テレワークの良し悪しを知情意という視点から再考してみると

師走に突入し、本ブログもあと2回を残すだけとなってきました。ここに来てコロナが拡大し始め、小売り関係の方々はいかばかりかと心痛するところです。巷では忘年会までもがリモート形式という会社も出てきているようです。

せいぜい5名程度ならば良いのですが、大勢だと横も見えず気も伝わらずで、かえって辞めといたほうが良いのに、と思う昨今です。今回はそのリモートについて綴ってみたいと思います。

 

リモートは効率を上げるが活力は奪う・・・

先だってベンチャー企業を経営する方から興味深い話を耳にしました。加藤さんという社長さんは「社員の生活を守るためにテレワークをやめることにした」そうです。加藤さんの会社では他に漏れず当初はテレワークを推奨していたそうです。ところが緊急事態宣言後、批判を覚悟で「原則出社」を決めましたのだそうです。

 

その理由は、「組織力の低下による業績悪化を恐れての決断」だそうです。現状、コロナ禍でテレワークがトレンドになり、特に東京では何カ月間もずっとテレワークのままという会社も珍しくない状態になっています。

なかにはこの際とばかりに業務改革を前面に出して、全社員をフルリモートにして、オフィスを解約してしまった会社もあるようです。

しかし加藤氏はこう考えているそうです。「非常時に一時的に導入するだけなら良いですが、ずっとテレワークを続けていると中長期的には組織が崩壊する」。

 

日常の業務に必要なやりとりや、情報のインプットなどの「作業」ならテレワークでも問題ありませんが、テレワークが長期化すると、信頼をベースにした深い学びや価値創造などの「仕事」は必ずレベルダウンすると思うからなのだそうです。まさに知情意の三位一体での人間行動に対する考え方の実践と云えます。

加藤氏は仕事でビデオ会議からメールまで、あらゆる効率化のためのツールは使っているそうです。ビジネス自体が『売れるネット広告』であり、会社でもWEB会議やWEBセミナーを実施することで、商圏が広がったり移動時間が減ったりするなどの恩恵があったのも事実だったそうです。それでも、それに依存してテレワークをずっと続けていると中長期的には組織が崩壊し業績は下がるとみているそうです。

加藤氏は続けます。

「京都大学総長である山極壽一先生の有名な研究結果がありますが、人間には『五感』があります。

『視覚』『聴覚』『嗅覚』『味覚』『触覚』です。

 

言葉ができる以前、霊長類、特に人間はこの『五感』を通じて身体的に繋がっていました。テレワークではこの中の『視覚』と『聴覚』しか使いません。重要なのはテレワークでは使わない『触覚』『嗅覚』『味覚』が、信頼関係を築く上で最も大事なものだということです。

みなさんにも経験があると思いますが、仕事の関係であれプライベートな関係であれ、誰かと一緒に食事に行くと一気に仲良くなれますよね。それは、『視覚』と『聴覚』だけでなく、『触覚』『嗅覚』『味覚』も含めた『五感』をフルに使っているからなのです。

世の中の家族も、すべてこの『五感』を通じて信頼関係を築いています。会社であっても、組織力を高めるためには、『視覚』や『聴覚』だけではなく、『嗅覚』『味覚』『触覚』を総動員して信頼を形作る必要があります。

面と向かってのコミュニケーションは『五感』をフルに使い、無意識のうちにたくさんの情報や感情をやりとりし合っていますが、テレワークになると、やりとりできる情報が質量ともにぐっと限定されます。

人間の五感は『視覚』『聴覚』のみをベースとしたテレワークだけでは、相手を信頼しにくいようにできているのではないでしょうか。テレワークを続けるとどうなるかと云えば、組織力が低下し、業績に悪影響が出るのは確実と思われます。

もちろん、テレワークのメリットは、多少はあると思います。しかし、それ以上に深刻なのは『社員のあいだで不公平感が広がる』ことです」。

 

 

これはまさに共通体験、共感といった暗黙知における情報の同時共有が持つ力です。論理という理性ではなくこれは感情という気性がもたらすエネルギーに他なりません。

加藤氏は実務者として直観を働かせていますが、ちまたに目を向けると、「うちは動機づけで悩んでいる」とか口で言う割に、人の持つエネルギーをどのようにマネジメントすれば良いかに対してを真摯に分析して手を打とうとしない経営者や担当者が何と多いことでしょう。本当に人を扱う仕事として人の持つ要素に対して無関心・無責任としか言いようがありません。

 

『五感』とはいっても『視覚』と『聴覚』は思考という論理領域を司る知性や理性に最も近い感覚と云えます。それに比べて『嗅覚」「味覚』『触覚』は体感的な非常に感情的で気持ちに影響する感覚です。

従って非常にダイレクトに人のモチベーションに影響します。「目を背ける」と「鼻を衝く」は刺激への反射に大きく差が出るのは皆さんの中にも体験者がいらっしゃることと思います。

 

人は理性面である「理解」や「納得」よりも気性面である「共感」や「感動」で行動する本性があります。「頭では分かっていても気持ちがのらない」といった経験は誰しもが持っていることです。人は知性よりも情性の方に強く導かれて動きます。

情は知を凌駕するのです。それを会得するには体感による経験しかありません。まやかしのエリートはこの経験が圧倒的に少ないため知性が先行してヘッドトリップをするわけですが、日本の学歴主義は実践力よりも知力評価で権威や権力を付与しますから社会活動に様々な歪みを生じさせるわけです。

 

特に中途半端なサラリーマンエリートが厄介です。中にはそれを自覚して防衛的に反応する人がいるからややこしさは増すばかりです。何れにしても加藤氏の慧眼には敬服する限りです。

 

さて『嗅覚」「味覚』『触覚』は感情領域に近い感覚であると認めましたが、最近の研究では『嗅覚」を司る脳部位は記憶や判断を司る部位に近く、記憶などは『嗅覚』が『視覚』などの感覚よりもダイレクトで強く影響するといったことが分かってきています。

このあたりは弊社の若手が前々回のメルマガで触れていますのでご参照頂けますと幸いです。

 

 

ところでこのテレワークにはリアルな仕事環境にも様々な影響が出ているようです。加藤氏によれば、「原則テレワークというやり方を実施していた時期も、業務上の必要性や個人の判断に基づいて出社している社員がいましたが、電話の取次ぎをはじめ、オフィス業務に時間をとられ、出社している社員の負担が必然的に重くなるということが起きていた」のだそうです。

弊社でも経理システムは会社のパソコンでなければ動かせませんでしたし、郵便物などの処理も出社して確認しなければなりません。「このような状況では、中長期的な視野よりも目先の“作業”にばかり目が行くようになり、視野も狭くなってきます。リモートでは不出社の人たちは会社で何が起きているかという情報は偏ってしか入りません。会社的にもすべての状況を発信する余裕はありません。テレワークが長期化すればするほど、出社と不出社で間違いなく社員の間に溝が深まっていくのは必定です。

特にベンチャー企業のような立場から成長を促すためには、社員間の密なコミュニケーションや信頼関係が要であり、そのためにはオフィス勤務で日々の何気ない会話や気遣いなど、顔を合わせることから創造性・アイディアが生まれる。リモートはそれを破壊すると判断したのです」。

 

 

当事者意識をはぐくむポジティブな空気づくり ~空気づくりを阻む「認知相違」問題とJoyBizコギャトリプログラムについて~

今回のコロナショックのような、過去最大の「経済破壊」の中では、世の中の経営者はおそらく「会社倒産」「全社員解雇」「個人破産」「路頭に迷う」というところまで想像しているはずです。かくいう私自身がそうです。

その中で下す経営判断を他人任せにできるわけがありません。従業員にとっても、「ウィズコロナ」「アフターコロナ」になったとしても、経済が落ち込む中で、仕事を存続させ、成長に向かって進んでいくためには、「この会社が自分たちの会社」「自分が会社の未来を創っていく」という認識が不可欠です。

それには各人の「自分事」の意識。何事も他人事にしない強い「当事者意識」が求められます。それを醸し出すのがチーム意識、仲間意識です。気持ちの共有であり、意識の支え合いです。

リモートではそういった気のエネルギーのうねりが醸し出せないのは間違いのないところです。これは論理の組み立てが作り出す意識ではなく、感情エネルギーのうねりが作り出す意識の領域なのです。

 

特に重要なのが集団の合意形成による「ポジシティブな空気を作り」です。常に『どんな困難が起きようとも、皆で必ず夢や目標やかなえ、明るい未来が待っている』と考え、発言し、行動していくことが求められていると考えます。

「一人では困難でも仲間が協力すればことは成就する」という集団エネルギーへの信頼がシナジーを生み出します。それこそリモートでは不可能な組織活動の妙味です。

 

 

ここで来年に向けて弊社JoyBizにおける来年リリースのご紹介です。プログラム名は「コグニティブ・ギャップ・トリートメント・プログラム(認知相違調整プログラム)」です。

ダイバーシティとかアンコンシャス・バイアスとかアンガーマネジメントとか、昨今モノの見方や考え方という認知の違いによって様々な葛藤や対立、ハラスメントによるメンタル問題が起きています。

これがチーム内の凝集性破壊に繋がっていたり、個々の内面でも心理的分裂よるメンタル問題をもたらしています。

 

弊社ではレジリエンスやアンコンシャス・バイアスへのアプローチを通してポジティブ心理学の先生や禅の僧侶、精神医学者の方々との共同研究を行い、以前よりLIFT(ライフ・インテンション・フィーリング・トリートメント)というコンセプト(概念)でプログラムを展開してきました。

 

具体的には、禅では心の修養を理入と行入といって心の安定化に対して二面からのアプローチを行います。座禅のような方法は行入という体感的なアプローチで、巷ではマインドフルネスという名称でこれを一般化し、中核は瞑想法によって心の調律を行います。このアプローチ方法は一旦身につくと持続性がある一方、どうしてもスローラーン(漢方薬アプローチ)的なアプローチで即効性や定着性に壁がありました。

それではビジネス界の要請に応えきれないという問題意識の中、ファストラーン(特効薬アプローチ)的な効果を得られるようにすることを目的として、現在医学の分野で心理療法であっても薬物投与と同じような即効結果が証明されている認知行動療法の技法を取り入れたアプローチを理入として取り入れられないか模索してきたという経緯があります。

そのような中、ペンシルバニア大学で「ペンレジリエンシー」という概念がまさにそれに適合するという感触を得て、これまでそれをレジリエンスやアンコンシャス・バイアスのプログラムに応用してきたのですが、これではあくまでも個人の内面開発に終始するばかりで対人関係での問題開発や組織開発といった社会的な要請に応えられない、と更なる研究を重ねてきました。

そしてようやくその要請に応えられるプログラムがリリースできる運びになったという次第です。

 

「コグニティブ・ギャップ・トリートメント・プログラム(コギャトリ)」は人が抱える認知や自動思考(通常の熟慮する思考と異なり瞬間的に湧き上がる想念や信念)によって起きる人間間の様々な葛藤や対立、特にハラスメントやヘイト問題、そして対人間に起因するストレス問題の解決として対話(ダイアローグ)力や気付き(アウェアネス)を促進させるアプローチとして開発しました。

 

例えば

 

・上司間のズレからくるダブルバインド(二重指示)

・上司の思い込みによる圧力や放任

・狭量的な思考による人権軽視

・認知相違による意見対立やトラブル

・感情による抵抗やチーム崩壊

 

といった様々な問題が単なる感情論や意識的な想念ではなく、より深い領域である無意識を解きほぐして相互に調整していくための技法を身に付けるプログラムです。

 

詳しくは来週紹介しますが、このプログラムはYouTube(Channelにする)などを使って無料有料の講座を立ち上げる予定にもしています。有料会員だと聞ける内容や資料のダウンロードも出来るような仕様にしていく所存です。主任教授は弊社常務取締役の竹本伸吾が行います。

こうご期待です。

ということで皆さん、後3週間。今年も頑張り抜きましょう。

 

さて、皆さんは「ソモサン」?