• モメンタム発動スイッチを押しやすい状態を作るということが大切 ~ソモサン第219回~

モメンタム発動スイッチを押しやすい状態を作るということが大切 ~ソモサン第219回~

ショートソモサン①:危機感や責任感の背景にあるアイデンティティはどう育まれる?

皆さんおはようございます。

危機感や責任感というのはどういったところから生み出されるのでしょうか。私の場合は父からの影響が強いと自認しています。父は国家公務員という立場にいるパイロットで、長らく航空大学校の教官をしていました(最後は副校長職で退官しました)。ちょうど今「舞あがれ」という朝ドラで舞台となっている学校のモデルです。先週はその中で鬼教官が出てきて、すぐに「出来なければ退学だ」と云っていましたが、現実はそんなことはありません。昔から大学二年間の教養課程を経た後(一時期は高卒の時もあったようですが)、かなりの競争率で再度入試を経てきた学生さんたちに必要以上に手厳しい扱いはしませんし、主人公のように公立大学がモデルとなっているようなところで、しかも理系からの学生さんがあのような体たらくなわけもありません。何よりも当時(平成初期~中期)の航空界は、航空会社の方は色々大変でしたが、パイロット不足でそんなに邪険に扱う道理もありませんでした。

しかし劇中の中での厳しさは当然で、私も幼少期に人(しかも大勢の人)の命を預かる心構えは、日常から言い聞かされていました。特に私が幼少のころ(1960年代)は航空大学校は立ち上げ時期で、教官の多くは前身の逓信省飛行学校出身の猛者ばかりで(予科練ではありません)、少し終戦が遅れていたらやはり特攻かという立場の人たちでしたので、誰も肝が据わっていました。更に航空大学校でも二度ほど墜落があり、死者が出たこともありますし、他にも不時着といった事故もあって本当に完ぺきな安全な世界ではないわけです。私も父がその事故に巻き込まれそうになって(予定では搭乗するはずだった)、授業中に呼び出しを受け、夜半に無事が確認されるという経験もしています。学生さんたちも本当に猛者が揃っていて所謂バンカラな風潮でしたから、劇中の様なエリート然とした空気感ではありませんでした。実際学生さんからは「今日は教官からレシーバーで叩かれました。危うく事故りかけて、それに気がつかず、バシッとやられた後、『頭が痛いだけで良かったな、死んでいるよりも』と云われてハッとした」などといった後日談を飲み会で教えて貰ったこともありました。今ならば巷にそれを聞いてハラスメントと感じる人も少なくないでしょう。

そういった厳しい考え方や生き様を見続けてきましたから、結構責任感や危機感に対しては敏感なのだと自銘はしているところです。中学校で視力を悪くしてその道は断念することになりましたが(今ではコンタクトレンズで可能になったらしいです)、どこかに魂だけは残っているのでしょう。

親の影響は大きいものです。自分がなく、他人特に偉人や権威に頼ってべき論を吐く先週の様な人も、それを仕込んだ親自体がそうだということも少なくありません。その場合は、元より親自体が自立を経験していませんので、子供に自立を教えられないのは道理です。むしろそういった親の姿を反面教師に自立しているケースを目にするのはどこか勿体ないように思うところがあります。不思議ですがそういった人(親)程武勇談や自慢話をすることで自己正当化を図ることが多い印象です。そういった年の取り方をする人を見ると物悲しい感じがするのも確かです。

そして自分がないという張本人はもっと悲劇です。とにかく誰か権威に頼ってしか生きられないからです。こういう人は権威を妄信します。検証するフィルターがないから肩書などにコロッと騙されます。そして甘言に弱い。本当に関わってくれる人は厳しいのですが、それが分からない。そして常に自分をヨイショしてくれる人、甘やかしてくれる人を追い求め、他力的に自分をポジティブにしてくれる状態ばかりを求めてさ迷い続けます。そうして真意を確かめる努力や研鑽をしませんから、同じことを堂々巡りさせます。そして目先や上辺で自分が分かったような気になったり、うまく乗せられて利用される人生を突き進むことになるわけです。敵と味方も分からない。ずっと不幸感とネガティブ意識が付きまとい、それに苛まれることになります。問題はその不幸感やネガティブを他者の責任にして悪気を振りまくことです。全く困ったものです。

ショートソモサン②:まずはアイデンティティを0から1へ

この自分というアイデンティティを持つ、ということがモメンタムにとって最も重要なファクターになってきます。例え1であっても自分がある人は掛け算的に存在を倍加させていくことが出来るのですが、ゼロには何を掛けてもゼロにしかならないからです。-1は迂闊に掛け算するとマイナスが倍加するので厄介ですが、例えマイナスでもうまく掛け算をすれば存在を役立たせることは可能です。ともかくゼロはどうしようもありません。

このアイデンティティを持つというのが、モメンタムを発動させる上での条件、①日常スイッチが押しやすい状態を作る、ということになります。この状態とは自信を持った状態を作る、ということです。松下幸之助は「自分は自分である。何億の人間がいても自分は自分である。そこに自分の自信があり、誇りがある」、スティーブ・ジョブズは「他人の意見で自分の本当の心の声を消してはならない」と、自分を信じる大切さを語っていますが、人においての存在、アイデンティティとは、「自分は自分」「「自分にはできる」「自分は成長できる」と思えるという意志を自分の心に芽生えさえることから始まります。それが1です。ポジティブへの第一歩です。

【自分を確立する習慣】

① 何事もやってみなければ「自分に合っているかどうか」の判断すらできないものです。自信がある人は、常に「やってみたいこと」を探しています。そして「やってみたいこと」を見つけると、どんどん挑戦していきます。少なくとも何もしないよりは、何かしらの収穫があるものです。

② 自信がある人というのは、多少のことでは動じなくなる・気持ちの切り替えが早くなるので余裕があります。そしてトラブルに遭遇しても、実体験や努力を積み重ねていることにより「自分なら対処できる」と思えるのでスムースに動けます。それが問題を解決するのが殆どです。

③ 自信がある人は、「それだけ努力をしている人、まじめで仕事に熱心な人物」という印象を与えます。それによって他人から信頼されやすくなります。これはビジネスパーソンにとってはとても重要なことです。

④ 「ここぞ」というときに、自信がない状態で臨むとたいていうまくいきません。緊張で体が萎縮し頭がうまく回らないからです。また自信なさげな様子は相手に不安感を与えるので、印象もよくありません。自信があると自分のパフォーマンスを最大限に発揮できます。

【自信を確立する習慣】

ではどうすれば自信は身についてくるのでしょうか。

①気をポジティブに転嫁することに取り組みます。それには、どんな小さなことでもいいので、毎日生活する中で“感謝されたこと”を記録してみましょう。同時に、なぜ感謝されたのかも一緒にメモしましょう。ありがとうの理由の中にこそ、自分自身の強みがあります。自分自身が自覚していない強み・得意分野を見つけるのに役立つ方法です。

➁自分の強み・得意分野を仮にでも想起したら、その強みを絞って拘りのレベルまで引き上げましょう。得意なことのほうが成長は早く、結果を出しやすいためです。強みを持つことで、何かに失敗しても「私にはこれがある」「大丈夫」と思う余裕が生まれます。

③拘りのゴールに向けて辛抱できるように、道のりをなるべく小さく区切り、スモールステップ方式で目標を設定することが達成を近づけます。ステップの段差が低いほど必要な努力は小さくて済むため、失敗しづらいというメリットがあります。そして小さな達成感は多く挫折感が少ないので、自己評価を下げにくい方法です。

④自分のない人は共通して自己評価が低い人です。同時にそういう人は自分に対しコンプレックスを抱いていることが多いものです。それが自信のなさにつながることが多いため、まず自信をつけようと思うと「コンプレックスの克服から」と思いがちです。しかし実はその発想自体がネガティブなのです。人には「変えられるもの」と「変えられないもの」が存在します。変えられないものの代表格は「過去」です。過ぎてしまったことは、どんなに後悔してもどうすることもできません。

変えられるものは「人の行動」「現在」「未来」です。過去は変えられませんが、現在からなら変わることはできます。過去を前提に動きを起こそうとする限り、動きは起きません。過去に目を向けるのではなく「これからどうするか」に目を向けましょう。

⑤謝意を示されて嫌な気持ちになる人はいません。また、人にきちんとお礼が言えるような人物を嫌う人も少ないものです。「ありがとう」と言えるようになれば、あなたは周囲の人から大切にされるようになるでしょう。人に何かしてもらったら、きちんと「ありがとう」と声に出して伝えましょう。それを細目にやりましょう。

こういった取り組みを地道に繰り返していますと、不思議なくらいに自信の種が生まれてきます。多くの部分は他者が盛り上げていってくれます。まさに捨てる神あれば拾う神あり。世の中はバランスですね。こうして①日常スイッチが押しやすい状態を作る、ということを醸成していきましょう。信ずる者は救われんです。

先の自分がない人もきちんと観察していると、➁と⑤は出来る人でした。私はその可能性に期待して今後の壮健を祈っている次第です。

ショートソモサン③:行動から自信を生み出すハイパワーポーズ

さて実のところでは①日常スイッチが押しやすい状態を作る、にはもう一つ「日常スイッチを押しやすい環境を整備する」という要素があります。正直是もお話しておきたいのですが、長くなりますので、それは次回に回すとして、今回の最後は➁高い熱量を引き出す術を知る、について触れておきたいと思います。

自信というのは、「大丈夫、できる!」と言い切れるまでに努力を積み重ねた証拠でもあります。だから思わず知らずその気持ちは姿勢や態度に出てきます。これを逆手に取って、行動が気持ちを生み出すという技術の一つをご紹介させておいて頂きます。それは「ハイパワーポーズ」という技法です。すぐに取り入れられるやり方の典型です。

ハイパワーポーズとは「自信に満ちたポーズをとることで、実際に心に自信がわいてくる」というもの。顔を上げ、胸を張り、肩を後ろへ引いた姿勢のことを指します。例えば、

– 腰に手を当てて仁王立ちした「スーパーマンのポーズ」

– テーブルの前で立ち上がって右手を握りしめて振り挙げたポーズ

などが、代表例です。

人はハイパワーポーズをとると、自然と心に勇気がわいて自信を持つことができます。ニュースなどで、大統領や首相が腕を開き、胸を張っている様子を見ることができます。顔を上げ、胸を張り、腕を広げている姿は、堂々としていて自信に満ちて見え「なるほど国を代表する人だな」と思わせます。

逆に「ローパワーポーズ」という姿勢もあります。これはハイパワーポーズの逆で、うつむき、肩を内側に向け、背中を丸めるポーズ。うなだれたり、肩を落としたりしている様子は自信なさげで、逆に「大丈夫?」と声をかけたくなります。

こうしたポーズが明確に心身に影響を与えることは、心理学の実験によって実際に明らかになっています。ハーバード・ビジネス・スクールの准教授であるエイミー・カディ氏が2012年にその実験結果を発表しました。

これによると、ハイパワーポーズをとったグループは

– 自信を高めるテストステロン(いわゆる男性ホルモン)が19%増加

– ストレスを感じさせるコルチゾール(副腎皮質から分泌されるステロイドホルモン)が25%減少

した一方、ローパワーポーズをとったグループは

– テストステロンは10%減少

– コルチゾールは17%増加

したことが判明しています。

つまり、自信に満ちたポーズをとると、実際に自信を高め緊張を和らげる状態になり、逆に自信のないポーズをとり続けるとさらに精神的な緊張が高まる、ということが実証されたのです。

また、カディ氏は、ハイパワーポーズをとるグループと、ローパワーポーズをとるグループにそれぞれ2分間ポーズをとらせたあと、精神的に負荷がかかる面接を受けさせました。

その後、面接を受けたグループとは別のグループに面接風景を見せ、「誰を採用したいか」アンケートをとったところ、「採用したい」とされたメンバーは全員、ハイパワーポーズのグループでした。

この結果についてカディ氏は、「自信のある態度が評価を高めた可能性がある」と述べています。

つまり「姿勢そのものが精神状態に影響を与える」と言えるでしょう。

これは何となく心が折れそうな時にも効果があります。

例えば机に向かっている姿勢はうつむきがちで、肩を落とした姿勢になります。いわゆるローパワーポーズの姿勢になるので、その姿勢が続いていると、気持ちも内向きになりやすいです。そんな時はハイパワーポーズをとって、内向きな気持ちを中和させるのが効果的です。自信をなくしたときは、速やかに回復することが大切です。ともあれ皆さん、ちょっとやってみて下さいますと幸いです(ハイパワーポーズは20秒続けてみてください)。

ということで、次回からはこういったポイントを徐々にご紹介してまいりますので、乞うご期待下さい。

では次回も何卒よろしくお願い申し上げます。

さて皆さんは「ソモサン」?