• ポジティブ心理学と内観技法を繋ぐマインドフルネスとは何か~LIFTプログラム ⑩~ソモサン第191回

ポジティブ心理学と内観技法を繋ぐマインドフルネスとは何か~LIFTプログラム ⑩~ソモサン第191回

ショートソモサン①:Joyを創造していくためのハードルをどう乗り越える?

皆さんおはようございます。

ボンズ・アプローチの理論的基盤は行動科学を活用した「行動」からの「感情」へのアプローチとそこからの「認知」変容ですが、もう一つ重要な背景があります。それはアプローチの目的があくまでも人と組織のポジティブ状態を創出すると言うことに関係します。ところでポジティブとは一体どういった状態を言うのでしょうか。

JoyBIzでは創業以来会社名に由来するJoyな状態とは何かを探求してきました。そういった中で出会ったのがポジティブ心理学でした。

ポジティブ心理学の前提は「個人や組織、社会の繁栄と発展を促すような精神面での強みや長所を研究する学問であり、精神疾患のようなネガティブな状態を治療することよりも、通常の人生を送っている人がそれをより充実したものにする(ウェルビーイング)することを目的としています。この考え方はまさにマズローの言う第三の心理学である「人間性の心理学」にある「自己実現」を焦点にしています。そう内発的動機づけの心理を研究する学問です。

この心理学はペンシルバニア大のセリグマン博士による学習的無力感と楽観主義に端を発します。学習的無力感とは長期にわたってストレス回避が出来ない環境に置かれた人は、「何をやっても無駄だ」とばかりにその状況から脱しようとする努力すらしなくなる、といった現象です。これは行動分析学における嫌因子に基づいた条件付けの考え方がもとになっています。

私は昔「七人の侍」という黒沢映画を観た際に、「何故あの農民は野党に決起しないのであろうか。数では勝るのに」といった素朴な疑問を持ち、以来そういったことに強い関心を持ってきました。企業の経営において、やる気のない社員の動きに通じるものがあったからです。これは無力感だけではなく、「否定的な幻想思考」や主に原体験からのネガティブ思考の原因とも共通しています。

行動分析学ではそれを生理的な反応の視点で捉えていますが、学習理論は行動分析学のような生理としてのナチュラル(先天的)反応だけではなく心理的なアクワイアード(後天的)反応も対象としています。セリグマン博士の行った研究による見解はまさにそこを射抜いた内容だったわけです。

現在オックスフォード大のフォックス教授夫妻などによる「楽観主義」の研究などで学習的無力感は遺伝子による生理的(先天的)なものではなく、後天的な要因が大きいことが証明されてきています。つまりネガティブ思考は修正可能であると言うことです。

ただ最近巷で取り組まれているポジティブ・シンキングは認知を思考法で矯正しようとする取り組みですが、これは時に認知自体を歪めることがあります。楽観的に捉えようとするあまり、現実を正確に捉えられなくなる「楽観主義バイアス」に捕まり、返ってポジティブな妄想を強めるといった弊害も見られ(私の周りでも「自分は正しいんだ」とか「自分がポジティブと信じたい」引いては「自分の意志によって無限の可能性は生まれる」と思うあまりに現実を直視受容できない人がウツやネガティブ思考を悪化させるケースがあります)、不幸せな人に対してのカンフル剤としては有効ですが、その度合いが制御しきれないアプローチとして、手放しに扱うのは甚だ疑問な手法と言えます。皆さんも手法としてのポジティブ・シンクと学問としてのポジティブ心理学や楽観主義は全く別物であるということはくれぐれも認識しておく必要があります。

ポジティブ心理学は主にチクセントミハイ博士のフロー研究で社会的に知られることになりましたが、ボンズ・アプローチとしては、特に「リーチアウト行動」においてバンデューラ博士の自己効力理論と「目的意識や責任感」においてデシ&ライアン両教授の内発的動機付け、そして「ウェルビーイングや対人促進」においてフレデリクソン博士のポジティブ感情の研究を参考に実践応用と技法のブラッシュ・アップを進めています。また知見を高めるべく、学際として日本の研究者である宇野先生と交流をしながら研鑽している昨今です。その成果は主にモメンタムを重視したレジリエンス・プログラムやコギャル法(対人認知相違調整手法)、そしてブリコラージュ思考法といったLIFTプログラム全般に反映されています。

このようにJoyBizでは思想概念としてポジティブ心理学、実践としてアプローチ法として行動理論による行動体感法を駆使してボンズ・アプローチを組み立てているのです。

ショートソモサン②:「感情」という環境要因が企業の先行きに与える影響とは?

ところでネガティブ感情の環境といえば、先日感慨深いことがありました。テレビで非常に活性した組織環境として地方のある調味料メーカーが取り上げられていたのです。内容は入社式においてのユニークな取り組みといったもので、そこでは従来の型通りの入社式にはない、自前の演出による「新入社員による親御さんへの感謝」と言うプログラムが紹介されていました。例えば大学で落研にいた人は入社式の壇上で創作落語で親御さんにメッセージを送るといった内容です。親御さんはそれをネット配信で視聴するといった込み入った演出があり、非常に感激をしておられたり、新入社員も活性して始終和やかな雰囲気で行事が進行していました。そのやり方を推進していたのは若手の社長でした。それから1週間後に別の番組で企業対抗の商品ランキングというのが発表されていて、その会社の商品がダントツの第一位として紹介されていたのです。私は「なるほどなあ」と感心していたのですが、その時あることに気がついて愕然としたのです。さあ話はここからが本番です。そのランキングに以前ならば必ず1位になっていた大手の調味料メーカーの商品がベスト5にすら入っていなかったのです。実は私は両者のメーカーに関わっていた過去があります。企業の規模や歴史から言っても当然1位に入って順当なメーカーが姿すら見えないのです。忖度のない時のマスコミは辛辣です。話題の端にも登ってきませんでした。一体何が起きたのでしょうか。

私が感慨を抱いたのはその時です。もう30年も前にその会社にお世話になった時は飛ぶ取り落とすトップメーカーでした。会社にお伺いした時もいつも社内は明るく上品で、かつアットホームで行くのが楽しみな1社でした。

ところが仕事の関係上お付き合いが離れ、ひょんなことから5年前に訪問したときにその雰囲気のあまりの変化にショックだったのを思い出したのです。もう25年も経っていますので私を覚えている人もいない中だったのですが、以前の経緯をお話ししますと担当の部長は理解を示してくれ、その時に心に染みる話をしてくれたのです。その会社は今から15年ほど前に乗っ取りの危機にあったのだそうです。乗っ取りは何とか防げたのですが、以来社長が非常にネガティブになって社内の雰囲気も変わってしまったと言うのです。そして乗っ取り対策に没頭するように全ての思考は論理一辺倒で、感情は度外視された風土に変貌していったと言うのです。実は30年前に私が会っていたのが今の社長なのです。当時は課長でしたが、実に聡明で人の良い人でした。私も悩みの相談をしたり、その際には鰻をご馳走になって色々なことを教えて下さった人でした。「人が変わる」と言うのはこう言ったケースを言うのでしょう。社員は恐怖政治に戦々恐々とするあり様になっていました。まさにネガティブ風土の会社状態です。

ネガティブな空気の中で創造力や自己責任意識は作動しません。1位になった会社と5位にすら入れなくなった会社。そこには他の要素も多々あることでしょう。しかし組織や人に潜む感情的側面。決して無視できないことだと実感した昨今でした。特にトップの器以上に会社は育たない。トップの影響は絶大です。

ショートソモサン③:ネガティブを誘因する組織内の「パワー」

このパワー論は必ずしもトップに限ったものではありません。先週NHK大河ドラマで北条政子が「許さない」と言った一言で功労した兵士が惨殺されるシーンがあり、それに対して北条義時が「将軍の御台所という立場と発言に責任を持て」と言い放った場面がありました。

私の近場でもこういった立場とその重さを弁えずネガティブ発言をしたり、体制避難をする輩がいますが、多くの場合マネジャー経験がなく、上の立場の意味や責任を体験していない人が名目上立場を得た時にやらかすケースが多いように感じます。中でも「自分自分」と育てられたというか自己中という幼児性が抜けきれない人や承認欲求が強い人に傾向を強く見て取ることができます。そういう人は自分しか見ていませんから人に与える影響が想起できず、自分の声や言葉の重みが分からないのです。NHKの大河では源義経がまさにそう言った振る舞いをしていますね。そうして組織をガタガタにしてしまっても自覚がないので始末に負えません。振り子の原則という考えがあります。振り子の支点を少し揺さぶっただけで端は大きく振れると云う原理を影響力に例えた言葉です。これがネガティブ感情というものが生み出す力の恐ろしさなのです。

ボンズ・アプローチでは大きく扱っていませんが、LIFTプログラムにおいては大きな理論背景となっているリーダーシップ論では中核的なテーマになっているパワー問題。マネジャーの方はもっと自分の立場やそれに伴う言動や行動の責任に関してより注深くなってもらいたいものです。パワハラも殆どの場合やる側では無自覚な場合が多いですが、それもパワーという概念への無知蒙昧さが原因になっています。悪気はなかったでは済まされません。例え社長と言えども人間という存在に対しては平等です。これはまさに知力ではなく、人間力、人間性の面での問題です。

いずれにしても組織行動に影響する感情的側面、皆さんにおいてはもう十分に認識して頂けていますでしょうか。

ショートソモサン④:マインドフルネスには落とし穴もある

それでは今回の最後は内観とマインドフルネスについてです。

これまで何度もテーマに挙げさせて頂いてきたマインドフルネスですから皆さんも耳タコかもしれませんね。詳しくは平素交流させて頂いている横須賀にある林香寺の川の住職の書籍を読むのが一番手っ取り早いのですが、手抜きと言われると何ですので少しだけおさらいと行きましょう。

「今、この瞬間の体験に意図的に意識を向け、評価をせずに、とらわれのない状態で、ただ観ること」を意味する マインドフルネスは、もともとは禅の中にある瞑想法を精神疾患の治療に応用したところから科学的研究されるようになりました。初めはカバッド・ジン博士が医療としてストレス低減法として取り入れました。その後その感情の鎮静効果や意識のポジティブ化での効果などから一般的な日常行動の内観技法として企業などでも取り入れられるようになりました。特に Googleの研修にも取り入れられたのが大きく、「寛大な精神を獲得する」「協調性を高める」とった効果があるとして大きな注目を集めている技法です。マインドフルネスは「ストレスを軽減し、自尊心を高め、精神疾患の症状を軽減することができる」とする 研究結果によって科学的な技法として認識されています。現在では医療保険の適応内容にもなっています。

一方で欧米では「 マインドフルネスには仕事のモチベーションを下げる効果がある」といったネガティブな意見も存在しているのも事実です。その理由としてアメリカでは、マインドフルネスはアメリカとは文化が大きく異なるアジアで生まれた考え方であり、「アメリカ人は自らを個人的な枠組みに当てはめて『私が求めるもの』『私は何者なのか』といった考え方をするが、対してアジアの人々は自らを集団的な枠組みに当てはめて『我々が求めるもの』『我々は何者なのか』といった考え方をする。水の種類が異なると料理の味が変わるのと同じように、人々の考え方の違いは、マインドフルネスの効果に影響を与えている可能性がある」と言うことが、加えて「同一文化に所属する人でも、考え方には違いが生じる」と言ったことが挙げられています。そしてそういった違いは「自らを個人的な枠組みに当てはめている人々にとって、マインドフルネスは彼らを個々の目標や欲求に集中するように駆り立て、彼らを利己的にさせるように働く」と言った具合で、考え方の違いによるマインドフルネスの効果の変化が議論されています。その為欧米では「マインドフルネスは良い影響を及ぼすこともあれば、悪い影響を及ぼすこともある。マインドフルネスを実践して良い影響を引き出したい場合は、自らを集団的な枠組みに当てはめることを意識するべきだ」と議論されているのが実際です。このことは日本が良くやる欧米技法丸呑み導入に対して警鐘を鳴らす内容の一つと言えます。ただマインドフルネスは元々アジア、特に日本で開発され発展した技法です。JoyBIzが Googleの研修などの模倣や迎合ではなく、直接禅の瞑想法を持って内観を行おうとするのはそういった原点に着目するからです。

因みにマインドフルネス(mindfulness)という語は、仏教における「念(サティ)」の英訳語で、「心にとどめておくこと」「気が付くこと」「注意すること」などと訳されています。

つまりもともとは仏教の用語で、東南アジアやスリランカなどの上座部仏教で行われている瞑想法に由来しているわけです。それがアメリカを中心に、一般の人でも実践できる形にアレンジされ、効果が科学的に実証されるとともに急速に広まっていたという経緯があります。

ショートソモサン⑤:マインドフルネスと禅とは違う

そのやり方は、基本的には坐禅と同じです。静かに座って、自分の呼吸に意識を集中させる。気が散って他のことを考え出したら、再び意識を呼吸に戻す。簡単に言えば、そういうことになります。

実験によれば、マインドフルネスによって気持ちが落ち着いただけでなく、免疫機能が上がったことも科学的に示されています。

ところで禅とマインドフルネスは、瞑想するということは同じであっても、本質が全く異なっています。マインドフルネスによって不安な気持ちが解消されたり、身体が健康になったりするというのは、とてもいいことです。今企業が取り入れている欧米流れのマインドフルネスの思想は「効果があるからやろうというゲインの考え方」になります。何かご利益があるから走る、と言ったような考え方がマインドフルネスの欧米での用いられ方です。しかし禅はそのような考え方を採りません。つまり、一番根本にある瞑想する動機、目指すべき方向が、禅とは全く異なっています。瞑想するために瞑想するのです。禅では結果や利益を目的にはしません。瞑想していたら自然にそうなっていた、ということでしかありません。物事を究めるためには、目の前にある短絡的な利益を求めるのではなく、それを実践すること自体が目的にならねばならないのです。初めから目的を想定して取り組むのではなく、取り組んだ結果何なのかを実践することから自分で見極めようというのが禅の修行者たちのそもそもの動機です。その先に何があるのかはわからない。でも何かがあると信じてまずは行動する。禅の本質です。そして、もし何かを悟ることができたとしても、それで満足して終わってはいけないと禅では考えます。大切なのは、悟りを得たらその経験を利他として世のために使っていくこと。禅の修行はあくまでもその手段にすぎないのです。そういった意味で、自分の集中力を高めたり、幸福感を得たりすることが目的となっているマインドフルネスとは、考え方が根本的に異なります。

ショートソモサン⑥:なぜ瞑想が内観に有効なのか?~日常で実践する方法~

ここには功利主義的な考え方のもとで得られた幸福感というのが長く続くものなのかどうか、ということが潜んでいます。確かに瞑想して実験として脳の活性度などを測定すれば、科学的に見てそのときは「幸福な状態」にあるといえるのかもしれません。しかし、それがもし短期的なものであり、心にしっかりと根付くものでないのであれば、根本的な解決にはなりません。

人間は欲深い存在です。そのときに幸福感を得られたように思えても、ある種の達成感を得ると今度はそれでは満足できなくなってきます。すると、その後には、同じことをやっても同じような幸福感が得られるかどうかはわからない。マインドフルになろうとすればするほど、自分への執着が強くなり、却って逆効果になることも多々あります。マインドフルネスを実践しながら、カウンセラーのお世話になっている、などという笑えないケースもあるそうです。

ここにJoyBizのプログラムへの思想観、哲学観があります。欧米のマインドフルネスは先のポジティブ・シンクのような手法としての取り組みです。それではポジティブ心理学がいうような楽観主義の境地、Joyの意識とは無縁な取り組みになってしまいます。ボンズ・アプローチは感情の変容を通して最終的には認知の変容、例えばアンコンシャス・バイアスの調整レベルにまで効果が達せられなければ意味がありません。

このことはマインドフルネス瞑想が何故ストレスを低減させたり、ウツを防止したり、自信や意欲を回復させる、つまり心をポジティブ状態にさせられるのか、という効能の本質が関わってきます。脳科学でマインドフルネスは変性意識に影響をすると言うことが知られています。人は身体や呼吸を整えて、ありのままの状態に集中をしてその体験を素直に受け入れた心境になった時に心が整って、意識が囚われから解放されて観念が流動的になります。それによって認知のパターン、観念の癖が転換しやすくなるのです。

実はこれは麻薬のような薬によっても得られることが分かっています。それ故1960年代以降安易に変性意識を得ることからポジティブで創造的境地に至る手立てとして芸術家や音楽家を中心に染まってしまうケースが増加しました。しかし当然無理に行うので依存症のような歪みが生じるのは間違いありません。その依存症は結局は薬では効能が短期にしか保てないということにあります。マインドフルネスも同様です。

JoyBizが目的としているのは持続的なポジティブ意識の醸成です。その為の内観です。マインドフルネス自体ではありません。マインドフルネスは内観を行う瞑想法として有効だと認識する導入手法ですから、欧米式のマインドフルネスでは限界があるのです。

禅における瞑想法には2つの世界があります。一つがサマタ瞑想です。これがいわゆるマインドフルネス瞑想です。坐禅として姿勢を正し、呼吸法を使って心を空にして自律神経の調整を行います。でも実はこの瞑想は禅における真の瞑想の導入に他なりません。禅の瞑想はヴィパッサナー瞑想と言って、これが内観的な瞑想法になります。自分の身体や気持ちをメタ認知的に点検して行き気持ちをポジティブに転換していくアプローチになります。

禅では有効にヴィパッサナーに入るためにサマタをするという段階を踏みます。体感技法たるサマタ瞑想ですから、それはそれでも一定の心の平静は得られます。また人間は本来ポジティブな存在ですから平静になればポジティブ心理には自然になれるのは道理です。でも更にそれを永続した状態とか更に高めていくにはヴィパッサナー的に内観することが重要なってきます。

私がボンズ・アプローチで目指すのはヴィパッサナー的な内観による気付きや変性意識の開花なのです。サマタとヴィパッサナーは目的が微妙に異なります。ポジティブ意識の醸成や変容には両者の組み合わせが非常に重要になります。サマタが呼吸の出入りに意識を集中させることから感情を穏やかにし、感情に翻弄されることなく穏やかな気持ちで適切な判断が出来るようにする手法であれば、ヴィパッサナーは自分の行動や思考、感覚を注意深く認識することから、自分の感情の動きや意識のあり様をはっきりと自覚できるようにしたり、ポジティブ化する手法です。

必ずしもサマタをやらないとヴィパッサナーが出来ないわけではありませんが、サマタをするとヴィパッサナーの効能が大きく高まるといった関係にあります。

川野さんはまずは気軽に瞑想をすることを提唱して、さまざまなマインドフルネスのやり方をまとめて出版しています。川野さんの本ではサマタやヴィパッサナーといった小難しいことは避け、また坐禅のみならず手軽にどこでも瞑想することを考慮して、誰でも日常的に瞑想できる手法を紹介しています。皆さんも是非一読して実践して見てください。

私の方でも少しご紹介しておきましょう。

サマタにおけるマインドフルネスはチクセントミハイが言うところのゾーンの境地に近いものがあります。「今」という瞬間に集中している心の状態で、究極に集中した状態をゴールとしており、スポーツ選手がよくフロー状態とか、ゾーンに入ったなどと言うけれど、まさにそれがマインドフルネスのゴールと同等と言えます。時間を忘れて、今だけに集中して研ぎ澄まされた状態。今という瞬間を意識し、全力を注ぐ状態にあることです。

私達は、常にありとあらゆる情報を吸収し、一日中頭の中でありとあらゆることを考えています。今日やらなくてはいけないこと、来週のスケジュール、時には過去への反省や後悔など、私達のマインドは常に飛びまわっています。ご飯を食べながら、明日のミーティングのことを考えたり、常にスマホを使っていたり。私達のマインドは常に働き、いろんな情報が入ってくる現代、常に刺激を受けているのです。

それを、今という瞬間に集中することで、脳を休めさせ、リフレッシュさせるわけです。マインドフルネスと聞くと、「瞑想」をイメージしてしまい、ハードルが高いと思われがちですが、それだけではありません。大切なのは習慣づけること。短い時間でもいいので、とにかく毎日やることで、マインドフルネスの効果が現れると言われています。マインドフルネスを簡単に実践できて、習慣づける方法をお教えします。

【実践方法紹介】

食事でマインドフルネス

毎日必ず摂る食事でも、マインドフルネスは実践できます。テレビやスマホ、音楽を消して、今食べている食事だけに意識を集中させ、食べ物を口にいれ、噛み、味わい、飲み込むという一連のプロセスを一つ一つ意識します。食べ物を口にいれたら、その都度お箸を置き、味わうというだけでも瞑想と同じような効果が得られ、暴食を防ぐのでダイエットにも最適です。

お風呂でマインドフルネス

1日の終わりの疲れを癒してくれるお風呂は、体の心もリラックスさせてくれる自分だけの時間。私達の普段の生活では、ストレスを感じる場で活発になる交感神経が優位な状態がほとんどです。1日の終わりにお風呂に入ることで、交感神経の緊張は緩み、副交感神経を活発にしてくれるので、自律神経のバランスを整えてくれる効果がありますが、実はマインドフルネスの効果も同じ。スマホも使えないお風呂の中で目を閉じて、3分間だけでも呼吸に意識を向けるだけで、副交感神経が優位な状態にスイッチし、夜もぐっすり眠れます。

お皿洗いやお掃除でマインドフルネス

お皿洗い、窓拭き、雑巾掛けなど、汚れを落とすという行為はマインドフルネスにぴったりです。お皿洗いは特に、洗剤の泡立ちや、水の温度など、五感を刺激する要素が多いので、それぞれの感覚に意識を向けることで、家事をしながらマインドフルネスを実践できるので一石二鳥です。

歯磨きや顔洗いでマインドフルネス

義務的にこなしていた歯磨きも、意識を向ければマインドフルネスタイムになります。歯を一本一本磨くことに意識を向けるだけでいいのです。短い時間でも、1日何度か実践できるのもいいところです。

アプリでマインドフルネス

マインドフルネスを習慣づけるために、ゲーム感覚で実行できるアプリも効果的です。「Headspace」などは、ポップなキャラクターが1日10分のマインドフルネスをサポートしてくれます。また、瞑想とはどういうことかも、わかりやすく可愛いビジュアルで説明してくれるので、瞑想入門にオススメ。全編英語ですが、ナレーターであり、設立者のアンディーの声が、何より心を落ち着かせるポイントです。「英語はちょっと苦手」という方には、「Zenify」がオススメです。設定した時間帯に、今に意識を向け、マインドフルネスになれる課題が送られてくるので、短い時間で簡単に続けられます。

Apple Watchでマインドフルネス

Apple watch OS 3から標準で搭載された「呼吸(Breathe)」アプリは、 1時間に1度呼吸を意識することをリマインドしてくれるので有効です。忙しくてマインドフルネスの習慣を忘れそうになっても大丈夫です。1分から最大5分までセッションの時間も選べ、呼吸をすることを実践するだけでいいので、どんなに忙しくても言い訳できません。短い時間でも、ゆっくり深呼吸をするだけで、頭と心をリフレッシュできます。

 

次回は行動科学やポジティブ心理学における感情への具体的アプローチ法や対話法と内観法が混ざったアプローチであるナラティブ技法などについても触れて行きたいと考えています。

 

では次回も何卒よろしくお願い申し上げます。

 

さて皆さんは「ソモサン」?