• アンコンシャス・バイアスに潜む恐ろしさを深く認識したいものです

アンコンシャス・バイアスに潜む恐ろしさを深く認識したいものです

JoyBizは現在アンコンシャス・バイアス・トリートメント・プログラムを積極的に展開していますが、これはこの問題がダイバシティ対応のようなベターを求める領域以上に、日本人の気質的にみて近年切実な領域での話になっているからです。

 

例えばこういった事件がありました。60代の小柄な女性が生後二ヶ月の孫を死なせたとして実刑判決を受けました。事件のあらましは以下の通りです。

このおばあちゃんは娘の養育を手伝おうと、時折娘さんが用事で出かけた折りに孫の面倒を見ていたそうです。そんなある日、娘さんが帰宅して2人で寝ているはずの孫を見に行くと孫に異変が起きていたそうです。慌てて孫を病院に連れて行ったのですが、結局孫は亡くなったそうです。問題はその直後に起きました。おばあちゃんが孫を暴行して死亡させたというのです。

その理由は死因が脳内出血であり、それが乳児を激しく揺さぶることで脳に損傷を与える「揺さぶられっ子症候群」が原因である可能性が高いという認定がされたというのです。しかし現場にいたおばあちゃんだけでなく、亡くなった孫の母である娘さんもそれが信じられません。殺す理由もないし、根拠もない。まして身長が145センチ程で体重も40キロという小柄なおばあちゃんが、当時体重が6キロもあった孫を激しく揺さぶれるはずもないというのです。

ところが裁判では信じられないような審理が展開されたのです。そこで蠢いたのは児童虐待に詳しいという頭だけの小児科医です。この証言が呆れ果てます。「火事場のバカ力でリミッターが外れた状態だから十分に揺さぶれる。かなり強い揺さぶりをかけたのは医学的に間違いない」。最初から凄い決め付けです。そして一審は懲役56ヶ月という重い実刑判決となりました。結局おばあちゃんは13ヶ月もの間拘留されました。身内の誰もが受け入れていない冷徹な判決です。

 

おばあちゃんが幸いだったのは、この判決に対して「揺さぶられっ子症候群」の理論による冤罪があるのではないかという、大阪で立ち上がったばかりのプロジェクトがこれに噛みついたことでした。そこでは本当に恐ろしい世界が罷り通っていることが浮き彫りになってきます。

まず、「今の裁判では医学鑑定に対して医者が“揺さぶられっ子症候群”だと言うとそれを覆す判断能力が判事にない」という現実です。そして検察にも警察にもないというのです。華奢なおばあちゃんが一秒間に3往復という揺さぶりをする。どんなに状況が非現実であっても、医者の権威を盲信してしまうのです。例えそれが医者のバイアスであってもです。

この裁判は控訴審で大きな展開が起きます。プロジェクトの弁護士などが介在して再検証をするのです。その中で何人かの医大の教授が再鑑定をした結果、どこにも「揺さぶられっ子症候群」を引き起こすような硬膜下血腫のCT画像は見られないという結果となりました。これは一体どういうことでしょうか。

ここで二つ目のバイアスが見えてきます。医者自体が自分の思いこみで、初見における間違った仮説から単純化した図式によって虐待による頭部外傷と決めつけている、という事実です。この多くは不勉強と、他人事意識に由来しています。そしてこの医者は自分の正当化に拘泥して証言を組み立てているのです。こういう人たちが言っていることが、医者という権威付けによって確立してしまうという今の裁判の場の常識を考えると末恐ろしい話としか言えません。

権威による虐待という決め付けが無実の人を有罪に貶める。しかも医者の自己保身と他人事意識が違った犯罪を誘発しているわけです。虐待専門医という看板にしがみついて真実を冷静に見つめずにやたら自分の権威付けに拘る。自分の所見の正当性だけに拘る医者とそれを鵜呑みにする権威主義の法曹従事者。本当に恐ろしい話です。日本の司法の闇の部分と言えます。

 

さてもう皆さんにはお分かりだと思います。この話には2つの大きなバイアス、それもアンコンシャス・バイアスが関わっています。一つは医者のバイアス。そしてもう一つは警察、検察、裁判所のバイアスです。

皆さん如何でしょうか。アンコンシャス・バイアスが単にベターを目指す世界ではないということをお分かりになって頂けたでしょうか。権威主義が横行する日本人の社会では、身に降りかかるような災いをもたらすアンコンシャス・バイアスが至るところで大きな口を開けて皆さんを飲み込もうと待ち構えているのです。

 

さて皆さんは「ソモサン?」。

JoyBiz 恩田 勲