっかりしている心理学の論考の方が納得性が高いのは確かです。しかし残念ながら(特に日本人の場合)、現代のサイエンス思考は分析的科学至上主義を基軸に脳科学的な論考を前に出すとそれを盲信する傾向があります。

事実脳科学は歴史が短く、未だ包括的な論考状態には至っていないにも関わらず、日本では心理学よりも上位のように扱っています。その顕著な形として、心理学を未だに文系に置いている大学が圧倒的です。そうして実用学としては宙ぶらりん状態に置いているのが実際です。

そういった中で大衆は脳科学者と言う肩書きを出すだけで、それが検証不足のいい加減な文脈でもその内容を信奉する人が後を立ちません。心理学者というと胡散臭そうに反応する人がいる中で、脳科学者というと諸手を挙げるマスコミも多く、それはやはり脳科学と言えば売れるからに他なりません。でもそれによっていい加減な論考が流布されたのではたまったものではありません。

著名人が浅慮に専門外を我流で解釈してそれを流布することは罪に匹敵します。先般も女性脳科学者という肩書きの中野信子氏が脳に関する出版物を出しましたが、個人的には少なからず偏見を感じました。

本の趣旨は、最近「ポジティブに考えればいいよ」などとよく言うけれど、ポジティブ=善でネガティブ=悪なのだろうか。人は特にポジティブでなくても良い。無理してポジティブにしようとすると返って反作用がある。といった内容です。一部引用させて頂きます。

 「ポジティブ心理学が台頭してしばらく経つが、ポジティブになれないのは自分に非があるからだと自責的になるのを助長して、かえってうつになる例が増加していると訴える学者もいる。

たとえば前向きな姿勢を強要されることによって、心理的な回復を妨げてしまうと警鐘がある。落ち込んでいること自体が落伍者である証拠のように受け止められ、苦しいときでも笑うことができない者はダメな人間だ、楽観的になれない者は劣った人間だというメッセージを暗に与えてしまうからだ。にわかには回復が難しい深い悲しみのなかにあっても、乗り越えられないあなたが悪い、と突き放してしまうような明るい高慢さが眩しく輝いていて、苦しんでいる人間は自分の抱えている闇の重さにますますうしろめたさを覚え、誰にもその苦しさを吐露することができず、人知れず静かに暗い海の底に沈んでいく。ポジティブ思考の強要がもたらす波は二段階で襲ってくるという。一段階目はまず、苦しみを感じている自分自身を嫌悪するということ。二段階目は、そこから抜け出せない自分、ポジティブ思考になれない自分がうしろめたく、罪悪感を覚えるということ。

また、ポジティブになるべきだと周囲に思われているという環境下では、却って人間はネガティブな感情を抱きやすくなってしまうことも明らかにされている。しかし、前向きでいられないのはその人の心の問題などではなく、苦しい時には前向きになれることの方がむしろおかしい。苦しい時には苦しくて当たり前だ。私は少なくとも、ポジティブ思考だけでできている人を見ると、あまりに不自然で息が詰まるように感じ、苦しくなってしまう」。

まず重要なのはこの文章は脳科学ではないということです。ズバリ心理学です。そして精神医学の分野です。無論彼女は心理学者でも精神科医でもありません。

この内容に対して私が思うに、例えば楽観的思考と、ポジティブさを装っている人が混同されていると受け止められるということが挙げられます(※因みにJoyBIzでは楽観をライトビュー、悲観をダークビューと表現しています)。特にポジティブ思考だけでできている人を見ると、あまりに不自然で息が詰まるように感じ、苦しくなってしまうというくだりなど、その人がポジティブな人なのではなく、ポジティブであろうと無理をしている人という偏った見方を感じます。

この方などTVや講演などで人気の方ですから、一般の方に対する影響力はかなりのモノになると思われます。

ともあれ私が懸念するのは、「ポジティブになれないのはいけない的な視点自体がネガティブな思考」だということに思いが至っていないこと。更に「ポジティブという世界観を自己概念、感情、思考などといった分類やそれぞれへの領域別の探究もせずに、ポジネガを単純に二値的に捉えてポジティブということをネガティブに評論するネガティブさに気が付かない論考が与える影響」に配慮がないことです。読む限り思いつくがままに書き綴っていった感があるのですが、その人が著名というだけでそれを基軸に判断をし出す浅慮な人が居るということへどう対処していくか、という現実問題にどのような責任意識を持っておられるのか、少々疑念を持たざるを得ません。

ともあれ、マスコミにはこういったことへの責任意識はしっかりと持って頂きたいと願う次第です。

ショートソモサン②:モメンタムの「ツボ」を押してみよう!

それでは「モメンタム実践法」の続きと行きましょう。今回もモメンタムを高める方モメンタムの発動を促す法の2つです。

まずはモメンタムを高める法です。今回は東洋医学を使った経穴(ツボ)の利用法です。

人には「手の甲を上にして、親指と人指し指の骨が交差した部分から、人差し指へ向かって押していき、痛みを感じるくぼみに合谷(ごうこく)というツボがあります。合谷は全身に365個ある経穴の中でも、最も脳に刺激が伝わりやすい経穴だと言われています。血流試験によっても、右手の合谷を刺激すると左脳の血流、左手の合谷を刺激すると右脳の血流が活発になることが明らかになっています。ちなみに左手の合谷は膀胱機能、右手の合谷は副腎機能と深い関わりがあるとも言われています。

この合谷、痛みに効くというのには理由があります。合谷を刺激すると脳内に「エンドルフィン」というモルヒネの様な物質が大量分泌され、脳が感じる痛みを緩和します。中国では鍼麻酔をする際に合谷のツボが使われています。

この合谷というツボは「エンドルフィン」のみならず「ドーパミン」も分泌します。そして両者はいずれもリラックスを促します。同時に合谷は扁桃体を落ち着かせる一部の脳の血流量を増やすことで不安を癒す作用もします。

モメンタムを発動させるのに「合谷のツボ」を10分グッと押さえ、その後に深呼吸をすると効果が出ます。また合谷をトントンと何回か叩くことで、一部の脳の血流量を増やし、感情や情緒をつかさどる扁桃体の過剰な興奮を沈静化させることができます。そして不安や恐怖、緊張、トラウマといったネガティブな気持ちを落ち着かせ、判断力や創造力を高めることができます。

ショートソモサン③:自己の深い内面にアプローチするヒプノセラピー

次にモメンタムが出やすくなるように抑制力を外したり弱める方法のご紹介に参りましょう。前回規制力・抑制力といった車でいうブレーキのような力の存在とその扱いについてご説明をさせて頂きましたが、この推進力や規制力といった影響力の考え方を「場の理論」とか「力の場の理論」と云います。これは行動科学の始祖と称されるクルト・レヴィンによって確立された考え方です。

今回はモメンタム発動の抑止となっている規制の中でも特に深い心理領域に突き刺さっているトラウマのような存在にまで効果を促す「ヒプノセラピー」という催眠暗示療法を応用した自己暗示法についてお話しをしていきたいと思っています。

日本の場合、一般に催眠というと「如何わしい」という思い込みを持っている方もいらっしゃいますが、催眠とは本来「人にコントロールされたり意識がなくなるものではなく、意図的な集中から高リラックス状態に入ったまどろみを作り出すことを云います。正式には自動的注意集中と云います。これは瞑想と酷似したアプローチ」と云えます。そして催眠療法とは「催眠によって無意識部分にアプローチして心にある障害の真因を探り、それを癒しで解放したり、イメージの転換を図る技法」です。そして自己催眠とは「自ら脳をリラックスさせて、そのままそこで浮かんだことや感じたことを口に出して自問自答するやり方」を云います。

因みに催眠暗示療法は心身医学療法として2018年厚生労働省から保険診療として認可されている医療業界でも正当な療法です。実際、アメリカン・ヘルス誌において発表されたアルフレッド・バリオス博士による心理療法調査による回復率データとして、

精神分析600回のセッション後の回復率38%

認知行動療法22回のセッション後の回復率は72%

催眠暗示療法6回のセッション後の回復率93%

というデータも存在しています。

更に最近レジリエンス開発などでも使われる認知行動療法ですが、考え方を変えることから捉え方を直すというアプローチは、左脳が優位で論理的な方には自分の認知の歪みをうまく捉えられるのですが、論理的でない人や感情が先に立つ人には受け入れ難いアプローチです。そして民衆のマジョリティは後者の方が多いのが現実と云えます。こういった人達に有効なのが催眠暗示療法なのです。面白いことに認知行動が効く論理派には逆に催眠が効きにくいといった裏腹のようなところがあります。前回のアプローチは認知行動をベースにしていますが、自分に合ったアプローチをすることをお薦め致します。私は催眠暗示の方が効果的でした。

さてこのような催眠暗示アプローチですが、概略的には「催眠によって無意識部分にアプローチして心にある障害の真因を探り、それを癒しで解放したり、イメージの転換を図る」といった流れを辿ります。

人の心は顕在的な領域が10%、無意識が90%であると云われていますが、細胞生物学者のブルース・リプトン博士によると、無意識は1秒間に200万の刺激を処理するが、顕在意識での解釈は40が限界なのだそうです。それ位人は無意識層における影響を受けているそうです。

この無意識層に巣くっているのがトラウマや思い込みといわれる想念です。そして行動を規制する原因の多くは幼少のトラウマや原体験的な思い込みのせいが殆どと云えます。そしてそういった弱さや偏見は概ね6歳までに形成されます。その後も15歳位までの強烈な経験が潜在意識に刷り込まれることによってトラウマ的に心理作用します。こういった蓋があるといくら意識的に踏ん張ったり気持ちを切り替えようと気合を入れても効果は出せません。これを解決するには無意識に刻まれた思い込みを転換する必要があります。療法的には退行催眠療法といった物々しいやり方などもありますが、健常人が自分の気持ちをより前向きに活性するための方法としては「自己催眠自己暗示技法」が有効になってきます。その中でも退行両方のエッセンスを取り入れた「履歴追跡法」が効果的です。これは自分のネガティブ原因や動きをとどめさせる真因が「いつ何故そうなったのか」という根本原因時点に自分の内面のイメージを辿らせ、その時のネガティブ印象を現時点での理解力でポジティブに修正するというやり方を行います。

この時アファーメーションという「ポジティブな言葉や表現を繰り返す技法(その応用がペップトークです)」やビジュアリゼーションという「イメージを映画のようにストーリー的に浮かび上がらせる技法」などを駆使します。この説明は次回させて頂きますのでご了承下さい。

ショートソモサン④:自己暗示法の具体的な手順をご紹介

それよりも今回は具体論から入りましょう。ただ本来は自己催眠→自己暗示として2つのステップを経る必要があるのですが、今回は自己催眠は外して自己暗示だけをお話ししたいと思います。自己催眠法に関してはビジュアリゼーションやアファーメーションと一緒に次回ご説明させて頂きたいと思っていますが、それは実は自己催眠から得る心理状態と同じ状態として瞑想による心理状態があり、マインドフルネスの技法を用いることでわざわざ自己催眠の技法をしなくても大丈夫という話もあっての判断です。

瞑想(西洋的には祈り)は脳の思考行動を遮断し、脳幹や海馬の他、集中力を管理する脳部分の動きが活発化させる働きをします。そうして体をリラックスさせ丁度いい催眠状態を同じ心理状態を作り出します。端的に云えばどちらも一種のトランス状態に入るということです。この時人の脳はアルファ波シータ波が中心に流れています。

瞑想や自己催眠は日常身体や心を緩める時間を過ごし、リラックスしている状態を意図的に作り出していたり、公園などで自然に触れて五感を感じたりして頭を休めるといった事前準備をしていると短時間でトランス状態に入りやすくなりますから、そういった習慣も大事になります。

では自己暗示法に話を進めたいと思います。今回のモメンタム・アプローチの大事なポイントは簡単に実施できるということです。このアプローチもその趣旨に基づいて進めていきたいと思います。

①本格的な瞑想や催眠とまで行かなくても、朝起きてぼーっとしている時や、夜寝るまえなどの状態を思い起こし、「ズボラ瞑想(川野秦周先生著):https://www.gentosha.co.jp/book/b11571.html」の各種技術を使ってまずそのつもりになってみて下さい。※最初は上記の時間にやるのも良いです。また単純に一点を凝視し続けるという安直自己催眠法もあります。ものは試しにやって見るのも手ですね。

②次におでこに手を当てながらゆったりと呼吸し意識を内側に向けます。

③そしてパッとしない気持ちや不安な気持ちといったネガティブな気持ちを考えながら、その気持ちがどこから来るのか、いつ始まったのか自分の人生経験をその時々の情景や風景と共にイメージして行きます。そしてチェックしながら時系列的に徐々に遡っていきます。※一回で辿り着けるとは限りません。

④多分あれがきっかけかも知れないといった情景がイメージされたら、何故その時にネガティブを抱いたのかの原因を思い起こしてみます。その時の自分に身も心も戻ってみて思考的に考えるのではなくただ浮かび上がってくる想念や感じたことをそのままに思い浮かべてみます。

⑤出尽くすまでイメージしたら、気持ちを入れ替えて、今の自分の心境を交えながら、かつてのその時その場の気持ちや浮かんで来た内容を整理した上で、その時に感じたことは感じたこととして、理屈で考えた場合、本当に原因はそうだったのか、それだけだったのか、今の自分の理性で多角的に眺めてみます。ある意味現在の自分と小さい頃の自分が協力して問題解決していくプロセスを辿ります。

⑥そして出てきた論理に合わせてこれまでの感情を解放して、それに自己を統合して行きます。

⑦この時、同時にアファメーションを使って繰り返し自分に暗示を入れていきます。まあおまじないのようなものです。「今はとても良い気分。自分も誰も悪くはない。皆自分を守りたいだけ。だから心配はない。もう大丈夫」。この言葉を5回呟いてください。内容的には「世の中に間違いも誤解はない捉え方の違いとズレがあるだけ」という文言が妥当な場合もあります。

⑧潜在意識の声はイメージに表れてきます。フロイトも研究したように「夢」なども潜在意識の声が意識に残像として残ったものです。ですから夢も完全に無視するのではなく、その内容や意味を内観してみて、自分のポジネガの状態やその真相に気づくきっかけサインとして取り上げ、それに対してカウンター的に暗示を入れていくのも一手になります。パッとしない時やそれが続く場合は是非気にして見て下さい。

 

如何でしょうか。皆さんもぜひ一度試して頂けますと幸いです。今回は紙面の都合上これ位で収めます。次回は本来は今回取り上げようと思った「笑う法」や「擬似対話する法」といったアプローチ手法を取り上げたいと思います。

それでは皆さん、次回も何卒よろしくお願い申しあげます。

さて皆さんは「ソモサン」?