利己主義と甘え、そして低自尊心を繋いだ歪んだプライド

~劣位感情の源泉とは~

プライドは自尊心の投影であり、その殆どは劣位感情から導かれるとコメントしましたが、ではこの劣位意識は何処から生み出されるのでしょうか。

人はその生命を維持する為に社会的活動において集団性を選択しました。そしてそのことは集団に帰属することで自己の存在を確認しようとする欲求を芽生えさせることにも繋がりました。集団に帰属することによる自己の存在とは他者から受容されるということです。

ですから人はより多くの人から承認されることに喜びを感じる、或いは安心を覚えるという習癖がDNAとして身に備わっています。更にその認知をより確固たるものとするために、人から賞賛されることを喜ぶ習癖も身に付けました。賞賛とは人から奉られること、要は優位に扱われることです。

行動心理学的にはこれを中核性と称します。中核性とは群の中心点に近づくことを意味します。動物学者によりますと集団帰属の理由は攻撃からの回避だそうです。群になれば数の力で先ずは狙われ難くなると云うことです。生存的にはそれ以上に群だと弱肉強食の害にあっても、種が絶滅し難くて生き残りの可能性が高まると云うこともあるそうです。

そして中核的とはその群の円の中心に近づけば近づくほど外的から狙われ難くなると云うことです。ちょうど猿山の猿のピラミッド構造を上から俯瞰するとボスを中心に種を維持するため、雌猿や小猿が配置され、それを守るように雄猿が取り巻いているという構造が好例です。あれこそがまさにピラミッド構造の本質と云えます。円の中心が外延よりも安全、それ即ち上位という構造です。

つまり自尊心とはまさに比較における優劣の意識なわけです。しかし自尊心は物理的優劣とは違って非常に厄介です。それは現実の優劣とは異なり、自意識の中で展開される想念だからです。そのため実際には劣位でも何でもないのに、また中には実際には優位であるにも関わらず、刷り込まれた内包的な自尊概念で勝手に劣位心を持ってみたり、それによって敵愾心を持ったりストレスを抱えたりということが起こってきます。

それでもその意識やそこからの行動が自己の内面に展開されるならばいざ知らず、プライド的な行動に代表されるように意味のないライバル心や敵対行動が出てきますと手に負えません。

こういった劣位意識は気質的な場合もありますが、多くの場合幼少期からの教育の影響が大きいようです。親が勝ち気である場合、或いは劣等感が強く子供にその打破を期待する場合など理由は様々です。しかし一番多いのは甘やかしによる利己主義意識です。心が磨かれたり鍛えられたりしていなく、子供意識のままに肉体だけ大人になっているというケースです。

~自分の行動の目的を問い直すこと~

発達心理学によれば、子供は自律的な判断や行動が取れず、理非分別が付きません。躾が無ければ「全ては自分のもの」といった利己主義が基底の反応をします。最近「知情意」の意味が分からず、知さえ長けていれば意も出来ていると勘違いした親や、意の意味が分からない親が増えてきて、非常に利己主義な若者が増えてきています。

そのため利他心の本質が分からず、利己心の程度の判断が付かず、それによって自尊心が満たされずにストレスになったり、異常に他者に敵愾心やライバル心を持ったり、辺り構わず自分の価値観を押しつけたり、ネガティブに振る舞う人が社会を殺伐にしてしまっています。

その真骨頂が上から目線、対人鈍感による慇懃な振る舞いなどです。これが知的エリートに多いのも驚きです。本当に頭を使っているのか疑問ですが、恐らくはそういうことを考える為の意に関する情報が頭の中にインデックスされていないのでしょう。先般のロシア問題で「戦争発言」をした代議士など典型例でしょう。

私の場合も、コンサルタントという職業柄、その専門性などに対して妙なライバル心を抱いた態度や発言をする方と遭遇することがあります。特に若い経営者に多く見られます。私的にはコンサルタントの仕事は相手企業の活性促進を支援しているエンジニアリングですので、対象側からライバル心を持たれても詮無い話なわけです。

まあ原因が自分の自尊心の低さからなのか、利己的な甘えからなのかは分かりませんが、経営者がそのレベルに拘泥している限り、有効なリーダーシップが発揮できず、いつまで経っても自身の内的な問題解決も抜本的な組織上の問題解決も成し得ないことは確かです。

個人的には60歳を越えた老獪な人間に喧嘩を売っても何の特もない、若い人には「若気の至りはもっと有効なことに」と考える今日この頃です。

 

さて皆さんは「ソモサン?」。