意性を作り上げる指向性と熱量の違いを理解する

~知性の向上だけでは人は活性しない

皆さん、こんにちは。

最近アンコンシャス・バイアスに焦点を当てたコラムに偏っていましたので、今回は少し角度を変えましょう。

JoyBizでは基幹プログラムのコンセプトとして「LIFT」を展開しているのは読者の方々はご存じのことと存じますが、アンコンシャス・バイアスはその中の「I」(インテンション)に関係します。インテンションとは「考えの指向性」という意味です。LIFTは「意識の調整」を主眼においたプログラムです。人の心は能力の在り方を司る知性による働きと気持ちの在り方を司る情性に加え、思考の在り方や意識を司る意性があります。

最近、広汎性発達障害への対応とかアンガーマネジメントなど漸く知性以外の気持ちや感情を統制することの重要性に耳目が集まり出しましたが、まだまだ知性に偏重した人へのアプローチは堅牢です。特に日本人は寧ろ逆行の気配すら感じる今日この頃です。全く日本の知的エリートたちの歪んだ知性偏重主義には、辟易さすら感じ始めています。

さてそういった風潮の中、心を構成する素材である知性や情性を制御する役割である意性に関しては、やっと端緒にたどり着いた段階といえます。真に知的な人たちの刮目に期待するところです。ともあれ今回は、その意性が今社会にどのような影響を及ぼしているかについて触れてみたいと思います。

 

アンコンシャス・バイアスという概念は、元々はダイバシティへの意識面の対応のために多国籍企業を中心に広がり始めました。最近特に顕著なのは、GAFA発のプログラムというやつです。またマインドフルネスも同様ですが、こちらは寧ろ同じ意識でも内側の意識に目を向けた概念です。

しかしいずれにおいても、人の心という無形な領域において欧米では世界レベルで起きているダイバシティの様な複雑性や、アジャイルのような加速性といった心の揺さぶりへの対応にいち早く手を打とうとするスタンスやカルチャーは一礼するところですが、このような心の問題は日本においても最早看過するには非常に深刻な状態を生み出している領域になっているといえます。

これまでの様に「出来ればやりたいが、まだ後回しにしておいても」というわけにはいかなくなってきています。続出するウツやネグレクト、いじめ、ネットバッシングなど意性の歪みや未発達から生じている社会問題は、マスメディアを静かにさせる暇を与えません。恐ろしいことにマスコミ自体に意性の歪みが起き始めており、それに対して自覚も出てこないほど民衆の心は荒れ始めています。

その影響はもちろん企業の経営環境にも及び、徐々に職場環境が疲弊しネガティブな風潮が蔓延し、それが主因となって生産性の低下や劣化の勢いが増してきているのです。それだけに本当に人の心の中核を担う意性の側面へ、人はもっと真摯に目を向けその理解の促進に尽力してほしいと願うばかりです。

例えば、人の心の脆弱化には2つの側面がありますが、今の日本ではその違いを理解した上で改善に取り組む人は殆どいません。昔「無知の涙」という書籍がありましたが、まさに無知は無力です。時には弊害にすらなります。2つの側面とはJoyBizが云うIntention(心力の方向付け)とForce(心力の熱量)です。この2つの作用が知力と情動の原動力になります。これらは十把一絡げで捉えてはならないお互いの領分があります。相互作用の関係はありますが、同じ世界ではありません。

まり心の問題解決のために意性領域にアプローチをする際、この違いを熟知しピントのあった手立てを取らない限り、手は無駄打ちになってしまうと云うことです。どんなに熱量が高くてもその力が無駄に使い果たされればエネルギーの在庫は早晩尽きてしまい、空っぽの状態に陥り考えることすら起動できなくなるでしょうし、反対に折角的を射た心持ちをしていても、熱量のポテンシャルが低ければ何ら影響力も発揮できないでしょうし、そこには只空しさだけが残ることになるでしょう。その顕著な例がウツです。

そもそもウツとは、心の熱量が異常に低下した状態を云います。見た目にはネガティブな言動や行動が見られますが、見逃してならないのは疲れやすいとか思考が停止してしまうという現象です。これはまさにエネルギーが枯渇した状態です。時折この打開策として「休め」という人がいます。またポジティブ思考をするように誘導する人がいたりもします。しかしこれらはそもそも熱量がゼロに近い人に対して有効とは思えません。

人は生来生き続けていくために、自然界で生き残っていくために、基調はポジティブに思考するように設定されている存在です。その人間がネガティブになると云うことは理由の如何を問わず、ポジティブの要素たるエネルギーが下限リミットを越えているということです。それを方向的にポジティブに転じさせようと云うには無理があります。まして休んだところでエネルギーの充電は微々たるものです。薬や休息による療法に時間が掛かる理由です。

ではどうすれば良いのでしょうか。それはエネルギーのチャージをして熱量を上げることです。それは対象者の指向を転換させることではありません。ここは情性への働きかけが主題になります。主眼はともかく情的エネルギーを満タンにしていくことです。減らすアプローチなどは無知無策も良いところです。従ってネガティブな投げかけなど論外。叱咤激励などピント外れも良いところです。頑張れなど以ての外です。

もっとも適切なのは、ともかく元気づけることです。褒めること、認めること、勇気づけること、そして意思を支えることです。これが医者でも分かっていない人が多くいます。これに関しては近いうちに精神医学と心理学の違いというコラムで紹介する予定ですが、日本人は知的偏重主義の典型として医者の殿様扱いが酷く、そこから生まれている心因的諸問題が山積みされています。

~熱量を上げる方法

人間がモチベーションを上げる。つまりエネルギーを増やすには動機が必要です。そういった動機付けには2つのアプローチがあります。内発的動機付けと外発的動機付けです。

内発とは自分自身で目標を持ったり欲望を持ったりすることで自分を盛り上げる手立てであり、外発とはお金や休暇のように周辺から刺激してもらう手立てです。持続的に自分のエネルギーを高めたり維持したりするには内発が有効です。外発は、瞬発性はありますが一過性という面もあり、一般には内発を奨励します。

しかし現実には、元々のポテンシャルが低い人や、ポテンシャル自体が低下してしまったウツの人にとって内発自体が無理な話です。それを内発優先に講釈を垂れる輩は、いわゆる知的遊戯の好きな学識未経験者です。何事も最初はスターターが必要です。エンジンを駆動させるにはクランクを回して上げなければ、最初の燃焼は始まらないのです。多少テコ入れが重くても、きつくても、それをしない限り自噴は始まりません。最近それを怠るというか無知な親や指導者が増えてきています。そのためかポテンシャルの低い若者が噴出し始めています。またそれに起因して低温度でウツを発症する人も続出しています。

外発的動機付けによるポテンシャルの向上。熱量の増量は、ポジティブな気持ちや意識と体感から得る自信によって醸成されます。JoyBizではこの領域を「FForce(心の熱量)の充填として、Intentionとは別の同じくらい大切なアプローチとしてプログラムを組んでいます。その一つがマインドフルネスであり、アクティビティです。方向付けと熱量充填。この2つはセットして初めて意味を持つのです。

人には能力限界と共に意識限界があります。知性偏重ではなく意性もしっかりと、そしてバランスよく為されたアプローチこそが人財の無限のパフォーマンスを引き出すのです。

 

さて皆さんは「ソモサン?」。

JoyBiz 恩田 勲